気遣い上手がしていること
わざとらしくならない自然体の気遣いができれば相手にも自分にも負担が少なく、人間関係が円満に。気遣い上手が「していること」は、意外にもささやかなこと。相手を思う誠実な姿勢がすべてのベースです。
“他人をよく見る”を、している。
身近な人を観察して好みや性格を把握したり、いろいろな人と接し、多様な価値観に触れておくことは、気遣いをするうえでも役に立つ。「人は日常のさまざまな場面で、過去の経験則をもとに判断をしていると思います。なので、多くの人と接して、そのやり取りをデータベースとして蓄積しておくと、こんなケースでは…、こんな人には…、という自分なりの方法が見つけやすくなるのでは」(精神科医・星野概念さん)
“相手と向き合って話す”を、している。
話をする際は、鼻先、心臓、つま先を相手に向けるのが正解。これだけでも十分誠意が伝わる気遣いになる。「気持ちは態度や立ち居振る舞いにあらわれるものです。何か作業をしながら顔だけ向けて話すのは失礼。相手は軽んじられた気持ちになります」(イメージコンサルタント・三上ナナエさん)。さらに、上半身を5度くらい相手側に前傾する「お伺いの姿勢」も、安心感を与える振る舞いに。相手の不安を取り除く小さな工夫を積み重ねよう。
“何をしてほしいのか質問する”を、している。
気持ちを推し量るのが難しい相手や場面では、ストレートに要望を聞くのが有効。「やっておきましょうか?」と先回りして提案するのも◎。「苦手な上司や威圧的な雰囲気の人、主張が控えめな後輩に対してなど、どう気遣うのが正解かわからない時こそ質問してみて。失敗を恐れて何もしない、あるいは気持ちを読み違えて余計なことをするより、聞いて確認するほうが、物事がスムーズに進みます」(三上さん)
“相手への配慮をまめに伝える”を、している。
「誰でも自分を気にかけてくれる存在がいることに安心や喜びを感じるものです。直接会う機会が少なくなり、先の見えない不安がある今こそ、公私問わず、温かな言葉がけをこまめにしましょう」(三上さん)。友人には近況報告のあとに「話したい時や困った時はいつでも連絡してね」と追伸を、仕事関係の人には相手が興味を持ちそうな話題を添えて。配慮と尊重が伝わるひと言が、相手の心の支えになる。
“自分の状態を素直に口に出す”を、している。
例えば体調が良くないなら、悟られないように明るく振る舞うのではなく、体調不良を正直に表明しよう。そのほうが周りはフォローしやすいし、余計な気を遣わずに済む。「また、気遣いが苦手と自覚がある人は『気を遣えないけどごめんね』とあらかじめ言っておくと、相手をモヤモヤさせることが減って気遣いになるかもしれません。無理しないことは、人間関係を築くうえで大切なのです」(星野さん)
“気遣いを受けたらちゃんとお礼を言う”を、している。
気遣いは相互作用。誰かに気遣いをしてもらった時は、「あなたのおかげで助かった」という気持ちを伝えて。それが相手への尊重になる。「人は与え続けて反応がないとだんだん不満が募っていくものですが、『ありがとう』と言われるだけで心がすっと落ち着くはず」(星野さん)。「どんな人にも感謝は惜しみなく伝えましょう。特に家族や親しい人には感謝を怠りがち。身近な間柄ほど気遣いを忘れないで」(三上さん)
“マナー外行動にはひと言添える”を、している。
「気遣いはマナーに近いものですが、気遣い上手な人は相手や状況に合わせて、柔軟に型やセオリーを崩して接することができます。その際、本来のマナーとは違う対応であることを言葉で補足をすれば完璧です」(三上さん)。例えば、名刺交換は机を挟まずに行うのがマナーだが、回り込むのが難しいケースでは「こちらから失礼します」とひと言添えればOK。きっちり型どおりに行うより、自然で相手も受け入れやすい。
星野概念さん 精神科医として勤務する傍ら、音楽や執筆活動にも精力的。初の単独著書『ないようである、かもしれない 発酵ラブな精神科医の妄言』(ミシマ社)が発売中。
三上ナナエさん イメージコンサルタント。客室乗務員の経験から見出した気遣い術を生かして活躍中。著書に『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』(すばる舎)。
※『anan』2021年4月21日号より。イラスト・別府麻衣 取材、文・熊坂麻美
(by anan編集部)