
アリ・アスター監督
人の不安を操る魔術師。一見ほのぼのとしたビジュアルなのに不穏と恐怖に満ちた『ミッドサマー』などで世界中を虜にするアリ・アスター監督が、最新監督・脚本作『エディントンへようこそ』を引っさげて来日しました~。
不安が生む恐怖を操る魔術師。やさしいんだけど、狂気
本作はコロナ禍の田舎町が舞台。マスク着用は当たり前で、ポストコロナの町を活性化させるためIT企業の誘致を推進する市長(超まとも)と、そんな彼を疎ましく妬んでいて、「コロナは風邪!」と予防措置をしない保安官の対立を、当時の民衆心理を交えて描いた驚異のスリラーです。
「世界中で同じように起きたパンデミックを時代設定にしたのは、アメリカだけでなく世界中で似たようなことが起きていたことを描きたかったから。この作品の舞台になるエディントンは小さなコミュニティで、隣近所みんな知り合いのはずなのに、みんな心ここにあらず。狭いコミュニティなのに、分断され、それぞれが孤独と疎外感を感じています。それってどこでも起きてるでしょ?」
はい。起きてます。が、描き方が恐怖。そして、極端でハチャメチャ。ネタバレになるので言えませんが、中盤からラストにかけての疾走感はほぼジェットコースター。「それは俳優たちのおかげですよ」と監督。

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「めちゃくちゃ豪華なキャストで撮影できたのは恵まれてましたね。エマ・ストーンは以前から友達だったからすぐに決まって、オースティン・バトラーやペドロ・パスカルも以前話したことがあったから即決。ホアキン・フェニックスは前作にも出てもらっていたから、そのときから話をしてたんです。いや、ほんとラッキーですよ。彼らみんな一流だから、脚本に沿った彼らなりの芝居をどんどん提案してもらえて。ほぼアドリブなしだったから、僕のイメージ通りの作品に仕上がりました」
この作品で重要なツールになるのが、SNS。最後にSNSとの上手な付き合い方を聞いたところ…「ネットから離れるしかないよ(ワラ)」的な即答。マジでワラです。
「SNSはランダムのものを流しているように見せかけて、個別のアルゴリズムが働いて、見える世界を狭めようとするんです。だからこそリアルな世界にコネクトするのが一番。すごく難しいことですよね。僕もめちゃくちゃ難しいと思っているけど、ダイエットをする気分でSNSを適度な量に制限するのが第一。そのときにこの雑誌のような活字媒体を読むとか、リアルに散歩とか、 SNSからは得られない情報を五感で体感するのがいいと思いますよ。そうしないと、この映画の主人公みたいに…なっちゃうかもね。へへへ」
Profile
アリ・アスター
1986年、NY生まれ、ニューメキシコ州育ち。2018年の初長編監督作『ヘレディタリー/継承』が話題となり、続く2019年の『ミッドサマー』が大ヒット。人の不安を煽る作風で、現代ホラーの第一人者に。
information
『エディントンへようこそ』
製作・監督・脚本/アリ・アスター 出演/ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラー、ルーク・グライムス、ディードル・オコンネルほか 12月12日より全国公開。
anan 2475号(2025年12月10日発売)より


























