自分の意見を持つために憲法を多角的に知ろう。
衆院憲法審査会で議論されているのが、国民投票のCM規制です。選挙に関しては、公平を期するために公職選挙法で厳しく運用を定められていますが、国民投票に対しては規制がかけられていません。
憲法改正国民投票法では、最大180日間の運動期間のうち、投票の14日前からテレビやラジオの有料広告を流すことを禁じています。しかし、それまでは回数も広告費も制限がないので、お金を持っている政党であれば、大量のCMをうち、自分たちに有利な意見に誘導できるのではないかと問題になっています。またインターネット広告に関しては規制の対象外です。
自民党や公明党はこの件には消極的。また、民放連も広告収入に大きく関わることですから、規制には後ろ向きです。法規制の必要性を強く主張しているのは立憲民主党で、与野党の溝はなかなか埋まりません。
世界では、国民投票のCM規制に関しては、各政党が主張を発信する「均等配分」の制度を設けている国が多いです。イタリアはテレビと新聞に、フランスとスペインではテレビとラジオ、イギリス、デンマークはテレビに対して均等配分を課しています。
憲法改正は、第2次世界大戦後にドイツでは67回、フランスは27回など、頻繁に行われている国がある一方で、日本は一度も改憲していません。そもそもの憲法のあり方が少し違うんですね。東京大学のケネス・盛・マッケルウェイン教授は世界の憲法を比較研究しており、英訳した憲法の文字数を見ると、日本は極端に文字数が少ないそうです。改憲回数の多い国は文字数も多く、具体的な項目がたくさんある。たとえば文言の8年を10年に変えるだけでも改憲になるのです。その点、日本の憲法は、抽象的な言葉で大きな理念を共有しており、具体的なことは法律で定めています。ただ、これは時の政府により解釈を変えられてしまう危険もあります。具体的な文言でしっかり縛った憲法がいいのか、理念を語るものがいいのか。国民投票の前に日本国憲法がどういうものなのか、各メディアで多角的な意見を取り上げることが必須なのではないかなと思います。
ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。
※『anan』2023年5月17日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)