
『キンキーブーツ』や『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』など、近年、大作ミュージカルへの抜擢が続いている甲斐翔真さん。『仮面ライダーエグゼイド』でデビュー。その5年目の2020年に『デスノート THE MUSICAL』でミュージカルデビューし、今やミュージカル界を牽引するひとりとして名前が挙がる存在に。デビューから10周年を迎え、それを記念するコンサート『KAI SHOUMA Anniversary 10 YEARS』を目前に控える。
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10周年を迎えた今、気軽に来て楽しんでいただけるライブを
── まずはデビュー10周年のライブについて伺わせてください。どんなライブになるんでしょうか?
これまでライブは何度かさせていただいていますけれど、わりと何だろう…“コンサート”という感じだったんです。それで今回は、もう少し“ライブ”っぽく、ミュージカルの曲だけでなく、自分が好きなポップスのようなこれまであまり歌ってこなかったような曲もやったり、ミュージカルの曲もバンドアレンジを加えて、カッコよく届けられたらと思っています。普段から、トークイベントはコンスタントにやっていますが、今回は“歌います”って感じです。
── もちろんこれまでの10年を振り返るような楽曲も?
10周年ですから、そういうことになると思います。みなさんに楽しんでもらうことが一番で、それが僕自身も一番うれしいことなので、気軽に来て楽しんでいただけるようなものにしたいと思っています。
── ここまでの10年は早かったですか? それとも長かった?
いろいろやってきたら、結果10年経っていた、みたいな感覚です。10年を目標にしてきたわけじゃないですけれど、10年も続けられたことはうれしいし、10年前より遥かに多くの方々に応援してもらえていることが、僕の中では何よりうれしいことです。この業界は、お客様がいなければ成り立たない世界です。こんなふうに僕のことを求めてくださる方々の数が、10年やってきた証な気がして、そのことは本当に感慨深いです。
── 印象で言うとどんな10年ですか?
奇想天外な10年ですね。
── 奇想天外⁉︎
まったく想像のつかない、何が起きるかわからない10年でした(笑)。この業界に入ったのはスカウトで、もともと興味があったわけではないんです。でも、いろんなことを経験させていただく中で自分の感覚もどんどん変わっていっての、今ですからね。だからいまだに不思議ですもんね。自分が舞台に出ているのも。今、ミュージカルをやらせていただいていますけれど、別に映像からミュージカルに活動の重心を移したみたいな感覚はなくて、目の前にあることを楽しんでやってきただけなんですよ。でもそうしてきたら意外な世界に出合えて、今もこうして楽しめているわけで、奇想天外です。

── スカウトでこの業界に入ったときはどんなことを考えていました?
最初は怖かったです。たくさんオーディションを受けて、いっぱい落ちてきましたし。この10年間で何回受けたんだろうっていうくらい。ただ、もともと物おじせずに突っ込んでいくタイプではあって、エンタメ業界は、作品をやって評価をされて自分の位置が決まっていくものだろうから、やり続けていけば何かしら自分の居場所は確立していくだろうとは思っていて。根本的に、どうにでもなるだろうと楽観的に考えるタイプではあるので、目の前のことに猪突猛進でやってきた感じです。
ただ、10年を迎えて、ここからは猪突猛進だけではきっと行き詰まるだろうとも感じているんです。この世界って、前に進み続けることだけが正解ではないというのかな。もちろん進んではいくんですけれど、もう少し冒険が必要というか…あえて進まなくていい道をわざわざ進んでみて、もっといろんな世界を知りたいと思うし、それがこの先の芸の肥やしになるんじゃないかと考えています。
── すでに思い描いているものはあるんですか?
世界は広くて可能性は無限で、まだ具体的に思い描くものはないんですけれど、まずは人との出会いを大事にしたいなと思っています。これまでも、人との出会いで新しい違う世界がひらけてきているので、それを大切にしたいんです。スカウトされたこともだし、オーディションに受かるのも出会いで、10周年コンサートが開催できるのも、そういう出会いの積み重ねがあったからこそ。ここからさらに、ちゃんと心を持って、興味を持っていろんなものと出合っていくことで、またさらに深く世界が広がっていくんじゃないかと思っているので、それがこれからの目標です。

── あまり人見知りしないタイプですか?
僕はめちゃくちゃします。オンオフがあって、仕事中だとオンの状態になれるんですけれど、オフの時は自分の世界に入ってしまって、喋りかけたりもできないタイプです。俳優という肩書きがなかったら、何にも出てこない人間で、だから俳優をやっているのかもしれない。俳優として役をやるとなるといろんな発想が出てくるんですけれど、家から仕事場までの道とか楽屋では、ボケーッとしてしまって何も出てこないです。
── クラシックを聴きに行かれたりもしてますし、趣味の多い方なのかと思っていました。
心からいいなと思うものは、ちゃんと調べるし、ちゃんと触れたいとは思っていて、そのモードになったら、なんでも没入するんですけれど、それ以外のことになると全然…ですね。ただ、趣味が多いかはわかりませんが、興味の範囲は広いと思います。
── 物怖じしないタイプとおっしゃっていましたけれど、もともとですか?
そうかもしれないです。学生時代はサッカーをやっていて、ゴールキーパーでした。自分がミスしたら負けなので、根拠のない自信みたいなものがないと務まらないポジションだったのが大きい気がします。
自分のキャパシティを広げていくことに興味があるんです

── ここまでの出会いで、とくにご自身にとって大きな出会いというと?
海外に行ったことでしょうか。初めて海外に行ったとき、世界ってこんなに広いのかと思ったんです。例えば、僕は日本に生まれて、日本の社会に適応して生きていますけれど、外に出て、アメリカやヨーロッパ、韓国…ショービジネスの世界に身を置くいろんな人と出会い、それぞれの芸事に向き合う姿勢を見て…感性を学んだというのかな。自分も彼らと同じようになりたい、というのではなくて、芸事へのいろんな向き合い方があって、それをわかった上で自分が日本で活動していくにはどうしていったらいいか、どうやったら日本において新しい俳優になれたり、新しい自分に出合えたりするんだろうと考えるようになりました。
── 今の時点では、どうなっていくのが理想ですか?
自分でもすごい考えたんですけれど、最終的に出た答えは「何にならなくてもいい」です。何者でもない自分って怖いから、何かにならなくちゃと焦るけれど、これから先もいろんな人たちと出会っていく中で、きっと何かにはなれるはずで、そんなに焦って考えなくてもいいのかもしれない、というところに着地したんです。たとえ今の仕事がいきなりなくなったとしても、片道の航空券が買えればどこにでも行けて、世界は変えられるわけで。だから今は、目の前のことを楽しんでやろうよ、と思っています。
── 海外に目が向くようになったのは、何かきっかけが?
きっかけは昔からありました。漠然とずっと海外に行ってみたい、知らない世界を見たいという気持ちは持っていて。その背中を押してくれたのがミュージカルでした。日本でやっている作品が海外で上演されていて、それを観に行くというのをきっかけに海外に行くようになったんです。ただ、海外に行くことがすごいと思っているわけじゃなくて、自分のキャパシティを広げていくことに興味があるんです。そういう意味で言ったら、宇宙にだって行ってみたいと思いますし。
── 海外に行かれるようになって、ご自身がどう変化したと思います?
これは単なる文化の差なんですが、日本は島国で、良くも悪くも統制が取れている国だと思うんです。時にはみんなで同じ方向を向くということを教えられる。だからみんなで何かを揃えて表現するのは得意なんですよね。ただ、欧米はそれぞれの個性を大事にする文化で、突出したオリジナリティを求められる芸術の分野においては、個性が大事になってくることが多いですよね。でも、その両方を知って、いいところをミックスしていったらもっとすごいと思いませんか。
僕は、全人類が面白いとかすごいと感じるものってあると思っていて、自分としてはそこを目指したいと思っています。そのためにも、まずはブル(ダーツの的の中心の円の部分)を作っていかなきゃいけない。当てる的を見定めずに当てられるわけはないので。
── いろんなお仕事をされていますけれど、やはり極めたいのはミュージカルなんでしょうか?
もちろんミュージカルのお仕事を続けて、年中公演に出る、というのは素晴らしいし、そうなりたいと思うんです。ただ自分は作品に出て続けるだけではなく、よりよい作品と出会える俳優でありたいと思うんです。でも、それがミュージカルかどうかは、あまりこだわってないかもしれないです。
── 井の中の蛙、が嫌なんですね。
そう。そうなんですよ。ひとつのことを極めていくのは大事だけれど、僕は、いろんなものを知ったうえでそうなれたらと思うんです。極めていった先って“型”になると思うんですが、“型”をいつでも壊せてまた作れるような人になりたいんです。同じ場所にとどまり続けるのは、なんか少し寂しいというのかな。新しい経験が好きで、常に新しい刺激を求めているんですよね。だから旅行が好きなんだけれど、家に帰ってきたときに虚無になる。舞台の公演が終わった後も、同じような感じです。

── 常に新しい刺激を求めている甲斐さんからすると、毎回新しい現場の俳優というお仕事はぴったりだと思うのですが、俳優をやっていてどこに面白さを感じますか?
さっき言ったように、自分には何もなくて何も出てこないんです。でも、お芝居の中では、自分じゃ出合えないような感情に出合えたりする。普段はわりとドライな人間なので、そんなに泣くこともないし、あまりしょっちゅう感動するようなタイプでもないんです。でも俳優をやっていると、そういう瞬間に出合えるのが一番の魅力かな。
舞台に立っていて、たまに今日はすごいなって思うような日があるんです。そういうとき、芝居しながらもうひとりの自分…役を演じていない甲斐翔真がすごく喜んでいるのを感じる瞬間があります。それがすごくやり甲斐があるんですよね。結局、僕は、甲斐翔真自身を喜ばせたいのかもしれません。この人だけじゃ何もできないから、いろんなところに行って、いろんな経験をして、刺激を与えて喜ばせたいんですよ。ちょっと不思議な感覚ですけれど。
── ドライなんですね。甲斐さんの舞台を拝見していると、役というゴールに向かって全速力で走っているように感じるので、少し意外というか…。
ドライなのは、僕が嘘が嫌いで嘘に響かないからなんですよね。だから役を演じるときも嘘を介在させたくなくて、役として本能的にしゃべりたいと思っているし、本当の感情でいたい。もちろん演劇って嘘の世界ですけれど、演劇のすごいところは、それを本物にできるんです。舞台の上で、自分の中の本能を見出すというのかな。それは経験がものを言うんですけれど。
僕は、嘘の中に本当があるから、観ている人も心を動かされると思うし、僕自身はそこで心を動かされる人たちを観ていて幸せで、その瞬間が楽しくて、やっているところもあると思います。本当があるかどうかって、お芝居がうまいとか下手は関係なくて、心があるかどうかで、それは人間にしかできないことなんですよね。
── あらためて、デビュー10周年の今、どんなことを思っていますか?
今、僕がこうやっていろんな世界を見られているのも、応援してくださるファンの方がいるからこそ。応援してくれる気持ちだったり、その存在そのものが僕のガソリンとなって、大胆なこともやれるし、より良いものを見せたいという欲も出る。そういういい循環が、この10年間にあったので、その規模をさらに大きくしていけたらと思っています。未来はわかりませんが、まずは10年やることができたので、そのパーティを一緒に楽しみたいと思っています。
Profile

甲斐翔真
かい・しょうま 1997年11月14日生まれ、東京都出身。2016年の『仮面ライダーエグゼイド』でドラマ初出演を果たし、映像を中心に活躍の場を広げる。2020年に『デスノート THE MUSICAL』で初舞台を踏み、『RENT』『マリー・アントワネット』『ロミオ&ジュリエット』など、数々の大作ミュージカルに出演。昨年出演した『キンキーブーツ』ローラ役も大きな話題に。今年10月に開幕するミュージカル『ミス・サイゴン』にクリス役で出演することが決まっている。
KAI SHOUMA Anniversary 10 YEARS
公演情報

2月27日(金)~3月1 日(日)ヒューリックホール東京 全席指定9900円(入場時別途1ドリンク代600円が必要) キョードー横浜 TEL.045・671・9911 (平日11 :00~15:00)
写真・KAZUYUKI EBISAWA (makiura office) スタイリスト・津野真吾 ヘア&メイク・木内真奈美(OTIE) インタビュー、文・望月リサ
















