同じ本を読んだ人と出会い、感想を共有し合うオンラインサービス「チャプターズブックストア」を手掛ける森本萌乃さん。マッチングアプリの切り口として、シェアを取り入れた理由を尋ねると、自身の体験がベースになっているという。
「私自身、過去にマッチングアプリを使って、モヤモヤしたものを抱えていたんです。一般的なマッチングサービスは見た目や年齢、職業、年収や身長などスペックを前面に出さないといけないですよね。誰かとマッチしようと思ったら、理想のスペックに合わせてソートをかけるので、素敵な人は出てきますが、私は全然マッチしなかった(笑)。なんでだろう、と思って他の女性のプロフィールを見てみると、自然体で写りがいい写真を使ったり、引きのある趣味を書き込んでいたりして、みんなしのぎを削ってる。市場に合わせて、自分をマーケティングしないと誰かに選んでもらえないんだなって。でも、それは自分には合わないなと思って、頑張る気にもなれなかった。じゃあ、どんなことだったら自分が自分らしいままでいられて、相手のことを知れて、楽しく話せるかなと思ったら、本だったんです」
かなりの読書家という森本さん。“好きな本が同じという共通点がきっかけで誰かと出会えたら、とても素敵そう”。そんな発想から、本を介したマッチングサービスを思いついた。
「当初は、好きな本が同じという男女を集めてレストランで食事をするオフラインのイベントからスタートしました。趣味の延長として私自身楽しんでいたのですが、コロナ禍になり、起業の傍ら契約社員として働いていた会社の契約も解除になってしまい、ビジネスにしなければ、と火がついた。ただ、以前のように食事会はできない。だったら、デジタルに業務転換しようと」
本の感想をシェアしてマッチングできるサービスを始めるため、エンジニア探しからスタート。それから半年後にベータ版をローンチした。
「チャプターズブックストア」は現役の書店員・出版社などプロと一緒に、丁寧に厳選した4冊の本を毎月紹介。タイトルや作者は隠されていて、ユーザーはキーワードとイメージイラストをもとに、気になる本を1冊ピックアップし、送られてきた本を読む。ビデオチャットの日程を設定すると、同じ本を読んだ人1~2名とオンライン上で会話ができるという仕組みだ。
「私自身、本を読んだ後、Twitterで同じ本を読んだ人がどういう感想を呟いているのかよく検索するんです。自分が心に響いた文章と同じところを引用している人を見つけると“この人と気が合うかも!”と嬉しくなるし、“全然おもしろくなかった”という人の意見を知るのもおもしろい。要は、読んだ人それぞれがどう思ったかを話し合える、その時間が大事だと思っていて。感想を言い合うことは、映画やドラマでもできるけど、本を読むことは絶対に一人でしかできない体験。だからこそ、誰かと感想を分かち合う喜びがあると思っています」
同じ本を読んだ人同士は、オンライン上で会話し、お互いにいいなと思ったら連絡先を交換。ただし、マッチングサービスといっても、同性とも出会えるし、友達になる人もいれば、純粋に会話だけを楽しみたい人もいる。
「ビデオチャットはお休みして、本だけを読みたい人もいます。このサービスを利用しているからといって、必ずしも恋愛に発展させないといけないというわけではないんです。大事なのは選択肢があること。私自身、シェアサービスがいいなと思うのは、誰かと繋がりたかったら繋がれるし、一人でいたいときは一人でいられる状況を作れるところ。そういう選択肢があることが幸せなんだなってつくづく思う。一人の時間をさらに楽しくしてくれるのが、シェアの魅力だと思っています」
What’s Chapters bookstore?
好きな本の感想を介して人と人とが出会う。そんなささやかな共通性を大事にするサブスク型の選書サービス「チャプターズブックストア」の取り組みを紹介。
ドキドキのオフラインイベントも開催!
8月には初めてのオフラインイベントを実施。ホテルのゆったりとした空間で、事前に自分が選んだ本を黙々と読むという試みで、そこで気になる人がいたら連絡先を渡したり交流ができ、出会いを創出。
タイトルは届くまであえて隠す。
著者やタイトルは隠されていて、ユーザーはキーワードをもとに気になる1冊を選ぶ。「先入観や自意識が邪魔をしないように、ブラインドにしました」。本は読みやすい文庫サイズに限定。
毎月テーマを変えて選書。
「チャプターズブックストア」は月額サブスクリプション制。季節やトレンドを反映し、毎月異なるテーマを設定。毎月本をイメージしたこだわりのイラストが公開。8月は“ホテル”がテーマだった。
※『anan』2022年9月21日号より。写真・内山めぐみ 取材、文・浦本真梨子
(by anan編集部)