
宇宙人や板前姿で「そこに愛はあるんか?」 と語りかけるCMでお馴染みの大地真央さん。じつは元宝塚歌劇団のトップスター。今なお美しく、チャーミングなその人柄に触れたくて。
年齢を感じさせない美しさとアグレッシブさで、今なお活躍の幅を広げている大地真央さん。その輝きの根底にあるものとは。
── 目前に控える舞台はリーディングドラマ『すぐ死ぬんだから』ですが、70代後半を迎えて後悔なく日々を送ろうと、着たいものを着てやりたいことをやって生きる主人公・ハナを中心にしたヒューマンドラマです。台本を読まれての印象を伺えますか?
年齢を言い訳にしないハナさんの生き方に共感しますし、TPOをわきまえた上でですが、いくつになっても好きなものを着てやりたいことをやる前向きさって大切なんじゃないかと思います。
── スタッフに歌唱指導や振り付けの方が入っていますが、歌ったり踊ったりされるんでしょうか?
稽古はこれからになりますが、台本を持って歌も歌って動きもあって演じることになるかと。座って読むだけのものにはならないですね。私にとっては新たな挑戦ですから楽しみですよね。
── 新しい挑戦を楽しんでいらっしゃるんですね。
チャレンジ精神はなくしたくないなと思っています。
── 共演は長野博さんで、おふたりで何役もやられるそうですね。
はい。何役もです(笑)。ふわっとした柔らかい雰囲気を持っていらっしゃる長野さんも何役かやられますが、ああいう穏やかな方がはっちゃけた時ってすごく面白いと思うんです。ふたりだけですし、一緒に作り上げていく過程も楽しめたらと思っています。
── ハナは、自分らしく生きていこうという女性ですが、大地さんは年齢の重ね方として、どういうタイプでいらっしゃいますか。
私はあまり過去を振り返らないですね。何があっても、前を向いてその日その日を大切に生きていくことが大事だと思っています。
やるとなったら徹底してやります
── 大地さんといえば、近年、CMの女将さん役が話題です。かなり攻めた役柄ですが、もともとそういうものを面白がられるタイプなんでしょうか?
そういうところはあると思います。宝塚歌劇団に在団していた頃から、ただの二枚目はつまらないと思っていました。人間て、ちょっと悪いとか、ちょっとズッコケるとか、意外性だったり多面性が魅力になりますよね。そういう人間くささが昔から好きでした。
── 最初、大地さんがこんなことをやられるのかと驚きました。
京都の老舗料亭の女将さんから始まったのですが、宇宙人とか板前とか…いろいろやっていますね。20パターン以上あるみたいです。
── 宇宙人や鮨屋の大将、パンクロッカーといったオファーに抵抗はなかったですか?
企画自体はクリエイティブ・ディレクターの方がお出しになるのですが、いくつかご提案がある中で、これがいいんじゃないですかといろいろ意見交換をしながら、楽しんでやらせていただいています。だから自分で納得し撮っているんですよ。
── かなり前向きに。
はい。ただ、あれはあくまで“女将みよこ”さんとしてやっているもの(笑)。ですから、女将として、つねに品性だけは保ちたいと思っています。
── ファンの方は、どのように受け止められているんでしょう?
次は何だろうって楽しみにしていますね。やめてとおっしゃる方はいないです。
── 自分から、こういうこともやってみたいとご提案されることもありますか?
それはないですが、やるとなったら徹底してやります(笑)。クリエイティブ・ディレクターも監督も、スタッフのみなさんが本物志向で、とても丁寧に手間をかけて作っています。特殊メイクのものは頭だけで2時間くらいかかりますし、外すのにも30分くらいかかるんです。
── お仕事をお引き受けになる際の、ご自身なりの基準のようなものはありますか?
もう完全に直感で、理屈で考えることはあまりないですね。
── これまでも直感で進んでこられたんですか?
もちろん悩んだり考えたりすることもありますけれど、わりと直感だと思いますね。私、勘がいいほうだと思うんです(笑)。
── もともと芸能活動を反対されていたお父様から宝塚歌劇団をすすめられて受験されたそうですが、それも直感ですか?
すすめられたというより、宝塚しか許してもらえなかったんです。私は宝塚を一度も観たことがなかったけれど、宝塚ならと受験を許されたので。初めての宝塚音楽学校の受験日が、レッスンを始めて3か月ちょっとだったので、よく入れたなと思います。まあ、入学してからが大変でしたけどね(笑)。
── 在団中、それまであった宝塚歌劇の男役とはこういうものというイメージを、大地さんがどんどん刷新されていかれました。当時は規律が今よりももっと厳しかったと思うのですが、その中で新しい挑戦ができたのはなぜですか?
幸せなことに、みなさんが私という男役を面白がってくださったんですよね。トップになるまでは失敗も多くて、「また大地が…」と言われながらも可愛がっていただいていました。トップになってからも、本当に自由にさせていただいていましたし、私がチャレンジしようとしていることに理解を示してくださっていました。誠実に取り組めば、みんなその背中を見てついてきてくれるんですよね。
── 当時、こっちのほうがよくなる、面白くなる、という明確なものがあったのでしょうか?
それも直感ですね。
── そうなんですね。当時の大地さんに憧れて宝塚歌劇団に入団された方がたくさんいますし、今もレジェンドとして語られています。後輩たちにとって、ご自分がそういう存在になっていらっしゃることはどう見えていますか?
そうなんですか。光栄ですが、私自身はあまり知らないんですよ。この間も、「すごいトップスターだったなんてものじゃなくて神です」と言われたのですが…(笑)。私が在籍していたのはすごく前ですし、過去って美化されるんじゃないかなと思います。
── 当時の大地さんの人気のすごさは今も語り継がれるほどです。
ありがたいですけど、笑っちゃいますよね。真矢ミキちゃんがよく、私を見て、トップでも新しいことをしていいんだと思った、と言うんですね。私の影響でロングヘアの男役という新しいスタイルを確立した彼女を見て、また下級生が育っていく。そうやって、新しいものを取り入れながら宝塚の伝統というものが受け継がれていって、112年という歴史を作ってきたんだと思います。
── 当時から、面白いことはお好きでいらしたんですか?
バイプレイヤーの方がやる面白さとは違う、二枚目とかトップスターがやるからこそ面白いっていうのもあるんですよね。ただ“ウケたい”というのとは違って、劇場にわざわざお金と時間を使って来てくださるのだから、楽しんでちょっと泣いてちょっと笑って、明日からも頑張ろうって思っていただきたい。その目的のために誠心誠意やるというんでしょうか。あのCMもそれと同じですよ。

迷いもありましたし挫折もありました
── 宝塚退団後、華やかなヒロインを演じられることが多かったですが、年齢を重ねて、徐々に役の幅を広げられているように感じています。ご自身の中で意識の変化があったのでしょうか?
この年齢だからこそできる役というものがあって、そういう役との出合いを楽しんでいます。でも私、再演を重ねるのも素晴らしいことだと思っているんですよ。来年、再々々演ですが、6年ぶりに『夫婦漫才』という舞台が決まっています。そうやって待っていてくださるというのは嬉しいです。
── お話を伺っていると、気っ風(きっぷ)のいい方なんだなと感じます。
私、三人姉妹の三番目なので、父と母は今度こそ男の子をと思っていたようです。子供の頃に父に剣道をすすめられたんですが、きっと男の子だったらやらせたかったんでしょうね。父は、大学を卒業する22歳くらいになったらお見合いしなさいと言ってましたけれど、主演をいただくようになったくらいから、言わなくなりました。嬉しかったようで、自分でチケットを取ってしょっちゅう観に来ていたらしいです。
── お見合いをすすめられても続けられたわけですが、このお仕事への迷いはなかったですか?
迷いもありましたし挫折もありましたよ。でも好きなんですね。
── 挫折、ですか。ずっとスター街道を歩まれている印象です。
30代の頃はこれがダメだったら辞めようという気持ちで作品に向かっていました。つねに一つ前の自分が自分のライバルだと思っていて、これがダメならもう先はないよ、と言い聞かせて、自分を奮い立たせていたんですよね。
── 奮い立たせてくれるものは?
やっぱりお客様です。拍手と笑顔…そこに支えられてますね。
── 数年前から、目玉焼きにケチャップなどで絵を描いた目玉焼きアートをインスタグラムに上げていますが、何がきっかけで始められたんですか?
たまたま卵を2つ焼いたら、それが猫に見えたんです。ケチャップで絵を描いたら、まさに猫になって。インスタにアップしたら反響があったので、そこからその日の卵を見ながら、何に見えるかなって考えて絵を描いてタイトルを付けてます。でも最近はゆで卵にハマってまして、ご無沙汰なんですよ。
── 今はどんなことに興味が?
もうそれは、目の前の舞台のことです。新たな挑戦ですし、今は他のことは考えられないです。
Profile
大地真央
だいち・まお 1956年2月5日生まれ、兵庫県出身。宝塚歌劇団月組トップスターとして絶大な人気を誇る。'85年の退団後は、『マイ・フェア・レディ』などミュージカルを中心に活躍。映像作品でも、ドラマ『最高のオバハン 中島ハルコ』『正直不動産』など数多く出演。近作に映画『ゴッドマザー~コシノアヤコの生涯~』『免許返納!?』など。来年4月より舞台『夫婦漫才』が控える。
information
リーディングドラマ『すぐ死ぬんだから』は、10月3日(土)~12日(月)、よみうり大手町ホールにて上演。その後、大阪、宮城、秋田、名古屋、富山公演あり。「どうせすぐ死ぬんだから」と、おしゃれを楽しみ前向きに生きる78歳の忍ハナ。しかし、ある日突然最愛の夫を失い、夫の秘密を知って…。
anan 2513号(2026年9月30日発売)より
































