三浦透子「怖さ以外、やらない理由が見つかりませんでした」

7月1日から開幕する舞台『プライマ・フェイシィ-私の声を聞いて-』に挑戦するのは、俳優の三浦透子さん。傑作と名高い本作にたった一人で挑む彼女に、今の心境を聞いた。


作品に没頭できている時間が一番幸せです

ついにあの話題作が日本に上陸する。舞台『プライマ・フェイシィ』は、2019年にオーストラリアでの初演以降、世界各国から注目を集めた一人芝居。’22年にイギリス・ウェストエンドに進出して大絶賛を浴び、ローレンス・オリヴィエ賞の最優秀新作戯曲賞を受賞。’23年にはアメリカ・ブロードウェイでも上演され、主演のジョディ・カマーが舞台芸術の最高峰の賞といわれるトニー賞最優秀女優賞を受賞した傑作だ。

「3年前に、演出家の栗山民也さんとご一緒させていただいた『ロスメルスホルム』という舞台が、自分にとってとても学びの多い場だったんです。その栗山さんから『次は一人芝居だから』と言われた時は、自分があまりに想像していなかった角度からのお話で、最初は現実味がなかったくらい。それでも栗山さんが、私に一人芝居を任せようと思ってくださったことが嬉しかったです。ただ同時に、この作品を日本でやるのかという想いもあって。驚きと嬉しさと漠然とした不安とが、混ざり合ったような気持ちでした」

その白羽の矢を立てられたのが三浦透子さん。本作は、弁護士のテッサが同僚に意に沿わない性交渉を強いられ、被害者として法廷に立つことで、これまで自身が振りかざしてきた法律という武器に対して疑問を抱くようになる。そのドラマの中に、法律の不平等や矛盾、性的同意の問題、ジェンダー格差など、さまざまなテーマが内包された作品だ。

「今、日本の社会でも表面化してきている問題が描かれています。少し声を上げやすくなったけれど、まだ変化の途中。この公演が、作る側と観る側とが、あらためて一緒に深く考える機会になると思いますし、エンターテインメントだけでない、いろんな意味をもたらす強度のある作品じゃないかと感じています。不思議なのは、私自身について特に積極的に発信しているわけではないにもかかわらず、自分のパーソナリティや日頃考えていることに近い役や作品が、自然と引き寄せられている感覚があることです。ただケラケラ笑える作品も好きですし、もちろん意味があると思いますが、こういう題材、こういう役を、信頼して任せていただけると背筋が伸びる気持ちになります」

一人芝居というだけで俳優にとっては大きなプレッシャーのはずだけれど、今回はなんとザ・スズナリという客席数の限られた小劇場。

「スズナリで上演するということも、演出のひとつなのかなと思っています。それくらいお客さんに届けるという意味で、強い効果を持った空間です。いろんな要素を合わせた時に、怖いという気持ち以外にやらない理由を見つけるのが難しく、挑戦しなくてはと思いました」

語る一言一言に借りてきた言葉ではない体温があり、深さや重みを感じさせる。それは役においても。そこが三浦さんという俳優が信頼される理由だろう。それでいて、役に自我を持ち込むことなく、作品世界に静かに溶け込んでゆく印象。

「お芝居をしている感覚もなくなるくらい作品に没頭できている時間が一番幸せです。ただ私の場合、自由に演じてください、と言われると不自由になってしまう時があります。やることが決まっていれば“自分”はいなくて済むのに、自分で考えるとなると、本来は隠したかった“自分”が出てしまうので(苦笑)」

そうやって悩む実直さも、作品に対する誠実さのあらわれ。

「題材的にも観客の皆さんは、今の日本の現状を頭に思い浮かべながら作品をご覧になる気がするんです。イギリスが舞台のお話で、登場する人物の名前も地名も日本とはかけ離れていますが、違う考え方の国の物語として距離を持たれてしまったらもったいないと思っています。だから私が演じることで、少しでも身近な話として実感を持ってもらえたらと思いますし、そういう作品に育てていきたいです」

Profile

三浦透子

みうら・とうこ 1996年10月20日生まれ、北海道出身。2021年の映画『ドライブ・マイ・カー』で注目を集める。近作に、Netflixドラマ『地獄に堕ちるわよ』、ドラマ『銀河の一票』など。

information

『プライマ・フェイシィ-私の声を聞いて-』

法廷でいかに勝つかを追い求めてきた弁護士のテッサ(三浦)。しかしある日の出来事から、被害者側の立場に立つことになった彼女の目に見えたのは、法制度の不平等性で…。

7月1日(水)~26日(日)東京・ザ・スズナリ 作/スージー・ミラー翻訳/徐賀世子 演出/栗山民也 出演/三浦透子 昼公演6500円 夜公演5500円 シス・カンパニー TEL. 03-5423-5906(平日11:00~19:00) 群馬、福島、茨城、大阪、兵庫公演あり。シス・カンパニー

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写真・小笠原真紀 スタイリスト・佐々木 翔 ヘア&メイク・山口恵理子 インタビュー、文・望月リサ

anan 2501号(2026年6月24日発売)より
Check!

No.2501掲載

魅せるカラダ 2026

2026年06月24日発売

いま鍛えるべき、絞るべきは上半身!? 美人度を底上げする「直角肩」「美シルエット」をつくるための最新メソッドのほか、骨格別のファッションでの魅せ方など、いまの時代ならではのボディメイク法を紹介。

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