社会全体の課題。官民連携により急ピッチで進む。
今年の通常国会で「孤独・孤立対策推進法」が成立しました。孤独や孤立は、「個人の努力が足りない」ものでも、「仕方のない問題」でもありません。社会全体の課題で、社会で解決しなければいけないと、本腰を入れることになりました。この法律は、国主導でできたものではありません。長年孤独・孤立対策や貧困対策などを進めている「自立生活サポートセンター・もやい」や、24時間365日無料・匿名チャット相談を行っている「あなたのいばしょ」など、現場の窮状を知るNPO法人の方々が、前政権時代から「官民で連携してほしい」「国が司令塔となってほしい」「自治体が積極的に対処できるよう目標を定めてほしい」と働きかけていました。これにより、一昨年、孤独・孤立対策担当大臣が生まれ、本法律が成立に至ったのです。
基本理念には、「孤独・孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要」と書かれています。基本的施策には、国民の理解増進や相談支援の推進、地方公共団体と支援関係者の連携・協働の促進などが盛り込まれました。地方公共団体には孤独・孤立対策地域協議会を設置する努力義務を課し、それを作らない地方公共団体には注意ができるようになります。
自殺者数はコロナ禍を機に一気に増えました。令和4年の自殺者数は2万1881人で、前年よりも4.2%増。女性は3年連続で増え続けています。最近では、奨学金の返済苦を理由に自殺をしたと考えられる人が、昨年10人いたという嘆かわしいニュースもありました。女性や子供、若者が孤立しやすい状況のなかで自殺者数が高止まりしており、対策は急務だと、スピーディに法案が可決されました。
イギリスや韓国でも自殺者数は増えており、孤独や孤立対策の必要性が謳われるようになりました。日本が世界に先駆けて、この問題に取り組むことにより、そのノウハウを世界に提供できる可能性も出てきます。いま世界の分断は進んでいますが、同じ問題を抱える国同士、国際協調が進み、課題解決がなされることを願います。
ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。
※『anan』2023年8月9日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)