お手軽スープで、心の乱れを優しくケア。
イライラする、やる気が出ない…。そんなメンタルの不調は、「東洋医学では“気(き)”と“血(けつ)”という、2つの要素が不足した状態にあると考えます」と語るのは、国際中医薬膳師の瀬戸佳子さん。気と血とは一体どういうもの?
「簡単に言うと気は心と体を動かすエネルギーのこと。血は血液のように栄養や酸素を運び、同時に精神を安定させる役割を担います」
どちらも健やかな心身に欠かせないものだけれど、今はその双方が足りていない人が多いそう。
「気や血を作る穀類や動物性タンパク質が食事に足りていなかったり、“脾(ひ)”と呼ばれる消化器系統が弱っていて、栄養を吸収できなかったり。加えて自粛生活のストレスや、パソコン作業での目の酷使で、気血自体の消耗も激しい。こんな時こそ必要な食材を摂って胃腸をいたわり、気持ちも上向く食生活を心がけたいですね」
そこで瀬戸さんが提案するのが、スープジャーで作るスープ。
「スープは食材を組み合わせやすく、適度に温かいので胃腸にも優しい。朝作れば、昼の忙しい時間にちょうど食べ頃に。缶詰などを使うと簡単に作れて、負担なく続けられます。食べる時はおにぎりなど炭水化物を添えて。スープジャーがない人は加熱時間を増やして鍋で仕上げてもOKです」
気血とは?
東洋医学では、気と血は切り離せないもので、人の体を構成する必要不可欠な要素。「気は体を巡る原動力のような存在。目には見えませんが、足りないと電気が消えるように気力が落ちてしまいます。血は血液と重なるもので、女性は特に不足しがち」
スープ3か条
気血を補う動物性タンパク質を摂る。
動物性タンパク質の多くは気と血液を補う作用があり、特に鮭やイワシ、カツオ、貝類などの魚介類や、豚肉、牛肉、卵などがおすすめ。「大豆製品などの植物性タンパク質よりも素早く、かつ強力にチャージしてくれます」
発酵調味料で胃腸を整える。
脾(胃腸)の働きを活性化する発酵食品は、「調味料で摂るのがコツ。塩で味つけするのではなく、味噌やしょうゆ、ナンプラー、塩麹や酢などを上手に使いましょう。食材としては酒粕や甘酒、梅干しなどもおすすめ」。
薬膳の考えに沿った季節ごとの食材を。
薬膳では、季節の食材には体の働きを調整する力があると考える。「例えば湿気が多くなるこの時期は、体の水はけを良くするとうもろこしやズッキーニがぴったり。特に野菜は旬を意識して取り入れて。自然と体が整います」
スープの作り方のルール
具材は加熱し、半調理する。
とろろなど生で食べられるものを除き、野菜や肉、魚介類は一度火を入れてからジャーへ。ジャーの中で3時間以上放置して、完成。衛生的に安心なだけでなく、うまみも増す。
ジャーはあらかじめ熱湯で温める。
温めたスープが冷えないよう、ジャーに一度熱湯を注いで温めておくと、保温調理で具材にほどよく火が通る。今回は300mlのジャーを使用した例。水分量は適宜調整を。
瀬戸佳子さん 国際中医薬膳師。東京・青山の「源保堂鍼灸院」で漢方の考えに基づく食事アドバイスなどを行う。著書に『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』(文化出版局)。
※『anan』2021年6月23日号より。写真・砂原 文 料理製作、スタイリング・田村つぼみ 取材、文・新田草子
(by anan編集部)