美食の街・福岡で欠かせない二大麺。ドームの行き帰りに立ち寄りやすい地下鉄空港線沿線の名店を麺通のお二人が厳選してくれた。
「戦後、長浜の魚市場で働く労働者に向けて、豚骨・細麺・替え玉が特徴のラーメンが生まれました。近年は非豚骨なども人気ですが、やはり福岡といえば豚骨。新旧織り交ぜた豚骨オールスターズを選出しました」(上村敏行さん)
「福岡のうどんはやわらかい食感が特徴。福岡の小麦粉自体の性質もありますが、茹で時間が待てない商人のために前もって麺を茹でておいたのがそのルーツといわれています。県外者には特にやわ麺を推したい!」(山田祐一郎さん)
1、みやけうどん
中洲川端駅から徒歩8分
写真は、丸天うどん500円
博多うどんの基本は全てここにある。
本物の博多うどんを食べたい。そんな声を聞いた時に推すのがこの店。創業1954年の老舗なので、という単純な話だけではなく、ここが博多うどんの原点ともいうべき茹で置きスタイルのやわらかなうどんが今も味わえる稀有な店だから。太麺ながらも茹で置きゆえに提供はスピーディ。しかもかけうどんは400円。ごぼう天、丸天、エビ天といったトッピングは全て100円とお値打ち。早い、安い、旨いの三拍子が揃うからこそ、博多うどんの代表格として今も輝く。
福岡市博多区上呉服町10‐24 TEL:092・291・3453 11:00~17:00 日・祝日休
中洲川端 きりん
中洲川端駅から徒歩3分
写真は、味玉豚骨ラーメン1100円
観光名所・櫛田神社近くのラーメン店。
中洲エリアで人気急増中の一杯は、丼にスープが“なみなみ”と張られた食堂系豚骨。炊き時間、濃度の異なる複数の釜のスープを、その日の状態を見極めながらブレンドする「呼び戻し」手法で作られる。脂を抑えているので飲み口はライト。醤油ダレの絶妙な塩気、甘さとともに、豚骨のふくよかな旨味が舌をたゆたう。麺は福岡の名製麺所「製麺屋 慶史」に特注する卵入りの中太ストレート。無料総菜の辛モヤシなどで味の変化も楽しみながら最後の一滴まで堪能してほしい。
福岡市博多区上川端町9‐151 TEL:092・292・6563 11:00~21:00 無休
3、弥太郎うどん
天神駅から徒歩9分
写真は、ごぼう天うどん550円
朝うどんから締めうどんまでお任せ。
麺は茹で置きのやわらかなうどん。合わせるのは黄金色に透き通ったつゆ。トッピングには定番のごぼう天や丸天などがラインナップ。そんな博多うどんの王道スタイルが24時間楽しめる1966年創業の老舗。昼はもちろん、朝食にも、飲んだ後の締めにも、重宝すること間違いなし。昨今、福岡で広がりを見せる「うどん居酒屋」の先駆者でもあり、終日楽しめるうどんやおでんに加え、夕方以降になると酒に合う30種の一品料理がオンメニュー。
福岡市中央区渡辺通5‐1‐18 TEL:092・761・4155 24時間営業※土曜は翌朝6:00まで 日・祝日休
4、博多ラーメン 二代目けんのすけ 天神本店
天神駅から徒歩5分
写真は、味玉ラーメン920円
“こってり豚骨”を体感したい方はココ。
天神の中心地にありアクセス至便。同店は特に、「より“濃厚”な豚骨ラーメンを食べたい」という来福客にプッシュしている。入店してまず注目するべきは厨房にドスンと据えられた巨大な羽釜。熱伝導が良く、理想的な対流を生む羽釜で大量の豚骨、豚の皮を炊き、焦げ付かないよう混ぜ込みながら濃厚濃密スープに仕上げる。ひと口目からハッとなる豚骨濃度の高さ。どろりとしたスープには骨髄から染み出た旨味も凝縮されている。
福岡市央区天神1‐13‐13 TEL:092・713・7113 11:00~翌1:00(翌0:30LO) 無休 https://kokorotunaguippai.com
5、炉端屋台 正(まさ)
天神駅から徒歩5分
写真は、豚骨ラーメン550円
今夏登場した屋台の中で注目度No.1。
博多観光のナイトライフでは、やっぱり屋台は外せない。近年、福岡市は屋台復興に力を入れ、NEO屋台も続々と登場。なかでも「“ラーメンも”バリうま!」という観点で激推しするのが今年8月にオープンした『炉端屋台 正』だ。実はこの屋台、行列を作る博多ラーメンの超名店『博多 一双』が経営。また趣向の異なる、あっさり味の「屋台ラーメン」を1杯550円の良コスパで販売している。隣の客と肩を寄せ合いながらオープンエアで食べるラーメンは格別。
福岡市中央区渡辺通4‐6‐2 TEL:なし 18:00~24:00(23:00LO) 不定休、荒天時休
6、うどん杵(き)むら
赤坂駅から徒歩12分
写真は、ごま味噌1023円
五感を刺激する隠れ家うどん店。
ビルの2階という、福岡のうどん店では珍しい隠れ家的なロケーション。一般的なごぼう天うどんや丸天うどんなどに加え、「ごま味噌うどん」や「スタミナつけ麺」「肉しぐれ」といったこの店ならではのオリジナルうどんが評判だ。その盛り付けは上品で、店主の審美眼によってセレクトされた器の美しさも相まって、舌だけでなく、目まで喜ばせてくれる。昼からでもうどんとともに酒と肴が楽しめるのも魅力だ。
福岡市中央区薬院2‐14‐28‐2F TEL:092・714・2323 11:30~14:30LO、17:30~21:00LO※売り切れ次第閉店 月曜・第3火曜休
7、麺工房なか
赤坂駅から徒歩2分
写真は、肉ごぼう天800円
福岡市の中心で筑後うどんに舌鼓を。
うどん天国・福岡には博多うどん以外にも多様なうどんが共存する。そのひとつ、筑後エリアのご当地うどん「筑後うどん」を福岡市内のど真ん中で提供する人気店。筑後うどんの特徴とされる“ふんわりねばりコシ”を狙った麺は、幅4mmの細麺だ。唇に伝わるしなやかなコシにうっとりすること請け合い。「福岡県下でいち早く提供していた」と店主が言う、創業時からの名物「ぶっかけうどん」は細いうどんの食感がいっそう引き立つ自慢の一品。“一食”の価値あり。
福岡市中央区大名2‐11‐10 TEL:092・714・0210 11:00~15:00 月・日・祝日休
8、長浜ラーメン じろう。(じろうまる)
西新駅から徒歩5分
写真は、ラーメン650円
知る人ぞ知る長浜ラーメンの実力派。
福岡PayPayドームからもほど近い早良区・西新エリア。商店街から入った小路の奥に、穴場的豚骨ラーメン店『じろう。』はある。福岡ラーメンの文化遺産級の名店『長浜ラーメン 力(りき)』で修業した店主が作る一杯は、豚頭、ゲンコツ(豚の大腿骨)、豚皮を強火で炊き出し、ハンドミキサーも用いながら余すところなく旨味を絞り出した濃厚味。サイドメニューの「焼めし」も名物で、ラーメンと一緒に頼む“焼めし率”は8割を超える。
福岡市早良区西新5‐4‐1 TEL:092・846・1777 12:00~15:00、18:00~23:00 日曜休
ラーメンセレクト、文 上村敏行さん 2002年よりラーメンライターの活動を始め、これまで1万杯を完食。「九州の豚骨ラーメンこそ最強!」を掲げるメディア「RAMEN WONK KYUSHU」(https://rwk-j9.com)主宰。
うどんセレクト、文 山田祐一郎さん 日本で唯一のヌードルライター。著書に『うどんのはなし 福岡』『秘蔵の一杯 福岡』。2020年より父の製麺所を受け継ぎ、「山田製麺」代表に。ライター業と並行し製麺業にも取り組む。
※『anan』2023年10月25日号より。写真・草野清一郎 文・上村敏行 山田祐一郎
(by anan編集部)