
6月19日から開幕する舞台『シャープさんフラットさん』で主演を務める、俳優の柄本時生さんにインタビュー。18年ぶりの上演となる本作で、表現したいものとは。
歳を取れば取るほどできなくなる、芝居をするのが怖くてしょうがないです
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)さんの戯曲をあらゆる演出家が新たに創り上げる「KERA CROSS」シリーズ。第七弾の『シャープさんフラットさん』は18年ぶりの上演で、マギーさんが演出を手掛け、主人公の劇作家・辻煙(つじけむり・ケムリ)を柄本時生さんが演じる。
「KERAさんの作品に携わる機会はないんじゃないかと思っていたので、嬉しかったですね」
舞台は1990年代初頭。トラブルをきっかけに劇団を飛び出した劇作家。逃げ込んだサナトリウムで元芸人らに出会い、半生を振り返る。ほんのちょっとしたニュアンスでも笑いが起きる、繊細な戯曲である。
「稽古ではマギーさんに、台本(ホン)通りにやるとそうなんだけど違う放出の仕方を見つけてほしいと言われました。僕はこれまで、書いてあることをそのままやることを意識してきた人間なので、どうしようかなーと悩んでいます。言い甲斐のあるセリフばかりなので、気を抜くと自分が上手いと勘違いするような、酔った芝居になりそうで、それが怖くて」
独特の存在感を放ちながら、力の抜けたお芝居をさらりとやっているように見えるが、実は毎作品、ものすごく考えてしまうのだそうだ。
「今の俺は正しいのか? 他人の書いたセリフをこんな簡単に言えてしまうこの身体(しんたい)は間違っていないか? ただ、自分のやりやすいようにやっているだけじゃないかとかすごく考えちゃいます(笑)。歳を取れば取るほどできなくなる、芝居をするのが怖くてしょうがないです」
一方で、稽古場で若い共演者がのびのびと芝居している様を、「白石優愛も小野晴子も大爆発ですよ!」と独特のワードで褒め称えた。
「安達祐実さん(の芝居)は別次元だと思いました。そもそも備わっている何かが違う気がします」
本作には、辻煙を筆頭に、笑いを作ることに取り憑かれたような人々が登場するが、その気持ちはわからなくはないと語る。
「結局、社会不適合者の話なんですよね。笑いの道でしか生きられない。『つまらないことで笑い合う人間を見ると虫唾が走るようになった』とケムリは言います。世の中に迎合する人たちを見ると嫌な気持ちになる。僕はケムリほど融通の利かない人間ではないけど、共感はしますね」
柄本さんは近年、ドラマのプロデュースをしたり、YouTubeチャンネルを開設するなど、俳優以外の活動も幅広く行っている。
「先輩方を見ても、本来は俳優一本にした方がいいはず。そうでないと辿り着けない域があるとは思いますけど、自分に何の価値があるのだろうと考えた時に、他のことにも興味を持っちゃったんですよね。でも、どちらもめちゃくちゃ楽しいです」
2月に読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。着実にキャリアを積んでいる。
「一応、親父(柄本明)に電話で知らせたんですよ。そうしたら『大賞じゃないとな』とあっさり切られました。ムカつくー! でも、仲は悪くないんですよ(笑)」
Profile
柄本時生
えもと・ときお 1989年10月17日生まれ、東京都出身。2003年デビュー。出演作に映画『PERFECT DAYS』、連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK)など。映画『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』が6月26日公開。
information

KERA CROSS 第七弾『シャープさんフラットさん』
バブルが崩壊し始める1990年代初頭。辻煙はあるトラブルをきっかけに、郊外のサナトリウムに逃げ込んだ。恋人や元芸人らとの交流を通して、劇作家としての生きざまが浮かび上がる。
6月19日(金)~7月5日(日) 東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA 作/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 演出/マギー 出演/柄本時生、高梨臨、安達祐実、田中俊介、トリンドル玲奈、松永玲子、マキタスポーツ、堀部圭亮ほか 平日昼・土・日曜9900円ほか キューブ TEL. 03-5485-2252(平日12:00~17:00) 名古屋、大阪公演あり。チケットサイト
写真・小笠原真紀 スタイリスト・矢野恵美子 ヘア&メイク・山本絵里子 インタビュー、文・黒瀬朋子
anan 2500号(2026年6月17日発売)より




























