
1歳でデビューし、いまやNetflix作品で世界からの熱視線も集める豊嶋花さん。18歳にしてプロフェッショナルの俳優である彼女の素顔、最新作、そしてその瞳が見つめる未来。
ときに艶やかに、ときにイノセントに…。一瞬ごとにその場の空気を変えるような表現力で演じ手としての実力をカメラの前でも発揮してくれた豊嶋花さん。1歳でデビューしてすでにキャリア18年を誇る彼女が、この夏は青春キャンプドラマで、新境地に挑む。

――夜ドラ『あおぞらビール』では男子キャンパーたちに交じってアウトドアを楽しむ女子大生役。今までにない役柄では?
そうかもしれません。演じる弥生ちゃんは、真面目でガリ勉ぽいけど、実はキノコオタク…という、窪塚愛流さん演じる主人公の森川くんをはじめとする男子チームに負けない濃いキャラの持ち主(笑)。キャンパーとしての森川くんに憧れて最初から装備をきっちり揃えたり意気込みがすごい子なんですけど、私も多趣味で形から入るタイプなのでそこは「わかるなぁ」って。私も兄がギターを弾いてたのを見て速攻でギターを買ったこともありますし、スキンケア好きが高じて、コスメの品質表示とか読んで成分に詳しくなったり。
――役に負けず劣らずの探究心! そしてタイトルの通り、ビールを飲むシーンが印象的なドラマですが、豊嶋さんは18歳。ビールって、どんなイメージですか?
青空の下でのビール。「最高なんだろうな~!」っていうのは、想像になりますがなんとなくわかります(笑)。私自身、アジのなめろうとかチータラが好きなので、周りから「将来、絶対お酒飲みになるよ~!」って言われてますし。
――確かに将来性を感じさせるお好み…。今回は同年代の俳優さんが多い作品ですが、撮影は楽しく進んでいますか。
まさに今回の撮影は同年代チームの中で女子一人だったので「仲間に入れるかな」と心配だったんですけど(笑)、同じ事務所の(南出)凌嘉くんが橋渡ししてくれて、窪塚くんや携帯ゲームを介して藤岡真威人くんとも撮影初日から打ち解けることができました。しかも最初「そのゲームって何?」っていう状態だった真威人くんが一番ハマってます(笑)。あと撮影も野外でごはんを食べるシーンが多くて、それもめちゃ楽しいです! 私1歳からこのお仕事をしていて、ずっと日焼けやケガを気にしなくてはいけなかったので、子供の頃はアウトドアも同級生のようには楽しめなかったんです。でも高校を卒業して、もう大人として自己管理できるようにもなったし。今度は友達ともキャンプとか行ってみたいなーって、今回の作品をきっかけに考えるようになりました。何より自然の中でみんなと食べるキャンプごはんがおいしくて…! アウトドアの楽しみに目覚めつつあります。
私生活では“森ガール”ルックに夢中です。
――赤ちゃんの頃から大人に囲まれてお仕事をしてきたと思いますが、私生活で同級生と話が合わない、みたいなことってありましたか…? そういうのって、勝手なイメージかもしれませんが。
たまーに聞かれます(笑)。でもオンオフの切り替えは自然と身についているんですよね。特にこないだまでは高校生だったのでオフは「ザ・女子高生!」っていう生活を満喫してました。友達ともフツーに高校生らしい話で盛り上がったり。
――SNSにもティーンらしいおしゃれな私服ショットをあげているのが印象的でした!
ありがとうございます。ファッション大好き! 下北沢や高円寺の古着屋さんに通って自分なりにコーディネートしてみたり。最近のテイストで言うと…レトロな森ガール系にハマってます。
――えっ! 森ガールが流行ったのって、ちょうど豊嶋さんが生まれたときくらいですよね。
そうなんですか? はい、“昔”っていうのはわかります(笑)。バブーシュカやニットベストにフリルのスカート。お仕事とは別に、自分の好きなものがあるので、オンオフが自然に分けられているんだと思います。1歳から仕事をしているからこそプライベートも思い切り楽しみたい! っていう無意識の意識が小さい頃から常にある。森ガールもその趣味の一つ。
――ちなみにお仕事の最初の記憶は何歳の頃ですか?
5歳で初めて映画に出演したんですけど、そのときの撮影の記憶は鮮明です。『外事警察』という作品で、私は真木よう子さんの娘で失語症の女の子の役。いま思えば難しい役なんですけど、私自身は「カメラがいっぱいある!」って大興奮していました(笑)。
――お芝居しているという感覚はもうあったんですか?
ぜーんぜん、です。母が場面とセリフをスケッチブックに書いてくれて「ここはこういう気持ちで言ってるんだよ」って教えてくれて…読み聞かせの延長線上ですよね。で、その聞いた言葉を自分でも言ってみる、みたいな。そうそう、当時の私が『シンデレラ』のセリフを言う動画が残ってるんですけど、母の口調を耳コピしてそのまんま言ってるんですよ!
――すごい。絶対音感的なものがあるんでしょうね。
今も耳がよすぎて、電車移動のとき周りの音が気になっちゃってヘッドホンがないと落ち着かなかったり…(苦笑)。ノイズキャンセリングを使ってます。
――そんな天才少女がお芝居に目覚めたのはいつですか。
黒柳徹子さんの人生を描いたドラマ『トットちゃん!』でトットちゃんの幼少期を演じさせていただいた10歳のときですね。オーディションだったんですけど、なんていうかもう…「絶っっ対にトットちゃんをやりたい!」って思ったんですよ。それで母の手を借りずに役作りをして、座り方一つ、ジェスチャー一つにしても工夫してオーディションに挑んだら、厳しいことで有名な監督さんが身を乗り出して私のお芝居を見てくれたんです! それが目線の端でわかって、ものすっごくうれしかった! 「あの快感をまた味わいたい」って思ったことが今に続いているんじゃないかなと。
――演じる快感を10歳にして感じられて…。反対に、お芝居の壁のようなものを感じた経験もすでにあるのでしょうか?
それで言うとNetflix作品『新幹線大爆破』の小野寺柚月役です。正直、あそこまで自分が追い詰められるとは思っていませんでした。役に圧倒されそうになりながらもがいて、あんなに集中力を研ぎ澄ましたことはなかったです。大事なシーンの前とか心がきつくて役にエネルギーが奪われて、すごく眠くなる。それで撮影の合間はパイプ椅子に座って、ベンチコートをテーブルの上に敷いて突っ伏して寝ていました。で、出番で呼ばれたらむくりと起きて、終わったらまた気絶するように眠る、の繰り返し。
――その没入状態はどのようにして訪れたんですか?
セットに入ったときですね。経験と直感で思ったんです。「あ、今までのやり方ではダメだ」って。豊嶋花という人間の心に、どれだけ柚月を入り込ませるか。家に帰ったら緩んで役が抜けてしまいそうだったので、撮影のない日もロケ地の木更津に泊まったり。孤独な作業でしたけど、それだけだと自分が潰れちゃうから、友達に電話をしてバランスをとって…。その試行錯誤の結果として、世界中から反響をいただいて、「こんなに増える?」っていうくらいフォロワーも増えて驚きました。
――この作品を通して見える世界が広がったことで、今後やってみたい役なども増えたのでは?
まさにそうです。実はこれまで「サイコパスを演じてみたい」とよく言っていたんですが、この作品で叶いましたので(笑)。今度はギャルとかヤンキー系の役をやりたいなーと。イメージにないかもしれませんけど、男兄弟に囲まれた環境で育ったので、自信はあります。
――心にギャルの部分があるということですか?(笑)
はい(笑)。絶対いけると思うんですよね。役のオファーお待ちしてます!
――18歳、まだまだこれから。1年後、どうなっていたいですか?
はっ、難しい…! 1年後ってほんとにわからなくて…。というのも『新幹線大爆破』の撮影が去年の春で、公開が今年の春だったので、その間が約1年あったんです。その当時はあまり忙しくなく、すごく不安だったんです。だけど1年後の今『なんで私が神説教』という学園ドラマに続いて、この『あおぞらビール』に参加できて、とても充実しているわけで…。そんな感じなので、このお仕事は本っ当に読めないんですよ! どうなっていたいというよりも、予想もつかないワクワクする仕事が来るのを楽しみにしてます。
――その想像できなさもこのお仕事の魅力かもしれませんね。
それはもうほんとに。物心ついたときには芸能界にいたので「このままでいいのかな」と悩んだ時期もありました。でも今この時点で、一番好きなことはなにかと聞かれたら「お芝居!」って答えられます。あとここまで話してお気づきだと思うんですけど…実は私おしゃべりが大好きなんです!(笑) 一見おとなしく見られますけど。だからラジオのパーソナリティも夢の一つ。それこそ大好きなファッションや美容の話とかしたいです。美容は特にアイブロウが大好きで、友達の眉デザインとかもやってあげるほど好きなので。
――豊嶋さんの等身大トーク、聴きたいです。一方、作品が世界で注目されたことで活躍の舞台が海外にも広がるのでは…?
だとしたら嬉しいです。最近いただくDMやコメントが英語など多言語で国際色豊かになっているので、海外をぐっと身近に感じるんです。それに英語の勉強はずっと好きだったしホームステイにも行ったことがあったので、これからも学び続けていきたいです。いつか海外の作品に出て、すらすら~っと英語が話せたら…絶対かっこいいですよね!?
豊嶋 花さん
Profile

とよしま・はな 2007年3月27日生まれ、東京都出身。1歳でベビーモデルとしてデビューし、『いないいないばあっ!』などに出演。ドラマ『トットちゃん!』や『大豆田とわ子と三人の元夫』など出演作多数。今春Netflixオリジナル作品『新幹線大爆破』に出演し世界の注目を集めた。趣味はファッションにメイクと、等身大のオフも楽しむ18歳。
NHK夜ドラ『あおぞらビール』
Information
キャンパーとして青空の下でのビールと自由をこよなく愛する男子大学生のアウトドアライフと、彼をとりまく個性的な同級生&キャンパーたちの物語。毎週月~木曜22時45分~23時 出演・窪塚愛流、藤岡真威人、豊嶋花、南出凌嘉ほか 豊嶋さんは主人公の同級生、三条弥生役。毎週のスペシャルゲストにも注目。
写真・JOJI(RETUNE Rep) スタイリスト・藤山晃子 ヘア&メイク・石川奈緒記 インタビュー、文・大澤千穂
anan2453号(2025年7月2日発売)より