メディアでも耳にする機会が増えた〈性的同意〉という言葉。でも、「実はよく分かっていないかも…」という人も多いのでは? お互いに良い影響を受け合う心地よいセックスのために、“基本のキ”から学んでみましょう。
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一度同意をしたとしても、途中でキャンセルしてもOK
“性的同意”という言葉自体は一般化した印象がありますが、
「言葉は知っているけれど、同意の意味まで理解されているかどうかは、微妙だと思います」
と言うのは、学生向けに性的同意にまつわる授業なども行っている助産師の櫻井裕子さん。
「性行為の意味に加え、性感染症のリスクや妊娠など、セックス後に起こることも理解した上で、お互いに積極的に参加したいと思って初めて成立する。“いいよね?”と押して“うん”と言わせれば同意が取れたと思う人もいますが、決してそうではありません」
性的同意は幸せなセックスをするための大事なステップ。
「本来セックスは気持ちの良いもので、お互いに満足し、良い影響を受け合うもの。でも痛かったり怖かったりといったことも起こり得るわけで、その痛みや傷つくことに繋がるものを取り除くために、性的同意が必要なんです」
もう一つ大事なのは、一度同意をしたとしても、途中でキャンセルしてもいい、ということ。
「セックスは“挿入まで(場合によっては射精まで)ワンパッケージ”と思われがちですが、違います。性的同意は、いつでも“キャンセルとセット”。お互いにその意識を持つことも大事です」
日頃から、人と関わるときに同意を取る習慣をつけることで、性的なシーンで同意を取ることにも繋がる、と櫻井さん。
「ごはん行こうよとか、傘に入れてとか、小さなことで同意を取るクセをつけたり、逆に断りたいときは“それはしたくないけれど、あなたのことは嫌いじゃない”という意思表示をする努力をしておくと、セックスのときにも自分の気持ちを上手に相手に伝えられるようになると思います」
お互いを尊重し合うために押さえておきたい、性的同意が成立するポイント
性的同意は、この4つの条件が揃うと成立するといわれています。頭の片隅に置いておき、セックスのとき「おや?」と感じたら思い出して。
1、対等性

強い立場の側が優位なことを自覚せよ。
二人が、社会的地位や力関係に左右されない、対等な関係であること。「でも正直これはすごく難しくて、恋愛感情を多く持っている側が、どうしても弱者になります。なので、地位や体力も含め強い立場にいる側が、自分の優位性を自覚しておくのはとても大事なことです」
2、明確性

明らかなイエスを、言葉や態度で確認を。
“したい”という気持ちを、クリアに、積極的に持っていること。「はっきりした言葉を言わなかったり、沈黙の中での曖昧な態度を、勝手に“同意”と読み解くのはダメ。明確に分かる言葉や態度で意思を示すことが大事。同意を取る側は、言葉や態度で相手の意思の確認を」
3、非強制性

無理強いされない、その環境が大切。
脅されたり、プレッシャーをかけられたり、ムリやり「OK」と言わせるのは同意ではありません。「嫌だ、やめて、と言える状況で、なおかつそう言われたらストップする。そういった環境が整っていないと、性的同意は成立しません。性別を問わず、立場を利用しての性行為は×」
4、非継続性

どのタイミングでもキャンセルはOK。
一つの行為に対するイエスが、次、そのまた次の行為のイエスにはなりません。「手を繋いだから、キスをしたから、挿入までOKかといったら、そんなことはない。性被害に遭った際、“家に行った私が悪い”と自分を責める人もいますが、決してそんなことはないんです」
お話を伺った方
Profile
櫻井裕子
助産師。大学病院産科や産婦人科医院などでキャリアを積み、「さくらい助産院」を開業。講師や講演活動も行う。著書に『10代のための性の世界の歩き方』、共著に『性的同意は世界を救う』(共に時事通信出版局)。
Information
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
全国47都道府県それぞれに1つ以上設置されている施設で、こちら1か所に相談するだけで、病院や警察への付き添いに加え、必要がある場合は法的なサポートや心のケアなどにも繋いでくれる。下の番号をダイヤルすると、最寄りのセンターに繋がります。
共通電話相談無料ダイヤル#8891
anan2458号(2025年8月6日発売)より
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MAGAZINE マガジン

No.2458掲載
愛とSEX
2025年08月06日発売
平成景気のさなかの 1989 年。「女性ファッション誌」として、当時の女性の目線での SEX を特集。そのセンセーショナルな内容は、表紙を飾った金子國義さんのファッショナブルなイラストレーションと共に圧倒的支持を得ました。メンタル、フィジカル、メディカル、さまざまな視点から、愛と SEX をテーマに、時代の気分や社会状況なども反映させて特集してきました。現在も年間 50 冊以上の特集を刊行するanan の中で、一年を通じて最大部数を誇る名物企画。毎年、表紙とグラビアにご登場いただく方は、社会現象ともいうべき話題に。愛のある幸せな「SEX」を、年に 1 度、特集し続けています。