コーヒーから感じる京都のゆるぎなさ。
京都の人はコーヒーが好き。新聞を読みながら朝の一杯、打ち合わせに、ひとりの時間に……、コーヒー消費量が全国1位になるほど、一日の中にあたりまえにコーヒーがあります。代々愛されるお店は数多く、『スマート珈琲店』もそのひとつ。昨年、改装工事で3か月休業したけれど雰囲気はそのまま、再開後も変わらず常連さんが通います。「厨房は機能的に変えましたが、店内は手直しのみ。この雰囲気が好きで通ってくださっているので変えるつもりはありません。初代が作り、2代目が守ってきたものに磨きをかけるのが僕の務めだと思っています」と3代目の元木章さん。コーヒー豆の焙煎、祖母から受け継ぐホットケーキの生地作りを担当し、加減を見ながら店の味を作ります。
『ソニアコーヒ』は1970年創業。有瀬万里子さんが父から喫茶店を引き継ぎ、長年の常連さんと新しいファンに愛される。父はコーヒー豆の卸を続け、喫茶では万里子さんが焙煎したコーヒーを。無農薬の野菜など、食材にもこだわり、スイーツや軽食は手作りで。「コストはかかりますが、自分たちが食べたいものをお出ししたくて」。そんな思いがお客さんとのつながりを深めていきます。
さらに、新しいスタイルの店も次々と登場。まず注目したいのが人気店の2号店。『WIFE&HUSBAND』は古いビルに手を入れて焙煎所『ROASTERY DAUGHTER/GALLERY SON』に。「これまで十分な量を焙煎できなかったので力を入れたかったんです。深煎りを中心に体にしみ入るようなコーヒーをイメージしています」と店主の吉田恭一さん。『珈琲焙煎所 旅の音』が手がけた『MAMEBACO』はわずか1坪のコーヒースタンド。とはいえ一杯ずつドリップし、杏仁コーヒーといったアレンジコーヒー、スイーツとのペアリングも楽しめ、コーヒー通が通います。
4月に開業した『STYLE COFFEE』は豆の個性を生かして、店主の黒須工さんが自家焙煎。特徴を数値にして伝え、自宅でもおいしく淹れられるよう的確にアドバイス。「難しいことではなく、ポイントがあるんです。ラボのように試しながらコーヒーの可能性を広げたい」(黒須さん)。『alt. coffee roasters』は浅煎りに特化し、飲み比べやヴィーガンスイーツとのペアリングで魅力を伝える。「居合わせた方々がコーヒーの話題で盛り上がることも多くて、毎日楽しいです」と店主の中村千尋さん。ただ流行を追いかけるのではない、店主それぞれの思いがあるから京都のコーヒーはおもしろい。
スマート珈琲店
TEL:075・231・6547[寺町三条]
洋食店として昭和7年に創業し、戦後、今のスタイルに。ソーサーに描かれたモダンなロゴは初代のセンス。入り口すぐにある焙煎機が2代にわたって使われる。「プリンはしっかりした硬め。祖母の作り方を受け継いでいますが卵の混ぜ方など、ちょっとしたことで変わります。コーヒーの焙煎も同じですね。全自動でできるものではないので、長年の経験を基に日々の感覚で微調整しています」(元木さん)。2階では洋食のランチが楽しめる。こちらも変わらぬ人気。中京区寺町通三条上ル天性寺前町537 8:00~19:00(ランチ11:00~14:30LO) 無休(ランチは火曜休) https://www.smartcoffee.jp
ソニアコーヒ
TEL:075・492・4077[紫竹]
『Oeuf Coffee(ウフ コーヒー)』を主宰し、コーヒー豆の焙煎、イベント出店などで活躍していた有瀬さんが、祖母と父が始めた喫茶店を昨年から受け継ぐ。店内奥に焙煎室があり、ブラジルのオーガニック栽培の豆など、コーヒーはブレンドせずシングルで常時2~3種類ほど用意。かつて弟と一緒にブラッスリーを営んでいた経験を生かし、ベシャメルソースから作るクロックムッシュー¥800やチーズケーキ¥500など、手作りのおいしさを揃える。心地よさを作る店内の照明は、夫が鞍馬口で営む古道具店『ARUSE』のもの。販売も行っている。北区紫竹西栗栖町38-5 10:00~16:45(16:30LO) 日・水曜休
STYLE COFFEE(スタイルコーヒー)
TEL:075・254・8090[河原町丸太町]
「大事にしているのは、豆の個性です。クリーンにそのまま特徴を出したいときは浅煎り、甘さを出したければもう少し焙煎することもあります。香りや味わいの違いを感じ取ってもらえたら」と、店主の黒須さん。自宅でも浅煎りコーヒーがおいしく味わえるように、豆とお湯の比率、温度など抽出のポイントを丁寧に伝える。コーヒーの魅力を深く知ってもらいたくて、カッピングなどのワークショップも行っている。スタンディングで気さくに話しながら、好みの味を見つけられる。上京区桝屋町360-1 ペアリーフ1F 8:00~18:00(土・日曜9:00~17:00) 火曜休 https://www.stylecoffee.jp
ROASTERY DAUGHTER/GALLERY SON
(ロースタリー ドーター/ギャラリー サン)
TEL:075・203・2767[七条堀川]
北大路の自家焙煎コーヒー店『WIFE&HUSBAND』の焙煎所が昨年12月にオープン。手狭で思うようにできなかった焙煎と豆の販売、2階ではアンティークを扱う。「欲しい方に豆が届けられないこともあったのでようやく場所がもてて嬉しいです」と吉田さん。ブレンドは2種類あり、「DAUGHTER」はすっと飲めてキレの良い深煎り。新たに作った「SON」はコクがあり、ミルクとよく合う。ストレートも5種類ほど揃える。京都駅からほど近く、コーヒー好きのお土産にも。パッケージも好センス。下京区鎌屋町22 12:00~18:30 不定営業(HPでお知らせ) https://www.wifeandhusband.jp/
MAMEBACO(マメバコ)
TEL:075・703・0770(珈琲焙煎所 旅の音)[烏丸丸太町]
元田中にある『珈琲焙煎所 旅の音』が手がける、ちょっと懐かしい街角のタバコ屋さんをモチーフにした、コーヒースタンド。周辺はホテルやオフィスも多く、常連さんと外国人旅行者が入り交じって、いい雰囲気。テイクアウトしてすぐ近くの京都御苑など散策しながら楽しんでも。代表の北辺佑智さんは産地の小さな農園に足を運ぶ中で、「フェアな取引のもとでもっと豆を流通させられたら」という思いで、新たに日常的に通ってもらえるこちらのスタンドを始めたそう。レトロなタバコに見立てた、コーヒー豆のパッケージもかわいい。上京区春日町435 アオキビル1F 10:00~19:00 無休
alt. coffee roasters(オルトコーヒーロースターズ)
[二条城]
中村さんはメルボルンでバリスタを経験。「日本は深煎り中心ですが、浅煎りは産地によって異なる豆の個性がわかっておもしろいんです。浅煎りファンを増やしたくて」と、自家焙煎による専門店を3月にオープン。時間とともに変化する味と香りを感じ取ってもらうため、ワイングラスで。コーヒーとペアリングが楽しめるヴィーガンスイーツも自家製。お客さんとの距離が近いメルボルンのように、気軽に会話を楽しめる。中村さんの気さくな人柄も人気の秘密で、すでに常連さんも多い。中京区神泉苑町28-4 10:00~16:45LO 不定休 https://altcoffee-roasters.com
※『anan』2019年7月17日号より。写真・津久井珠美 取材、文・宮下亜紀
(by anan編集部)
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