準備と実践の繰り返しで伝える力は格段に向上!
「伝える力」とは、自分の考えを言語化する能力。スピーチライターの日向優理子さん曰く、伝える力は、人間関係を円滑にするうえでのカギになるという。
「自分の考えを的確に伝えられれば、お互いの認識に齟齬がなくなり、健全なコミュニケーションがとれると思います。また、感情の共有にも繋がり、深い関係性を築けるでしょう」
今回、日向さんに指南してもらうのは、「言葉」と「話し方」という2つの軸からアプローチする、伝える力の磨き方。
「まずは、それぞれのポイントを理解すること。そのうえで話す内容をしっかり準備し、実践に挑んでください。準備と実践の繰り返しで、伝える力は磨かれます。このメソッドは、プレゼンなど、仕事の場面で最も効果を発揮。ほかにも友人に何かをおすすめしたい時など、さまざまな場面で応用できますよ」
ここでは、「言葉」の軸からのアプローチをご紹介します。
言葉編
伝える力を磨く2つの軸のうち言葉編では、伝えたいことを言語化する方法や、相手にわかりやすく伝わるような話の構成の仕方など、言語情報全般についてレクチャー。3つのポイントで、伝える力をロジカルに身につけよう。
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1、「話す目的」を明確にする。
最初に考えるべきことは、「話す目的」。
「これが明確でないと、何を言いたいのか相手に伝わらないという事態に陥りがち。目的は具体的な内容はもちろん、『信頼できる人に思われたい』など抽象的でもOK。目的が定まったら『コアメッセージ』を作りましょう。コアメッセージは、話の中で一番伝えたいポイントで、わかりやすく端的な言葉で表現することが重要です」
【コアメッセージの作成】
例1:行動依頼(仕事のチームに対して、お願いをする)
皆さん、今期はお疲れさまでした。
チームとして好調な今、意識してほしいことがあります。
それは「挑戦を続ける」ことです。
業績を気にしすぎず、我々だからこそできることが
あるはずです。「挑戦を続ける」ことで、楽しみましょう!
例2:価値観提供(同僚に対して、考えをシェアする)
異動したばかりで日々忙しいと思うけど、
「休みも大切」だよ! 良いアイデアって、
意外と仕事から離れた状態のほうが
思いつきやすいって言うし。
タスクも多いだろうけど、
そんな時こそ、思い切って「休みも大切」にしてね!
コアメッセージは、2種類に分けられるそう。「一つは『行動依頼』。これは相手の“行動”に関わる具体的なお願いで、例1では『挑戦を続ける』ように“しましょう”と依頼しています。もう一つは『価値観提供』で、相手に“考え方”を持ち帰ってもらいたい場面。例2のように“大切”な価値観を端的に伝えます」
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2、「対象者」を分析&照準を定める。
次に必要なのは、相手の属性や状況、知識量を見定めること。
「例えば、職場の同僚など共通認識のある相手には専門的な話をしても通じますが、そうでない相手に同じ話し方をしても伝わりません。相手に合わせて話の難易度を設定します。また、相手に親しみを持ってもらいたい時は自分の『ストーリー』を、客観的な話をして説得したい時は『ファクト』を意識して」
【ストーリーとファクトの引用】
例1:ストーリー(知人に対して、親しみやすさを演出)
○○さんも、あのアーティストのこと好きなんですか!
実は私も昔から好きで。初めてライブに行った時、
会場の一体感に鳥肌が立ちました。
大好きな曲を生で聴けた感動は、今でも忘れられません。
よければ、今度一緒に行きましょう!
例2:ファクト(かしこまった相手に対して、お願いをする)
クライアントに出すコピーのアイデアは、
3つ出すと選択しやすいというデータがあって。
せっかくなので○○さんに、
追加のアイデア出しを
ぜひお願いできたら嬉しいです!
「ストーリー」とは、自分の経験を語ること。「例1の太字の箇所がまさにそう。自分らしいストーリーを語ると人となりや温もりが伝わり、相手の記憶にも残りやすい」。一方、「ファクト」は「事実情報」のこと。「例2のような数字情報など事実を提示すると、話に信頼感が生まれ、聞き手が受け入れやすくなります」
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3、一文は短く。順番も意識して。
一文とは、話し始めから句点までのこと。
「話し言葉は一文が長いほど伝わりにくく、短いほど伝わりやすくなります。一文の長さは、50文字前後を意識しましょう。また、文章の構成を考えるうえで大切なのが、話す順番です。例えば、結論を最後に話すか、あるいは最初に話すかによって印象が異なります。時と場合により順番を入れ替えることが有効です」
【順番&長さのアップデート】
例1:文末のコアメッセージ(職場のチームに対して、理解を促す)
今週の反省会を行います。
まずは売上高の振り返りです。
今週、客数自体は平均的だったものの、
客単価が上がりました。
これは質の高いセールスのおかげです。
例2:冒頭のコアメッセージ(職場のチームに対して、印象的に伝える)
今週、特に実感したことがあります。
それは、「セールスの質の重要性」です。
客数自体は平均的だった今週。
しかし皆さんのセールスのおかげで、
客単価が上がり、素晴らしい成績を上げられました。
例1、2ともに一文が50文字以内の文章で構成。「わかりやすく、端的な一文を考えていきましょう。また、話す順番は、例1は話の導入から順を追って最後にコアメッセージを伝えることで、わかりやすさが際立ちます。例2は最初にコアメッセージを伝えることで、そのインパクトが強調された文章に。どちらの良さもあります」
PROFILE プロフィール
日向優理子さん
スピーチライター、スピーチトレーナー。話し方トレーニングサービス「kaeka」所属。経営者、政治家、社会人をクライアントに持ち、発表会や選挙向けのスピーチ原稿の執筆や、話し方のトレーニングを横断的に行う。
イラスト・中根ゆたか 取材、文・保手濱奈美
anan 2433号(2025年2月5日発売)より