
友情結婚相談所代表の中村光沙(ありさ)さん「友情結婚は、自分らしく生きるための新しい選択肢」
プロフェッショナルに聞く、性と向き合う職業の現在地。ここでは、性愛なしの新しい結婚を提案する、友情結婚相談所代表の中村光沙(ありさ)さんにお話を伺いました。
性愛なしの新しい結婚を提案する“友情結婚相談所代表”
LGBTQ+をはじめとするセクシュアルマイノリティの中には、異性との性的関係を望まない人もいる。そんな人々が恋愛や性行為を前提とせずに異性と結婚できる。それが友情結婚だ。この新しい結婚の選択肢を専門に扱う結婚相談所「カラーズ」の代表取締役・中村光沙さん。
「『カラーズ』は、一般的な結婚相談所とは異なり、相手に恋愛関係を求めないことが入会の前提条件です。そこから、“性行為を家庭以外の場所で行いたい意向があるか”“子どもを持ちたいか”といった点まで事前に細かく確認し、条件の合う人とマッチングをします。また、子どもを望む場合は、人工授精など性行為以外の妊活方法を、事前に希望をすり合わせていきます」
「カラーズ」がスタートしたのは2015年。現在は約300名の会員が在籍し、そのうち男性の約8割がゲイ、女性の約9割がアセクシュアルまたはノンセクシュアルで、恋愛感情や性的欲求を持たない、あるいはそれを表現しづらい人々が在籍している。中村さんの元には、自分のセクシュアリティに自覚がないまま相談に訪れる人もいる。
「恋愛感情を持てないことを周りの人に相談しても『まだ本気で好きになれる人に出会ってないだけ』と言われ、婚活を続けてきた人もいます。そういう人に『あなたはアセクシュアルかもしれませんね』と伝えると、驚きとともに安堵の表情を見せます。誰にも心が動かないことで、もう自分を責めなくていいんだって」
これまでに340組以上のカップルが結婚。なかには子を授かった夫婦もいる。「子どもは諦めていたけれど、『カラーズ』のおかげで叶いました」と感謝の言葉をもらうこともあるという。もちろん、子どもを持たずとも、日々を支え合えるパートナーと出会えたことに喜びを感じる人もいて、改めて友情結婚のニーズの高さを実感しているという。
「誰とも恋愛したくないけれど一人で生きていくのは不安な人、セクシュアリティを明かさずに家庭を持ちたい人。これからもそれぞれの思いに寄り添いながら、自分らしく生きるための選択肢として、友情結婚があることを伝えていきたいです」
“恋愛を伴わない結婚”を題材とした物語を、中村さんがセレクト

ドラマ『恋せぬふたり』(2022) 写真提供:NHK
ドラマ『恋せぬふたり』(2022)
性愛のない新たな家族の形を描く。
「恋愛感情も性的欲求も抱かないアロマンティック・アセクシュアルの男女が主人公という意欲作」。共同生活を営みつつ、自分たちなりの生き方を模索する姿を描く。写真提供:NHK
ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)
恋愛なしの契約結婚が話題に。
周囲に内緒で「雇用主=夫、従業員=妻」という契約結婚を結んだ二人が繰り広げるラブコメディ。「この作品をきっかけに『カラーズ』を知る人が増えました!」
Profile
中村光沙(ありさ)
ニューヨークでファッションブランドに勤務。帰国後、2015年に友情結婚専門相談所「COLORUS」を創設。ストレートも登録可能な性的関係のないパートナーと出会えるマッチングアプリ「フレマ」も展開している。
anan2458号(2025年8月6日発売)より
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MAGAZINE マガジン

No.2458掲載
愛とSEX
2025年08月06日発売
平成景気のさなかの 1989 年。「女性ファッション誌」として、当時の女性の目線での SEX を特集。そのセンセーショナルな内容は、表紙を飾った金子國義さんのファッショナブルなイラストレーションと共に圧倒的支持を得ました。メンタル、フィジカル、メディカル、さまざまな視点から、愛と SEX をテーマに、時代の気分や社会状況なども反映させて特集してきました。現在も年間 50 冊以上の特集を刊行するanan の中で、一年を通じて最大部数を誇る名物企画。毎年、表紙とグラビアにご登場いただく方は、社会現象ともいうべき話題に。愛のある幸せな「SEX」を、年に 1 度、特集し続けています。