ZETA DIVISIONで活動するClutch_Fi、ta1yo、SHAKA、Lazに独占取材。元プロとしての経験、ストリーマーへの転向理由、配信文化のいま、ゲームコミュニティを広げる取り組みを語ってもらいました。
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Clutch_Fi「すべてのプレイヤーが活躍できるための場所を作りたい」

『Alliance of Valiant Arms』で世界2位を経験し、その他複数のゲームタイトルでもプロ経験を持つClutch_Fiさん。2023年にZETA DIVISIONに加入、ストリーマー転向後もゲームコミュニティを盛り上げている。特筆すべきは自身が主催する「Devil Clutch杯」。これは「競技シーンを引退した元プロプレイヤーたちに、再びスポットライトを当てる舞台を作りたい」というClutch_Fiさんの熱い思いから生まれた大会だ。
「競技シーンでは10代のうちからプロになるケースが多いんです。つまり、学業を修めて就職をするという人生の最も大事な時期をゲームに捧げた人がほとんど。僕の場合は配信という場を見つけられましたが、多くのプレイヤーがセカンドキャリアを模索しているのではと思ったんです。それに引退後の大会との関わり方もコーチになることが多く、選手として出場する機会はない。元プロプレイヤーのための場所を作れたらいいなと思って、自分で大会を企画したんです。プレイヤーから配信者にはなったけどどう配信すればいいかわからない人も多いんじゃないかとも思ったので、この大会を配信することでやり方を掴んでスポットが当たったらいいなと」
大会にはLazさんやcrowさんら錚々たる元プロゲーマーたちが出場し、Clutch_Fiさん自身もチーム「Gokujo Busters」を率いて出場。回を重ねるごとに規模感は増し、12月11日には初のオフラインイベントを横浜BUNTAIで開催する。約5000人を動員する会場で、白熱する戦いが繰り広げられるに違いない。大きな志を掲げ、ゲームシーンの拡張を試みるClutch_Fiさんだが、自身のプレイスタイルは昔から変わらないという。
「配信のために何かを変えようと思ったことはないですね。ゲームが好きだから、自分が楽しめたらいいというスタンスでやっています。思ったことは構わずポンポン言うので、『ブレないね』とよく言われます。それが強みかもしれないです」
Profile
Clutch_Fi
クラッチ 1992年12月11日生まれ、宮崎県出身。『Alliance of Valiant Arms』の公式大会で世界2位に輝いた経歴を持つ。現在は、自身主催のストリーマー大会を開くなど、活動の幅を広げている。活動名の「Fi」は、師匠「Valmet_Fi」から引き継いだもの。
ta1yo「日本のゲームシーンを世界へ広げていきたい」

世界最高峰のeスポーツリーグと呼ばれるOverwatch League(以下OWL)に初の日本人選手として出場したta1yoさん。高校入学とほぼ同時期に発売された『Overwatch』は、未来の地球が舞台の6人対6人のチーム対戦型アクションシューティングゲーム。
「僕はすでに対戦FPSゲーム『カウンターストライク』のプロシーンに憧れを抱いていて、このゲームでもプロゲーマーが生まれるんじゃないかと思ってめちゃくちゃやり込んだんです。気づいたらランキング上位になっていて、プロチームからスカウトを受けました」
2年ほど日本でプロ活動し、19歳で単身アメリカへ。
「自分は最強だと天狗になっていた部分もありました。実力を確かめたかったし、もっと高みを目指すには海外しかないのかなと。それに僕はアメリカと日本のハーフで英語が話せるので、コミュニケーションの面でも問題ないなと思ったんです」
2019年、アメリカ拠点の「Third Impact」へ移籍。日本でプロとして活動していても、セミプロチームで実力を示さないとトップチームに入れてもらえない。チームオーナーの家に住み、同じ夢を持つ韓国人の友達と「強くなろう」とお互いを励ましあった。そして2020年、前年度OWLの世界王者である強豪チーム「San Francisco Shock」へと加入。OWLで手腕を発揮した。2022年からはZETA DIVISIONで、配信の楽しさを押し広げている。
「海外のガヤガヤ雑談しながらゲームをやる空気が昔から大好き。誰かが突然ボイスチャットで『俺、彼女とケンカしちゃってさ』とか言い出して『えー、大変やな』みたいな(笑)。最近は日本もその感覚に近づいていますけど、より雰囲気が出るように促進活動をしています」
さらにストリーマーとして、とある野望も。
「来年は元チームメイトたちを集めて、アマチュアとしてプロの大会に出たいなと。元プロが集まったらどこまで戦えるのか勝負してみたい。道場破りですね」
Profile
ta1yo
タイヨー 2000年4月12日生まれ、アメリカ出身。FPSゲーム『Overwatch』の世界大会で、3年連続で日本代表を務める。現在はTwitchをメインに配信。アパレルブランド『HENDERSON TA1YO』を立ち上げ、商品の企画から生地選び、デザインまで携わる。
SHAKA「ストリーマーのゲーム以外の部分にも注目してもらえたら」

『Alliance of Valiant Arms』の公式大会で通算18回の優勝を記録し、日本代表として4年連続世界大会出場。さらに自身がプロデュースするイベントシリーズ「LEGENDUS」の開催など、レジェンド的な人気を誇るSHAKAさん。今年7月に発表されたZETA DIVISIONへの電撃加入はシーンに激震を走らせた。当初「入らない」と公言していたが、覆ったのにはこんな理由が。
「前々からZETA DIVISIONには、仕事でお世話になっていたので力になれたらなと。あと重要な決断をする時は妻に聞くと間違いがないんです。ふわっとした『いいと思うならいいと思うよ』みたいなコメントなんですけど、悪い感じではなさそうだな…と思って決めました」
長時間配信を行うことで知られるSHAKAさんは「ゲームをする時は配信をする」スタイルだという。
「テレビと一緒で、今誰がやってるかな? とプラットフォームを見ますよね。だからゴールデンタイムは絶対配信して人の目につきやすいようにしてきました。生活リズムをなるべく一定にして、夕方寝て夜中に起きるようなことは極力避ける。偶然見た人にも面白いと思ってもらえたら嬉しいですしね。美容室や飲食店でも『配信』というワードが聞こえてきますし、今はゲームに限らず、配信を見る文化が根付いてきた感覚があります」
加入から4か月が経過した今、心境の変化は?
「最近は会社で話す時間が楽しいです。あれもこれもと準備をしているフェーズですね。イベント系は『競技シーンのために!』というより、個人で面白いと思うことをやっていきたいなと。あとは動画コンテンツを作りたいですね。この間話したのは『スクラッチくじをひたすら削りたい』とか『車に乗って遠出して壺を作りたい』(笑)。最近も配信者35人ぐらいでゴーカートでチーム対抗戦をやったんですけど、自然と輪が広がるのを感じるんですよ。配信者たちのゲーム以外の部分も見てもらえたらなと思いますね」
Profile
SHAKA
シャカ 1991年12月27日生まれ、福岡県出身。FPSゲーム『Alliance of Valiant Arms』の公式大会で18回優勝するなど、輝かしいキャリアを持つ。ストリーマーに転身後も圧倒的なゲームセンスとユーモア溢れるトークで、あまたの視聴者を魅了している。
Laz「ストリームと競技シーンを繋ぐ、ゲーム界の架け橋に」

元『VALORANT』日本代表として世界3位などの実績を持つZETA DIVISIONの中心メンバー、Lazさん。2024年に競技シーンから引退し、現在はストリーマーとしてチームの象徴的存在として活躍。競技から配信へと活動拠点が変わった今、心境の変化は?
「思っていた以上にだいぶ違う世界だなと感じます。プレイヤーの時はやっぱり勝つことがメインで、ゲームをしていない間も常に勝利が頭の中にあったんですけど、今はそれがなくって気持ちがすごく落ち着いています。気が向いた時に楽しくゲームができたらいいですし、本当にリラックスして生活できていますね」
そう語るLazさんの表情はとても穏やかだった。ゲームとの向き合い方も以前とは少し違うという。
「もともと普通にゲームが好きで、ジャンル問わずいろんなタイトルを遊びたいタイプだったんですよ。でも競技となるとひとつのタイトルをやり込む必要があったので、目標を決めて戦ってきたんですよね。でも最近は『ポケモン』の新作が出たら買ってすぐプレイできる。素直にゲームを楽しめるようになった気がします」
自身の配信で心がけているのはチル。リラックスした気持ちでゆったり見てくれたらとLazさんは言う。その一方で、プロとしてのまなざしも忘れてはいない。
「やっぱり日本チームが勝っている姿を見ると嬉しいですし、競技シーンがどんどん盛り上がったらいいなと常に思っています。そうすればいろんなプレイヤーが出てくるはずで、多くの人がゲームに触る機会が増えると思うんです。それが循環して新たなプレイヤーが生まれる。そうやって活性化していってほしい。僕はまだストリーマー歴が浅いですけど、これまで配信でゲームを楽しんでいる人たちと競技シーンが好きな人たちというのは、少し離れた場所にいたと思うんですが、今どんどん交ざってきているように感じるんです。僕も微力ながら、両者を繋ぐ架け橋になれたらいいなと思っています」
Profile
Laz
ラズ 1995年11月26日生まれ、神奈川県出身。日本の『VALORANT』シーンを牽引してきたトップランナー。プロゲーマーを経て、2024年からクリエイターに。冷静な判断力と精密なエイム力が持ち味。甘いマスクとは裏腹なお茶目な一面でファンを癒している。
Lazさん、Clutch_Fiさん・すべてスタイリスト私物
ta1yoさん・パンツ ¥24,200(コンズ/コンズ メンズ 原宿店 TEL. 03-6629-2335) グローブ ¥49,500(シンゴクズノ/シアンPR) その他はスタイリスト私物
写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・ダヨシ ヘア&メイク・鈴木かれん 高松由佳 取材、文・飯田ネオ 鈴木恵美
anan 2473号(2025年11月26日発売)より


























