秋の夜長に楽しみたい、名作・猫映画リスト。猫映画について語るYouTubeチャンネルが好評の金田淳子さんが、とっておきの名作を教えてくれました。
Index
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』2016年/イギリス

「あの猫」本人が出演してハイタッチ!
イギリスでシリーズ累計1000万部売れたノンフィクションを元とした伝記映画。ミュージシャンを夢見る若者ジェームズは、無職で麻薬中毒。ある日、部屋に野良猫ボブが迷い込み、情が移って世話を焼く。ボブは賢く、ジェームズの路上ライブやホームレス支援雑誌『ビッグイシュー』の販売にも同伴し、愛想を振りまき大人気に。ボブの存在に支えられ、ジェームズは過酷な断薬治療に挑戦する。社会復帰ものとしては猫に頼りすぎだろうが、本作の猫的な見どころは、登場するボブがボブ本人(本猫)であることだ。ジェームズの命を救ったというのも納得の賢さ、愛想の良さ、お客全員サービスのハイタッチを見届けてほしい。Blu-ray¥5,170 DVD¥4,180(発売元:コムストック・グループ 販売元:ポニーキャニオン)Ⓒ2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
『Flow』2024年/ラトビア

「猫らしさ」を追求した匠のアニメーション。
豊かな森林を突然の洪水が襲った。森の中の一軒家をねぐらとしていた猫は小舟に逃げ込み、小舟の先客だったカピバラ、後に合流するワオキツネザル、犬、そして猫を庇って怪我をしたヘビクイワシらと出会い、奇妙な縁を結ぶ。水の流れのまま、動物たちは人類文明の遺跡が残る不思議な世界を旅していく。アニメーションで動物を描く時、実写に寄せるか、虚構性を活かすかという2つの方向があるが、本作は前者を選択している。猫の柔らかでなめらかな動きや、全身を使った感情表現はまるで本物の猫のよう。さらに猫が水を怖がる場面を丁寧に描くことで、猫が水中に豊かな世界があると気づく中盤のシーンの感動も際立つ。Blu-ray¥5,280 DVD¥4,180※11/5発売(発売・販売元:ファインフィルムズ)ⒸDream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.
『こねこ』1996年/ロシア

実写映画でこんな場面が撮れるはずがない!
演奏家の飼い猫チグラーシャは、ひょんなことからトラックで遠方に運ばれ、大の猫好き男性フェージンの家に新入りとして迎えられる。ところがこの家に地上げ屋が押し入り、フェージンは殴られ昏倒。猫たちは彼を守ろうと立ち向かい追い払うも、騒ぎの中、離れ離れに。チグラーシャも再び住む家をなくし野良猫になるが、ある建物に忍び込んだ時、クラシック演奏の懐かしい音色が…。実写ならこれ! という定番の猫映画。猫に込み入った演技をさせるのは難しいはずだが、奇跡のシーンの連続。特にクラシックコンサートでの子猫の行動は、猫に詳しい人ほど驚くはず。人が猫を慈しみ、猫が人を慕うという関係が描かれるのも嬉しい。Blu-ray¥2,420 DVD¥1,650(発売元:アイ・ヴィー・シー)
『三匹荒野を行く』1963年/アメリカ

友達を守るため、猫が巨大な熊に立ち向かう。
シャム猫のテーオ、ラブラドール犬のルーア、ブルテリア犬のボジャーは大の仲良し。飼い主の仕事の都合でしばらく遠方に預けられることになるが、事情を知らない三匹は脱走してしまう。三匹は無事に飼い主の家にたどりつけるのか。本作は実写猫映画の傑作の一つといわれ、ストーリーは単純ながらも、どうやって撮影したのかと驚くシーンがある。特に、老犬ボジャーが巨大な熊に襲われた時、テーオが間に入り、熊を威嚇するシーンは奇跡の一言。テーオは序盤からさかんにボジャーに体をすりつけているが、これは猫が相手を好きでなければやらない行動。本心からボジャーを守ろうとしたのかもしれない。尊い。DVD¥3,080(発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン 発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング)Ⓒ2025 Disney
『ぼくのエリ 200歳の少女』2008年/スウェーデン

猫は吸血鬼が大嫌い! 猫映画の隠れた名作。
少年オスカーは学校で陰惨ないじめに遭っているが、誰にも打ち明けられず、復讐心を持て余している。そんな折、オスカーは隣の部屋に引っ越してきた少女エリに出会い、謎めいた雰囲気を持つ彼女に心惹かれていく。一方でエリとその父親が引っ越してきてからというもの、この地域では連続殺人が起きているのだった。本作はいわゆる吸血鬼もので、猫映画として制作されているわけではない。しかし動物の中で猫だけが吸血鬼の存在に気づくことができ、吸血鬼を非常に嫌うという心躍る設定があるため、猫映画として選出した。ある登場人物が意図せず吸血鬼になってしまい、猫たちに襲われるシーンは、気の毒ではあるが見どころの一つ。Blu-ray¥3,080(発売元:ショウゲート 販売元:アミューズソフト)ⒸEFTI MMVIII ⒸEFTI_Hoyte van Hoytema
『ハリーとトント』1974年/アメリカ

老人と猫、連れ立って人生最後の旅に出る。
住み慣れたアパートから立ち退きを迫られた老人ハリーは、愛猫のトントを連れ、息子や娘の家を訪ねる旅に出る。長男はハリーに同居を提案するが、長男の妻の気持ちを尊重したハリーは辞去。長女とは女性の自立を巡って喧嘩になり、ハリーは再び独居することを選ぶ。それからしばしの時が経ち、ハリーは老いたトントの死を傍らで看取るのだった。いわゆるロードムービーであり、驚くような場面はないが、老人が愛犬ならぬ、愛猫を連れて旅する絵面が珍しい。猫は環境の変化を嫌うため、本作のように猫をリードだけで繋いで見知らぬ土地へ連れていくこと自体、非現実的だ。それだけになんとも羨ましい。Blu-ray¥2,096(発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン 発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング)Ⓒ2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
Profile
金田淳子
フリーライター。1973年、富山県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(社会学修士)。得意ジャンルはBLなど女性のオタク文化だが、何より好きなのは猫。YouTubeチャンネル「ほぼ週刊 カネジュン with 猫嵐ヒョウのネコ映画レビュー」では、愛猫家の視点から忖度抜きで猫映画を語る。
anan 2469号(2025年10月29日発売)より


























