忘れられないお菓子の一つに、燃える薪から香りを移したケーキがある。燻香と薪火の楽しみに満ちたお菓子を、薪火料理店『Maruta』で生み出したのが根本理絵さん。オンラインから自身のブランド『ka ha na‐菓葉絆‐』を始め、この8月には実店舗を開いた。「自然への感謝や自然との繋がりを感じられる、そんなお菓子が理想です」と、果物の力を丁寧に引き出し、時には植物や自然がもたらす香りをお菓子に纏わせていく。
この季節を待ち侘びるファンが多いタルトタタンも然り。酸味が強い「紅玉」を発酵バターやオーガニックシュガーなどと絡めて3~4時間、低温のオーブンでじっくりと水分を飛ばして、りんごの味をぎゅっと凝縮させていく。さらに芯や皮も余すところなくコトコト煮出し、ペクチンや天然の赤い色素を抽出して一緒に焼き上げる。これで美しい赤褐色が叶ううえ、「皮や芯こそ旨みが強く、入れると全然違います。りんご出汁の感覚ですね」。口に運ぶとふわりと蕩け、ほどよいキャラメル香のなかで、りんごの酸味と果実味が何とも鮮やか。タタンなのにジューシーですらある。さらに金木犀シロップをかけると、りんごの華やかさが際立ち、わずかなビター感が甘さをしめて。路地で不意に漂ってくるような金木犀の香り、そしてりんごの豊かな味わいに、秋の幸せな景色が見えてくる。
10月初旬~11月下旬だけのお楽しみ、「タルトタタン」(4号・直径約12cm。キャラメルソースと金木犀シロップ付き)¥4,200。ホールサイズはオンラインのみ。店頭では5号サイズをカットしたプチガトーが待っています(ソース・シロップなし、キャラメルシャンティ付きとなる予定)。¥680
ka ha na‐菓葉絆‐ 東京都三鷹市下連雀4‐15‐26 TEL:現在非公開 11:00~17:00(売り切れ次第終了) 日~水曜休
チコ スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
※『anan』2024年10月23日号より。写真・清水奈緒 スタイリスト・野崎未菜美 取材、文・chico
(by anan編集部)