
ほどよい距離の人間関係は、ストレスが少なく心地よいけれど、心から信頼できる人がいないのはなんだか寂しい…。でも仲良くなりたい人と、心の距離を縮めていくのは難しい! そんな人のために“濃い人間関係”を築くコツを紹介します。
Index
大切な人に絞って、心をかけて関係を築く。
職場の同僚や先輩、趣味の仲間など、私たちは日々、さまざまな人と関わり、大なり小なり悩みを抱えている。感情コンサルタント(R)の神谷海帆さんによると、まずは身近な人に対して、「この人とどうなりたいか」、自分の気持ちを確認することが重要だという。
「人間関係にはさまざまな距離感があり、距離をつめるか、距離をとるか、自分で決められます。ところが、この線引きをしていない人が意外と多い。すべての人と仲良くする必要はありません。親しくなりたい人や大切な人にだけ、しっかり心をかける。そう切り替えると、人間関係はシンプルになり、悩みも減るはずです」
濃い人間関係を築くには相手とのコミュニケーションを重ねて、心の距離を縮めるためのプロセスがあるという神谷さん。
「関係を深めていく過程で、お互いの繊細な部分に触れ合っていくことになります。その際、傷ついたり傷つけたり、スレ違ってしまうことがあるかもしれません。でもそれは“濃い人間関係”を築くための通過点。そこを乗り越えれば、必ず絆は深まっていくので、お互いをより深く理解し合う過程だと思って大事にしてください」
関係性を深めていくための段階別のポイントを押さえ、“自分の気持ち”も大切にしながら実践していこう。そのSTEP1の前に、まずは相手との「心の距離」がどれくらいか、現状の把握から。
「心の距離によって、とるべきアプローチは変わりますし、理想と現実にギャップがあるケースも多いです。現状を正しく知ることで、やるべきことが見えてきます」
心の距離は、相手との会話から探ることができる。頻度や長さをはじめ、内容や充実感といった観点をチェックして客観的な分析を。
「相手がこちらに興味を持っていないと、会話は続かないもの。いろいろ質問をされて話がどんどん広がったり、笑顔が多く見えたりするときは、お互いに充実感を得ている状態。さらに、プライベートの繊細な内容の話を頻繁にされるようなら、かなり信頼され、心の距離は近いといえます」
そして、距離を縮めたいと思った人に対しては、自分が先に心を開くことが大前提だ。
「濃い人間関係を築きたくても、自分が閉じていたら始まりません。自己開示の返報性といって、人は本音や悩み、失敗話などを打ち明けられると、自分も心を開いて話したくなります。いきなり打ち明け話をしなくても、心をオープンにして会話を増やすことからトライしてみてください。好きな人と親密になれたら、人生はもっと彩り豊かになりますよ」
人間関係の育て方STEP0
まずは距離を縮めたい相手との現状を把握する。
下の5項目をチェックし、1、2、3が多い場合はSTEP1から。4、5が多いなら、すでにだいぶ距離が近いと考えられるので、後半のSTEPからでもOK! ※ここではSTEP1~2を紹介します。

人間関係の育て方STEP1:【聞く】に徹して会話の時間を増やす。
心の距離が遠い相手には、まず話す機会を増やし、聞き役に回って“話しやすい人”を目指して。
さりげない「オウム返し」で傾聴の効果も。
お互い、まだよそよそしい初歩段階なら、会話の機会を増やすことがファーストステップ。自分から心を開いて笑顔で向き合い、「あなたの話を聞かせてほしい!」という姿勢で臨むことが重要なポイント。
「人は自分に興味を持ってもらえると悪い気はしないもの。その人に好意を抱き、距離が近づくきっかけになります」
プライベートを詮索する雰囲気が出ると警戒されてしまうため、「最近、何か楽しいことありました?」くらいの、なにげない質問から始めるのがベター。このとき、コミュニケーションの手法として取り入れたいのが、「オウム返し」。言葉を繰り返すことで、相手は「話をちゃんと聞いてくれている」と感じ、傾聴の効果も期待できるという。
「オウム返しに加え、『それはどんな○○ですか?』のように掘り下げるひと言で話を広げていきましょう。話が事柄だけでなく、楽しかった、しんどかったなど、相手の感情を引き出すことも意識して。わざわざ聞かなくても、話の内容から感情は読み取れるかもしれませんが、丁寧に質問して気持ちを吐露してもらうことで、相手は会話の充実感を得やすいのです。また、性格や好みもわかり、相手への理解がより深まります」
まずはオウム返し+αのひと言で話を広げる
CASE1
A:この間、〇〇に行ってきました
B:〇〇行ってみたいです。どんなところでしたか?
CASE2
A:うちの部署に新人が入ってきたんだ
B:新人が来たんですね。どんな人ですか?
人間関係の育て方STEP2:【共感】しながら相手に寄り添う。
相手の感情や状況に寄り添い、“わかってくれる人”と思われれば、関係はさらに一歩前進!
共感して寄り添い、心を開かせる。
相手の話をよく聞き、会話がある程度続くようになったら、次は、共感を織り交ぜて、寄り添っていくステップ。
「共感されてイヤな人はいません。共感によって心理的安全性が確保され、心を開きやすくする効果があります」
挑戦しやすい方法はSTEP1の応用。会話から相手の感情を引き出した際、たとえば「大変だったんです」に「それは大変でしたね」のように、オウム返しで共感を示して。
「相手のテンションに合わせた口調にすると、心に寄り添っていることが伝わりやすく、感情的なつながりも生まれます」
さらに一歩進み、会話を広げる質問「かきくけこ」をマスターしよう。過去、きっかけ、苦労、結果、行動に関連した質問をしていくと、相手が望む共感ポイントもわかってくる。
「これまでの経歴や過去の印象的な出来事などを聞くと、相手のパーソナリティを知れるうえ、会話が広がりやすいです。きっかけや苦労、結果、行動についての話は、その人の努力が垣間見えたり、感情がこもっていることが多く、共感ポイントの宝庫です。ポジティブな反応で応えていけば、寄り添うだけでなく、“わかってくれる人”という印象を与えられます」
共感ポイントがわかる魔法の言葉「かきくけこ」
か : 過去
過去にどんな経験をしたんですか?
き : きっかけ
どんなきっかけで、始めたんですか?
く : 苦労
苦難をどんなふうに乗り越えたんですか?
け : 結果
結果はどうなったんですか?
こ : 行動
どんな行動をしたんですか?
Profile
お話を伺った方・神谷海帆さん
かみや・みほ ネガティブな感情をポジティブに変換する感情コンサルタント(R)。著書に『感情のメッセージに気づくと、人間関係はうまくいく』(三笠書房)、『100%仕事で折れない 感情マネジメント』(Clover出版)がある。
anan 2447号(2025年5月21日発売)より