アーティゾン美術館で開かれている、作品にまつわる人物の“語りの場”を想像し、創造する鑑賞体験「カタリウム」をご紹介します。
作品にまつわる人物の“語りの場”を想像し、創造する鑑賞体験
カタリウム、というタイトルは「語り」と空間を表す「リウム(-arium)」を組み合わせたもの。意味するところは「語りの場」。では誰と誰が語り合う場なのか? 例えば一双の屛風があり、贈り物として制作されたとする。贈られたのがお姫様だとすれば屛風を見たとき何を述べたか。贈り主はどんな人で二人の間にどんな会話があったのだろうか。学芸員の平間理香さんは言う。
「小説家は何かしらのシチュエーションを設定し、登場人物の関係性を作り、会話を成り立たせていく。同じように目の前にある作品に関して語りの場を自ら作っていくことで、また違った鑑賞を楽しめるのではないでしょうか」
実は江戸期以前の作品の場合、作者不詳も珍しくなく、わかっている事実はごく限られる。
「作品に付随する資料はあまり公開されないので、その内容は所蔵館のスタッフだからこそ知りうるもの。それが研究のソースになっていきますが、作品鑑賞にもつなげられるのではと常日頃から思っていました。鑑賞者に提示する材料は同じですが、提示の仕方を変えるだけ。皆さんが作品について自由に想像を膨らませられるようにしています」
会場は5つのセクションに分かれ、「屛風を前に」「ある時の神話」など研究をもとにした“語りの場”が設定されている。展示作品は平安・鎌倉時代の絵巻物から初のお披露目となるアメリカ人画家ベン・シャーンの版画など。見どころは「断簡」と呼ばれる、もともと一つの作品だった断片を集めたセクション。今回、六幅が現存する《禅機図》の断簡のうち、各所蔵館の協力のもと国宝を含む三幅が再結集した。
「学芸員なら一度は並べてみたいと願う展示が実現しました」
「お久しぶり!」と作品同士が言い交わしているような場で、さて、どんなカタリウムが始まるだろうか?
「お久しぶり」、離れ離れだった作品の断片が再会
屛風に描かれた在りし日の江戸城天守閣

明暦の大火(1657年)で焼失する前の江戸城天守閣が描かれた作者不詳の屛風が初披露。/《江戸天下祭図屛風》(部分) 江戸時代 17世紀 石橋財団アーティゾン美術館 展示期間:4/3~5/24
大正の世に蘇る日本神話の名シーン

明治・大正期に描かれた古事記の「海幸山幸」を題材にした作品を集めたセクションでは、当時の観客の一人という設定。/小杉未醒《山幸彦》1917年 石橋財団アーティゾン美術館
information
カタリウム
アーティゾン美術館 4階展示室 東京都中央区京橋1-7-2 開催中~5月24日(日)10時~18時(3/20を除く金曜、5/2・9・16・23は~20時。入館は閉館の30分前まで) 3/16、4/13、5/11休 一般2100円ほか※日時指定予約制 TEL. 050-5541-8600(ハローダイヤル)
anan 2484号(2026年2月18日発売)より




















