“真摯”が身上、その言葉どおりの焼き菓子
ウエストのはじまりは、銀座7丁目の喫茶店。店のおもてにある小さな売店には、シンプルなケーキや焼き菓子が整然と並んでいる。その中でも、創業当時、1947年からある最古参は、リーフパイ。ウエストでつくられる焼き菓子の約5割を占めているという。生産数はというと一日に5万枚で、年の瀬の繁忙期になれば、もっと増える。
かじると、パイがさくさく、その上にのっかった白ザラメが小さくばりばりと音を立てる。そのふたつの音が合わさって、ぱりぱりいうのを聞くのが楽しい。そう、表面にみっしりと白ザラメの粒がまぶしてあること、それがウエストのリーフパイの個性だなあと、いつも、食べる度に思う。ただ、ずうっとそういうスタイルだったわけではなくて、1970年代後半からのことだそう。それ以前はグラニュー糖をまぶしていたけれど、それだと口どけがよすぎて、甘さが強調されてしまう。なるべく甘さを抑えたいという初代社長の意向を汲んで、あれこれと試してみた結果、このスタイルに行き着いたそうだ。それからも、これぞという口触りを求めて、ザラメの粒を大小混ぜるなどの工夫を怠らない。また、砂糖を替えたのと同じ頃に、サイズも小ぶりにした。均一に火が通るようになり、以前より口触りがよくなったそうだ。
そのリーフパイのできるまでを、山梨は一宮にあるウエストの工場にて見学させてもらったとき、工程の途中で意外に思えたのが、薄く延ばしたパイ生地を、菊型でぽんと抜いたところ。あれっ、葉っぱのかたちじゃないの? いや、そのお花のかたちの生地を、白ザラメを敷いた台の上に載せて、麺棒でぐーっと延ばすと、花は葉っぱにかたちを変えた。この工程でザラメも生地にぴったりくっつく。なるほど!
それから、さらに「リーフ」に近付けるため、葉脈をローラーですっすっと描く。一枚につき7本、手作業で。
案内してくれた、工場長の竹内和之さんは、こう言った。
「リーフパイにすじを入れるのには、その人その人の特徴が出ます。機械がつくったみたいに同じ幅にしなさいということは、一切言わないです」
口に入るものには、そんな揺らぎをほんの少し残しておいたほうが、おいしく感じられるのかもしれない。
バター、小麦粉、卵、砂糖だけでつくられるリーフパイは「ウエストのお菓子の原点」だとも竹内さんは言った。
ウエストの社是である「真摯」さがくっきりとあらわれているお菓子なのだ、これは。
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