
漫画『今夜もひとりですが何か?』の作者、いくえみ綾さんにインタビュー。
コミックスになるなんて大丈夫かなあ…と少し不安でした
『潔く柔く(きよくやわく)』に出てくるたこ焼きや鍋、『あなたのことはそれほど』のカルボナーラ、『G線上のあなたと私』の回転寿司…等々、手がけた作品中でも、登場人物たちはよく飲み食べ、それが心象風景として読み手の心を掴む。そんな食事シーンを描く名手の食生活、気にならないはずがない! いくえみ綾さんの『今夜もひとりですが何か?』は、これ自体が酒の肴になりそうな、共感度たっぷりのグルメコミックエッセイだ。
「担当さんと昼酒を飲み、おいしいものを食べ、打ち合わせのような雑談のような、そんなことばかりやっていた中で、Webでふだんのごはんの連載をしてみませんか、という流れになりました」
作ってみたくなる手料理や間違いのないお手軽つまみ、あるいは気になっていたお店での外食など、おいしそうなものがてんこ盛り。そして面白いのは、苦手な味や子どものころに無理だった食べ物の思い出などビターな体験も挟み込まれていること。そうしたトピックの幅広さに食生活のリアルがあり、読む楽しさがさらに増していく。

Ⓒいくえみ綾/幻冬舎コミックス
「超酒飲みのうちの父親は、甘い味付けのおかずが嫌いだったんですね。それで子どものころからあまり砂糖を使わない味付けで育ってきたせいか、私も基本的に甘いおかずが苦手です。仕事中、友人に作ってもらった肉じゃがが甘すぎてびっくりしたり、卵焼きが甘すぎてびっくりしたり、親子丼が甘すぎてびっくりしたり、とにかく他所(よそ)の家の味付けは砂糖味だなあと思うことが多かったです。年を取ったいまは、つまみに大福を食べたりもして、たまに甘いのもいいなあと思いますが」
アスパラガスは穂先が好きか根元が好きかなどの好みの違い、少食(いくえみさんも夫さんも)ゆえのジレンマ、また、夫さんやお母さん、愛猫たちとのエピソードにも笑みがこぼれる。何より、いくえみさんの幸せそうなひとり飲みの様子(背徳感込み)が手に取るようにわかるのが、本書の読みどころ。
「連載中から自分では落書きのように感じていたので、コミックスになるなんて大丈夫かなあ…と少し不安でした。ただ自分で描いといてなんですが、『きゃわいい!』と思ったのは第15夜のコチャ(亡くなった愛猫コカブ♂)が進行役になる〈おのり、食べる〜〜 ?〉の回。普段は海苔を“おのり”なんて言いませんがコチャにはいつも言っていたので、懐かしく読み返しました。また、第19夜の〈おうちで鉄板焼き〉の回は本当にここに描いたままの感じで、肉を焼くだけなのに忙しくて大変だったのを思い出して笑いましたね」
Profile
いくえみ綾
いくえみ・りょう 北海道出身。マンガ家。1979 年にデビュー。近著に『ローズ ローズィ ローズフル バッド』7巻がある。愛猫家、愛飲家としても知られる。
information
『今夜もひとりですが何か?』
人気マンガ家のグルメライフを覗き見る、全29夜のエピソード集。さらに、単行本描き下ろし編「よっぱらいってふしぎだなあ」を収録。幻冬舎コミックス 1430円
anan 2499号(2026年6月10日発売)より





























