Who's Hot?

〈WHO’S HOT〉一ノ瀬颯「新しいものに常に触れ続けることを大事にしているんです」

エンタメ
2025.04.17

ドラマや映画、バラエティ番組などで度々目にする一ノ瀬颯さん。初舞台のことや、スカウト秘話、お芝居への気持ちをオリジナリティ溢れる言葉で熱く語っていただきました。

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新しいものに常に触れ続けることを大事にしているんです。

劇団☆新感線の『紅鬼(あかおに)物語』で、舞台初出演を飾る一ノ瀬颯さん。

――稽古を前にして、今どのようなお気持ちですか?

一ノ瀬颯さん(以下、一ノ瀬):すごく緊張しています。舞台経験が豊富な共演者の方々に比べて舞台の基礎知識も何もなくて、スタートが全然違いますから。他の方たちよりも僕は何倍も努力してやっていかないと、って。

――映像と舞台で、お芝居は全然違いますもんね。

一ノ瀬:発声の仕方から何もかも、自分にない視点やアプローチが必要だと思います。でも、これまで経験できなかったことに触れられて学べるので、役者人生にとってすごく貴重でありがたい機会です。

――新たな経験や試練みたいなものを積極的に乗り越えていきたいという気持ちは強いほうですか?

一ノ瀬:はい。僕からしたら、学びになることならどんなことでも。そもそも正解がない世界だからこそ、学べるチャンスがあれば逃さずに飛び込んでいきたいんです。いま鴻上尚史さんや海外の演出家が書いた本を読んだりしているのも、自分にとって何がヒントになるかわからない、という気持ちからなんですよね。

――それがお芝居のやりがいにも繋がるのでしょうか。

一ノ瀬:そうだと思います。僕の最初の仕事が『騎士竜戦隊リュウソウジャー』という戦隊モノで、その時に視聴者のみなさんの反応を見て大きなやりがいを感じたんですね。今回の舞台はさらに好奇心を持って、そして壮大なスケールの中で、青木豪さん作、いのうえひでのりさん演出で、主演の柚香光(ゆずか・れい)さんはじめ、早乙女友貴さん、喜矢武豊さんなど錚々たる方々とご一緒させていただける。そして普段僕を応援してくれている人たちに直接お芝居を見てもらう機会をいただけるということで、得るものは大きいと思っています。新しいものに、常に触れ続けることを大事にしているんです。

――まだ稽古は始まっていないそうですが、以前、いのうえさんのワークショップに参加されたことがあるとか。その時に、それまでのやり方との違いを感じたりも?

一ノ瀬:映画やドラマのお芝居は、ゴールを目指して進んでいくというより、役の心情を紡いでいきながら、相手とのやり取りなどにより物事の受け取り方を変化させていくという感覚。でもいのうえさんは、ここはこう動き始めてセリフの声の高さはこのぐらいで…というように明確に演出されるんです。いのうえさんの頭の中で、照明や音まで含めたことをイメージした上での演出なんだと、最後にすべてを合致させて出来上がった時に納得しました。共演者で劇団員の粟根まことさんはそれを塗り絵に例えて説明してくださって。色を塗って形を作るのではなく、いのうえさんの演出によりアウトラインを最初に作ってもらってから、中の色を自分で埋めていく。そういう違いだって。

――なるほど。確かに新鮮ですね。今回の舞台では一ノ瀬さんは鬼にさらわれる桃千代を演じられますが、立ち回りも多いようですね。

一ノ瀬:僕、運動神経だけには自信があるんです。だから殺陣もありますが、しっかり練習をして披露したいと思っています。殺陣に向いてなかったら大変なことになりますけど…。

――28年間の自信が…(笑)。

一ノ瀬:傷ついちゃう(笑)。だから意地でもやり切りたいです。

――スポーツをしていましたか?

一ノ瀬:幼稚園から小4まで水泳をやっていて、小学校6年間はサッカーや剣道、中学ではバスケといろいろ。あと、年少で逆上がりと雲梯ができるようになったんです!

――すみません、それは結構すごいことでしたっけ…?

一ノ瀬:だと思います(笑)。周りは確かまだそこまでできていなかったかなと。『仕掛人・藤枝梅安2』という映画で、佐藤浩市さんのバディ役で殺陣の経験は少しあって、浩市さんからも殺陣を褒めていただきました。

――それは安心ですね。初舞台を経験することで、この先の俳優人生にどんな期待をしていますか?

一ノ瀬:デビューして6年間で培ってきたものを活かせると同時に、凝り固まっているものをぶち壊してもらえるのではないかという期待があります。ジャンルの違うものを経験することで、新たな能力が鍛えられると思ってて。例えば『王様のブランチ』は情報バラエティ番組ですけど、その場での対応力や瞬発力みたいなものが培われている実感があって。お芝居をしている時に、“あ、これバラエティで得たものが活きている”と思った瞬間がありました。そういう想像もしなかったことをまた経験できると思うと嬉しいです。

インプットを続けながら人生を豊かにしていきたい。

――スカウトされたのは、大学の入学式に遅刻しそうで急いで向かっていた時だと聞きました。

一ノ瀬:はい。実はそれまでに紆余曲折ありまして。最初の受験で希望叶わず浪人生に。翌年の受験ではいくつか受かったんですが、第一志望の補欠合格を待っていたところ、受かっていた大学の授業料納入期限を把握していなくて、すべての大学に行けなくなって。専門学校に通いつつ3年目にようやく大学に進学したんですが、モチベーションが落ちていて。それで入学式なのにギリギリに…(笑)。

――走っていたんですか?

一ノ瀬:早歩きというか競歩ぐらいです(笑)。その時に、今のマネージャーさんが「芸能界に興味ありますか?」と声をかけてくれて。最初はこんなに急いでる人に道聞く? って思ったけど、そうではなかった。いったん名刺をいただいて、ロスぶんを取り戻すためにより速い競歩で大学に向かって。

――より速い競歩!(笑)それまで、自ら芸能を目指したことは?

一ノ瀬:幼少期に戦隊モノを見ていて、演じているお兄さんたちがカッコいいし面白そうだなと憧れたけど、親から「生き残っていくには難しい世界だよ」と言われて。そこからは、自分には関係ない世界だと思って生きてきました。人生できるだけ上手くいけばいいなと思いながら、勉強に専念して。

――当時の夢は?

一ノ瀬:人のためになる職業で、何かしら資格があるといいなとは思っていました。高1の模試で“自分の人生の半分近い時間を占める仕事を、お金で選ぶか、やりたいことで選ぶか”という問いがあって。そこで人生一度きりだし、お金よりもやってみたいことにチャレンジしたいと思ったんです。とはいえ大学に入った時も将来のことは漠然としていて。だからスカウトは渡りに船でした(笑)。

――戦隊ヒーローに憧れていた幼少期から時を経て、最初に決まった仕事が『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の主演。すごいですね。

一ノ瀬:事務所に入りたての研修生の時に、「小さい頃に見ていた戦隊モノで面白そうだし、いい経験だな」ぐらいの感覚でオーディションを受けたんですけど、年齢も考えると受かるとは思ってなくて。結果報告で事務所の人から呼ばれた時は、もうこれで終わりだと覚悟したぐらい。でも「受かりました」って。昔から憧れていたものになれると思ったら、感動してきちゃって、涙と鼻水と手汗と…全部の水が止まらなかったです。

――先ほどから独自の表現方法をお持ちで面白い方なんですね(笑)。初めての撮影はどんな感じで?

一ノ瀬:忘れられないのが、動物園で行った最初のロケでした。それまで無機質なスタジオで、レッスン着でお芝居の練習をしていたのに、衣装を着て髪を整え、カメラの前に立ったら途端に気持ちが入って。僕はこれを仕事として始めたんだ、という気持ちでワクワクしていました。お芝居の土台やキャラクター作り、グリーンバックで見えない相手に向かって喋るとか、アフレコ、舞台挨拶に取材対応など、たくさんのことを一気に経験させてもらったことにも感謝しかない。僕にとって大切な作品です。

――その後はどんなモチベーションでお仕事を?

一ノ瀬:戦隊後はやっとスタートラインに立ったぐらいの気持ちで、いただける役をコツコツ積み重ねていきたいと思っていて。ここまでやってこられたのも、たくさんのご縁に恵まれたから。大きな挫折もなかったです。

――当て馬、ヒモ男、闇を抱えた大学生や、最近では正義感の強い指令管制員など。いろいろな人物をどのように演じ分けていますか。

一ノ瀬:前はノートにその人物の年表みたいなものを書き出したりしていたんですけど、最近はその人物について自問自答を繰り返しながらブツブツと言葉にしています。自分の経験になっていく感覚で気持ちをシフトさせていくやり方が効果的だと感じていて。それこそアウトラインがだんだん出来上がっていく感じかと。(ドラマ『119 エマージェンシーコール』の)与呉(よご)心之介を演じた時に、通報を受けて長く対応するシーンで、与呉ではなく自分自身が対応しているような感覚になり、セリフが自分の言葉として自然に出てくるようでした。これこそ僕が目指すお芝居だと思いました。

――素晴らしい体験でしたね。ところでお休みの日は何を?

一ノ瀬:人と会うのが好きで、小学校から大学までのいろんな友達と会っています。『王様のブランチ』でご一緒した芸人のインディアンスさんとは波長が合うみたいで、特に田渕(章裕)さんには何度もごはんに連れていってもらったり。あと、最近は毎月1つテーマを決めてクリアするようにしています。3月は“お芝居の月”でした。これまでのレッスンでたくさんメモを取ってきたので、それらの総復習を。新しい本を読んで自分に合う方法を探り、インプットを増やせるようにもしました。ちなみに2月はセルフマッサージなど“美容の知識を増やす月”でした。

――勉強熱心ですね。

一ノ瀬:何者かになりたい気持ちが強いので、インプットを続けながら人生を豊かにしていきたいです。

PROFILE プロフィール

一ノ瀬 颯

いちのせ・はやて 1997年4月8日生まれ、東京都出身。2019年、主演ドラマ『騎士竜戦隊リュウソウジャー』で役者デビュー。映画『仕掛人・藤枝梅安2』『十一人の賊軍』、ドラマ『若草物語 ‐恋する姉妹と恋せぬ私‐』『119 エマージェンシーコール』など話題作に出演。放送中の『王様のブランチ』(TBS)にレギュラー出演。

INFORMATION インフォメーション

『紅鬼物語』

貴族の源蒼(鈴木拡樹)の家臣、坂上金之助(喜矢武豊)が鬼の栃ノ木(早乙女友貴)に襲われる。10年前、蒼の奥方・紅子(柚香光)と娘の藤(樋口日奈)が突然姿を消したのも鬼の仕業だと考え、皆で二人を取り戻そうとするも桃千代(一ノ瀬颯)も鬼にさらわれ…。2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』は5月13日~大阪・東京にて公演。

シャツ¥48,400(イレニサ) パンツ 参考商品(ガブリエラ コール ガーメンツ/faye faye_project) その他はスタイリスト私物

写真・小笠原真紀 スタイリスト・檜垣健太郎(tsujimanagement) ヘア&メイク・池上 豪(NICOLASHKA) インタビュー、文・若山あや

anan 2442号(2025年4月9日発売)より

MAGAZINE マガジン

No.2442掲載2025年04月09日発売

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