大事な国民の情報。外資の民間企業に預けて大丈夫?
3月、LINEがシステム開発を中国の関連会社に委託しており、現地スタッフが個人情報にアクセスできる状態だったことが判明し、問題になりました。総務省内ではLINEの使用は禁止され、自治体や行政機関は一時サービスを停止する事態に陥りました。
個人情報が漏洩したのではなく、スタッフがアクセス可能だったというだけで大騒ぎになったのは、相手が中国だったからです。自由と民主の価値観を共有できる、法のもとに平等な国ではないため、危機感を抱いたのです。しかし、私たちは普段、AmazonやGoogleにも個人情報を差し出しています。相手がアメリカならば安全と言い切れるのでしょうか?
いま、公的機関が私たちのデータを、民間のデータセンターのサーバーに預けるということが加速しています。Amazonは公共部門のグローバル展開に力を入れており、日本政府は昨年、政府共通プラットフォームをAmazonのクラウド・コンピューターサービス「Amazon Web Service(AWS)」に移すことに決めました。Amazonの公共部門のパートナープログラムに参加している企業は2020年で前年比45%増。FBIもAWSで情報管理しているとAmazonは安全性をアピールしています。
日本では、テレビ局もコスト削減のため、取材映像をGoogleのデータサーバーに保管しています。取材源の秘匿の問題がありますし、そもそも日本の放送資源を外資系企業のサーバーに預けてよいものか? データの安全保障に関して、日本はとても認識が甘いと言わざるを得ません。現在、日米関係は良好ですが、永続的なものとは限りません。有事にはデータが削除されたり、日本国内でアクセスできなくなる、あるいは政治交渉の切り札に使われる可能性もあります。EUはその点、強い危機意識を持っており、データをEU圏外に持ち出すことを法律で規制しています。便利で低コストで管理できることは大きな魅力ですが、国家100年を考えたとき、データ主権を持ち、データ安全保障を考えた上で、自分たちの情報は自国で守ることが必要なのではないかと思います。
堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。新しい朝の報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が放送中。
※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)