キング・オブ・ポップはいかにして生まれたか。映画『Michael/マイケル』偉大な歴史の光と影を描く物語

プロデューサーは、名作『ボヘミアン・ラプソディ』を手掛けたグレアム・キング、メガホンを握るのはアカデミー賞受賞作を撮ったアントワーン・フークア。ではそのストーリーを読み解いてみよう。

Index

    ① 家族と共に夢を追いかける。躍動する幼いマイケル!

    1958年、インディアナ州の貧しいジャクソン家の六男として生まれたマイケル。兄らが結成したバンドに5歳でリード・シンガーとして加入し、〈ジャクソン5〉はアマチュアで活動をスタート。キャッチーなメロディとポップな音楽性で注目を集め、メジャーレーベルと契約。大ヒットを飛ばし、バンドもブレイク。そして歌って踊れるかわいいマイケルは、今でいうアイドルのような存在に。しかしその裏には、マイケルの音楽的才能を見抜いた父・ジョセフからの厳格な支配があり、マイケルは家族との関係に葛藤を抱えることに…。

    幼いマイケルを演じたのは、当時わずか9歳のジュリアーノ・クルー・ヴァルディ。愛らしく、歌もダンスも完璧。映画の中で兄たちと楽しそうにパフォーマンスする姿はとてつもなくキュート。「マイケルをリアルタイムで観た人は、きっとこんなふうに感動したんだろうな…」と思わせるほど、魅力の塊です。エネルギーを振りまきながら歌う幼いマイケルに注目を!

    ② 卓越した才能を見せ始め、いよいよ伝説の幕開け…。

    類い稀なる才能を見せ始めるマイケルは、映画出演で出会った名プロデューサーのクインシー・ジョーンズと共に、ソロアーティストとして音楽制作に乗り出す。モータウン・レコードからエピック・レコードにレーベルを変え、1979年にソロアルバム『オフ・ザ・ウォール』をリリース。マイケルの自作曲やアイデアを盛り込んだ作品は全米で1000万枚の売り上げを記録。映画では、アイドルからアーティストへと生まれ変わる瞬間を描いている。

    青年期のマイケルは、マイケルの兄・ジャーメインの息子、つまりマイケルの甥にあたるジャファー・ジャクソンが熱演。この作品で長編映画デビューを飾る彼のみずみずしい存在感は、“自分の音楽”を獲得しつつ、それを奏でる喜びに満ち溢れるマイケルに重なるところが。1982年には世界的大ヒットを記録するアルバム『スリラー』をリリース。映画の中ではアルバム収録曲の「今夜はビート・イット」や「スリラー」のMV撮影の裏側も描き出される。

    ③ 呪縛や孤独を乗り越えて、世界的ポップアイコンへ!

    世界的大スターになったマイケルに対し、父親は彼をファミリービジネスに縛り付けようと目論む。家族との関係性や父親の呪縛など、常に悩みの中にいたマイケルに寄り添うのは、幼い頃からマイケルの一番の理解者だった母親のキャサリンと、成功して手に入れた大きな屋敷に迎え入れた、ラマなどのさまざまな動物たち。大スターのマイケルが、夜、アイスクリームを食べながら母親と映画を観ることを楽しみにするシーンは、巨大な成功と内面のギャップが露わになる切ない場面だ。その後、彼はグループの脱退を宣言、1987年にアルバム『BAD』をリリースし、初のワールドツアーを開催するあたりで、物語は終わる。

    大成功を収めたジャクソンズの「ヴィクトリー・ツアー」や、1987年のマイケルの「BADワールド・ツアー」なども再現され、若々しいマイケルのパフォーマンスは感動もの。全27曲のマイケルの名作の数々が、スクリーン上にみずみずしく蘇る。ライブを観るような気持ちで、いざ劇場へ!

    知っておきたいキーパーソン

    ジャクソン5

    デビュー後すぐに大ヒット!マイケルのキャリアの礎に

    4人の兄とマイケルで結成した黒人ボーイズグループで、1969年にモータウンからデビューし大ブレイク。1975年レーベルの移籍で〈ジャクソンズ〉に改名。マイケルは1984年に脱退。映画ではさまざまな時代の演奏が再現される。

    ジョセフ・ジャクソン(コールマン・ドミンゴ)

    パフォーマー・マイケルを育てた、厳格な父親

    製鉄会社に勤める労働者階級の黒人。息子たちでジャクソン5を結成した後は、プロデューサー、プロモーターとして活躍した。息子たちへのしつけが厳しく、映画の中でもその様子は描かれており、さらにマイケルへは強い束縛も…。

    キャサリン・ジャクソン(ニア・ロング)

    孤独なマイケルの支え。優しく穏やかな母親

    マイケルらの母親。ジョセフと結婚後、9人の子どもを出産。厳しいしつけをする夫に対し、子どもたちには優しく寄り添っており、特にマイケルとの距離は近く、彼との間に強い絆が結ばれている様子は映画でもしっかりと再現されている。

    クインシー・ジョーンズ(ケンドリック・サンプソン)

    新たな音楽の扉を開いた、若きマイケルの共同制作者

    映画『ウィズ』の現場でマイケルに出会い、アルバム『オフ・ザ・ウォール』『スリラー』『BAD』をプロデュースし、マイケルの理想の音楽の具現化の立役者となった音楽プロデューサー。彼との出会いで、マイケルの人生は大きく開けた。

    マイケルを演じた、2人のキャストにも注目!

    ジャファー・ジャクソン

    元ジャクソン5のジャーメインの息子で、2019年にミュージシャンデビュー。今作にキャスティングされてから、2年間パフォーマンスを特訓。キャサリン本人に「これがマイケルよ」と言わしめるまでに演技を極めた。

    ジュリアーノ・クルー・ヴァルディ

    子役として活躍する一方、Instagramでマイケルになりきったパフォーマンス動画を公開し、45万人超えのフォロワーを持つ。監督は「ジュリアーノは並外れた才能を持っていて、まるでマイケルみたいだ」と称賛。

    information

    『Michael/マイケル』

    出演:ジャファー・ジャクソン、ジュリアーノ・クルー・ヴァルディほか 監督:アントワーン・フークア 脚本:ジョン・ローガン 製作:グレアム・キングほか 全国公開中 https://www.michael-movie.jp

    劇中に登場する大ヒット曲をぎゅっと詰め込んだサントラも登場

    『Michael/マイケル』オリジナル・サウンドトラック

    劇中に登場する曲の中から、厳選された全13曲を収録。7インチ紙ジャケ仕様。完全生産限定盤¥3,520(ソニー・ミュージック)

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    取材、文・河野友紀


    anan 2500号(2026年6月17日発売)より
    Check!

    No.2500掲載

    王道エンタメの矜持

    2026年06月17日発売

    55年間ときめきを追いかけ続けてきたananがこのメモリアルな号で特集するのは“王道エンタメ”。市川團十郎さん、反町隆史さん、辻村深月さんなど、それぞれの世界で王道を歩んで来られた方々のインタビューを通して、各ジャンルにとっての王道とは何かを探ります。

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