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手前から時計回りに、「リス」¥750。チーズフランを包んだふわふわチーズクリームにサワークリームシャンティを重ねた「プルム」¥620は、淡雪のような口溶け。「ショコラミキュイ」¥680は、たっぷりのエスプレッソクリームを絞った半生ガトーショコラ。ほんのりトンカ豆の華やかなニュアンスも。
艶めく漆黒に誘われるまま一口いくと、アイスクリームみたいに、いやそれ以上に軽く、フワッ、スッと溶けてしまった。ショコラのムースなのにすっきりしつつ、舌に消えた後も続くのはカカオとバニラの幸せな香り。味の組み合わせはごくベーシック。けれど繊細でさらりとみずみずしくすらあるテクスチャーや豊かな香りを思うと、無性にまた食べたくなってしまう。
「リス」は福江寛幸シェフが、20年ほど前に作った思い入れあるお菓子を、これまでの経験をもとにブラッシュアップした『LuLu』のシグネチャー。親しみやすくも忘れ難い味わいは、温もりと洗練が息づくお菓子で知られる『菓子工房オークウッド』で長年統括責任者を任された彼らしい。ひたむきに目指すのは、「人の心に残り続けるお菓子。食べた瞬間においしい! となるよう、技術やアイデアを詰め込んでいます」。「リス」の幻みたいな口溶けと鮮やかな香りも、カカオ香とすっきり感を両立するチョコレートを使い、乳化や温度、混ぜ方など細部まで工夫することで叶えたという。ショコラ生地は小麦粉を使わず、ムースとともに消える儚さに。さらに低温で水分を残すように焼いたクレームブリュレを忍ばせ、あの心地よいみずみずしさをまとわせた。ここにしかない研ぎ澄まされたおいしい普遍が、お菓子マニアも近所の子たちも虜にする。
PROFILE プロフィール
チコ
スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
INFORMATION インフォメーション
LuLu
埼玉県さいたま市見沼区東大宮4‐1‐4 トライフォース1F TEL:048・782・7602 11:00~19:00 月・火曜休、不定休 昨年11月オープン。確実に購入したい場合は予約がおすすめ。店頭または電話(インスタグラム@lulu_patisserie_2024で対応時間を要確認)、ベイクモール(準備中)で。
anan 2434号(2025年2月12日発売)より