女性は気づきにくい…性感染症についての基礎知識

ライフスタイル
2018.08.19
大人女子に必要なセックスリテラシーをお勉強。産婦人科医・高橋幸子先生とNPO法人ピルコン理事長・染矢明日香さんが教えてくれました。
保健体育

ここでは、“性感染症”に関するリテラシーを学びましょう。しっかり防いで、セックスをもっと楽しく。○×形式でさっそくチェック!

互いに浮気していなければ、性感染症の感染の危険はない。

×:今の相手の前にうつっている可能性も、捨てきれません。
お互い症状もないし、病気とは無縁…、と言いたいところだけれど、

「ウイルスや病原菌に感染しても、気付かないケースも多い。以前のパートナー経由でもらったものを、相手にうつしている可能性もあります。いつ感染したかは特定できないし、誰でもかかる可能性があるのが性感染症。パートナーが変わったら二人で検診を受けるのがおすすめ。婦人科のほか、自治体の保健所で実施している検査なら無料・匿名で受けられる項目(※)も」(染矢さん)

※保健所により異なるが、HIV、梅毒、B型肝炎、クラミジア等の検査を実施している。

性感染症はコンドームで100%防げる。

×:コンドームは大事。でも、防げないものも、あるんです。
「コンドームは唯一無二の予防法。でも、防げない病気もあることも知っておいて」と、高橋先生。

「例えば性器ヘルペスや梅毒は、性器以外の場所にできた水疱や潰瘍が皮膚に接触することでもうつります。とくに梅毒はここ数年、若い女性の間で爆発的に感染者が増えている病気です。初期はしこりや発疹などの症状が皮膚に出ますが、診療経験のない医師が多いために梅毒と気付かれず、治療がきちんとされないケースがあることも一因。少しでもおかしいと思ったら、きちんと受診し、梅毒の検査希望を伝えましょう」

一方、コンドームでの予防が有効でも、かかるとやっかいな性感染症や病気が他にもたくさんある。

「女性の不妊の原因にもなるクラミジアは感染した人の8割に自覚症状がないですし、エイズを発症するHIVや子宮頸がんの原因といわれるHPVも、感染初期の症状はほとんどありません。パートナーを特定し、コンドームを正しく使い、検診を定期的に受ける。これが、病気から身を守るための最低限のセオリーです」(染矢さん)

性感染症にかかっても、必ずしも症状が出るとは限らない。

○:症状が出にくいからこそ、定期検診が大事。
「女性はとくに体の構造上、内部で炎症が起きても気付きにくい。年に1度は婦人科検診を受けましょう」 

と、高橋先生。もし性感染症にかかったら、彼と二人で治療を。

「男性は尿で原因菌やウイルスが洗い流されて、検査で陽性反応が出ないこともありますが、必ず治療を受けてもらってください」

今は性感染症で命を落とすことはない。

○:死ぬことはないけれど、一生付き合うことになる可能性はあります。
基本的に性感染症で命を落とすことはないけれど、

「HIVや性器ヘルペスなど、一生付き合わなければならないものもあります。また、クラミジアのように将来の妊娠に関わる病気も。どの性感染症も、生活の質を著しく落とします。死に至らないからと、油断してはいけません」(高橋先生)

さらに、性行為で感染するHPVが原因とされる、子宮頸がんのような病気もある。

「頸がん自体は早期に発見すればほぼ100%治る病気ですが、進行すると命に関わることも。また、肝硬変などを引き起こす可能性のあるB型肝炎のウイルスも、輸血や母子感染のほか、性交渉によっても感染します。命を脅かす病気があることも忘れないでほしいです」

予防接種で防げる性感染症がある。

○:子宮頸がん・B型肝炎予防ワクチンは、アラサーでも受けられます。
「現在日本では、子宮頸がんの原因とされる15種類のHPVのうち、主要な2つの型に対する予防ワクチンを受けることができます。性交経験前に打つほうが有効ですが、ウイルスに感染していないことが分かれば、性経験があっても接種する意義はあります」(高橋先生)

小学校6年生から高校1年生まで無料、その後は自費で受けられる。いずれも1回約1万8000円で、それを、間を空けて3回接種する。

「ちなみに世界では、90%の子宮頸がんを防げる9種のHPVワクチンが主流。HPVが男性の陰茎がん、直腸がん、尖圭コンジローマの原因になることも分かり、既に77か国では男性も受けています」

高橋幸子先生 埼玉医科大学社会医学助教、産婦人科医。家族計画協会クリニックなどで診療を担当。小・中・高での性教育授業にも積極的に関わる。

染矢明日香さん NPO法人ピルコン理事長。中高生や若者向けの性教育やキャリア教育プログラムなど、性の健康教育に関する啓発や講演活動を幅広く行っている。

※『anan』2018年8月15・22日号より。イラスト・長谷川まき 取材、文・新田草子

(by anan編集部)


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