ミュージカル『ミス・サイゴン』に新たな風を吹き込む、2026年度上演のキム&クリスたち

左から、甲斐翔真さん、ルミーナさん、屋比久知奈さん、清水美依紗さん、小林唯さん

サイゴンの街で出逢いお互いに惹かれ合うも、激動の時代に呑み込まれ離ればなれになるキムとクリス。キム役には、2022年に引き続き出演の屋比久さん、新たに清水さん・ルミーナさんが参加。クリス役の甲斐さんと小林さんという個性豊かな顔ぶれにも期待が高まります。皆さんが語る本作への覚悟と作品をいま上演する意義とは。

Index

    屋比久知奈(キム役)

    前回、タム役の子たちの存在に、たくさん助けられました

    初めてこの作品を観た時、キムの辿る道もその選択も、自分の中でしっくりきて、勝手に親近感が湧き、演じてみたいと思うようになりました。私に子どもはいませんが、自分以上に大切にしたい存在ができると、世の中の見方や生き方が大きく変わると思うんです。年公演の時、クリスと別れた後のキムの空白…年の間の変化をどう表現するか悩んでいました。でも、タム役の子たちと顔を合わせた瞬間、自分の中に揺るがないものが生まれて作っていくことができました。今回も彼らの存在に助けてもらえたらと思います。今、平和が当たり前でなくなってきている中、この作品を上演する意義をとても感じています。

    Profile

    屋比久知奈

    やびく・ともな 994年月日生まれ、沖縄県出身。映画『モアナと伝説の海』のモアナ役の日本版声優を務めデビュー。以降、舞台を中心に活躍。近作に、『白爪草』『どろんぱ』などがある。

    清水美依紗(キム役)

    今も世界で続いている戦争の現実を、役を通じて少しでも伝えられたら

    もともと歌手を目指していた私が、初めて「演じたい」と思ったのがキムでした。自分をミュージカルの世界に導いてくれた大切な作品です。キムという役は、演じる人によって心の強さや弱さの伝わり方が大きく変わる役だと思います。役にその人らしさが重なった時、観る方の心により深く届く魅力があるなと感じています。今回演じるにあたっては、自分自身の価値観や信念を大切にしながら、私もキムの人生を丁寧に生きたいなと思っています。今、日本は平和ですが、世界では戦争が続いている状況です。この作品に携わる責任として、今もどこかで起きている戦争の現実も、役を通じて少しでも伝えられたらと思います。

    Profile

    清水美依紗

    しみず・みいしゃ 2000年3月10日生まれ、三重県出身。高校卒業後にNYでミュージカルを学び、『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役、映画『ウィキッド』グリンダ役日本版声優を担当。歌手・俳優として活躍。

    ルミーナ(キム役)

    最後の選択に至るまでの気持ちの過程をしっかり考えていきたい

    『ミス・サイゴン』は、小さい頃から何度も観てきた作品です。壮大な世界観と壮大な音楽、そして何より、何としてでもタムを守ろうとするキムの強い心に惹かれて、いつか必ずやりたいと思ってきた役でした。彼女自身、戦争で家族を亡くしていて、ひとりで生きていかざるをえなかった人。自分の子には自分と同じ想いをさせたくないと、その幸せを願って最後の選択をするわけです。そこに至るまでの気持ちの過程を、どう表現できるかしっかり考えていきたいし、自分自身が楽しみでもあります。まずは、この作品の世界にしっかり入り込み、キムとして存在すること。そしてまっすぐに役を生き抜きたいと思っています。

    Profile

    ルミーナ

    東京都出身。韓国・ソウル大学で声楽を学び、’23年に韓国版『レ・ミゼラブル』で外国人として初めてのエポニーヌ役に抜擢され、大きな話題を呼ぶ。翌年には日本で同役を演じ、注目を集めている。

    甲斐翔真(クリス役)

    あの時代、そうするしかなかったクリスのリアルを伝えたい

    ミュージカルの舞台に立たせていただくようになって年。これまで機会のなかったクラシックなミュージカルに挑戦したい、そこでしか学べないことがあると思いオーディションを受けました。キムの立場では、クリスは不誠実に見えるかもしれない。でも、彼自身も八方塞がりで、あの時代、そうするしかなかったリアルを伝えたいと思っています。そのためにできる限りのことをしたいと思い、出演が決まった後にベトナムの戦争を知るため現地の戦争資料館を訪れたのですが、そこで見たものは、壮絶で言葉にできないほどでした。わずか年ほど前に本当に起きていたことだということを忘れずに演じたいと思っています。

    Profile

    甲斐翔真

    かい・しょうま 1997年11月14日生まれ、東京都出身。’20年の『デスノートTHEMUSICAL』以来、数々のミュージカルに出演。近作に『キンキーブーツ』など。連続テレビ小説『風、薫る』に出演。

    小林唯(クリス役)

    戦争がもたらす理不尽さを描いた物語なんだと思います

    10年近く前、初めて観た時に、時代に翻弄される人々の群像劇としての面白さに惹かれると同時に、複雑なクリスの心情をいつか演じてみたい、と憧れを抱いた作品でした。クリスはキムと出会い、戦場で疲弊した心の穴を彼女が埋めてくれるんじゃないかと直感的に感じたと思うんです。しかし、時代的に正しい選択をしたくてもできなくて、結果的に悲劇を呼んでしまう。当時の状況を考えたら、クリス自身も犠牲者で、そういう戦争がもたらす理不尽さを描いた物語なんだと思うんです。クリスの心情を丁寧に紡いでいけたら、きっと共感してもらえる役になるのかもしれない。今は、そこに挑戦してみたいと思っています。

    Profile

    小林唯

    こばやし・ゆい 1993年2月27日生まれ、兵庫県出身。劇団四季在団中に、『アラジン』『美女と野獣』などに出演。’24年の退団後、『レ・ミゼラブル』『ジャージー・ボーイズ』などで注目を集める。

    information

    ミュージカル『ミス・サイゴン』

    10月23日(金)~11月29日(日)東京・東急シアターオーブ オリジナルプロデューサー/キャメロン・マッキントッシュ 作/アラン・ブーブリル、クロード=ミッシェル・シェーンベルク 製作:東宝 プレビュー公演、大阪、福岡、静岡、北海道公演あり。

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    写真・JOJI(RETUNERep) 取材、文・望月リサ 写真提供・東宝演劇部 撮影協力・バックグラウンズ ファクトリー

    anan 2500号(2026年6月17日発売)より
    Check!

    No.2500掲載

    王道エンタメの矜持

    2026年06月17日発売

    55年間ときめきを追いかけ続けてきたananがこのメモリアルな号で特集するのは“王道エンタメ”。市川團十郎さん、反町隆史さん、辻村深月さんなど、それぞれの世界で王道を歩んで来られた方々のインタビューを通して、各ジャンルにとっての王道とは何かを探ります。

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