憂愁(ゆうしゅう)~センシティブな姿に人は引き寄せられる。
憂愁。それは“陽”ではなく、“陰”の感情。
「人の魅力は、本来、ポジティブなイメージからもたらされますが、憂愁はそうでないながらも惹きつけられる稀有なケースです。外見として表れるのは、心配や不安な様子。心の内は、悲しみや気持ちの落ち込みで覆われています。そんな相手と対峙した人は、無意識のうちにその感情を察知。これを心理学で『情動感染』といいますが、相手の悲しく沈んだ気持ちに同情または共感して、何かしてあげたいという思いが湧いてくる。つまり“惹きつけられる”という状況が起こるのです」
憂愁からくる色気は、誰しも備わっているという。
「ただし、それが表出するのは、憂愁という感情がある時のみ。狙って出すことはできません。この気持ちを感じたら、抗わずにそのまま受け入れてみましょう。陰の部分と向き合うことで、人としての成長が促され、さらに魅力が増していきます」
お話を伺った方 塚越友子さん
臨床心理士、公認心理師、博士(臨床心理学)。東京中央カウンセリング主宰。心身の調子を壊した過去や、元銀座No.1ホステスという経歴、そして最新の知見を踏まえた安心感のあるカウンセリングに定評あり。
森田想「大人になる段階で、色気が自然に備わったら」
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一見、クール。映画やドラマの役柄でのイメージからか、「よく、そう言われます」と微笑む森田想さん。確かな演技力で、近年、個性的な役柄に抜擢されることも多い彼女に、今回の撮影で表現してもらったテーマは“憂愁”。この言葉からどんなイメージを感じ取り、カメラの前に立っていたのだろう。
「憂愁って、“憂い悲しむこと”という意味があるので、どちらかというとダークなイメージを持っていました。表情でいうと、笑顔ではないですよね。カメラを見る時も、目に力を入れない。でも、それもちょっとしたことで印象が変わってしまうので、表現するには繊細な言葉だなって思いました」
衣装やメイクも、表現の一助となる。
「お芝居の時は、衣装とメイクの影響が一番大きいと言ってもいいほど。こういう服を着ている人は、こういう仕草をするだろうなという考えのもとに、役作りをするからです。だから、それがない状態で役作りをしてと言われても、けっこう難しいかも。今日も緑のワンピースが、イメージを膨らませる手掛かりに。スカートがチュールになっていて、うたかたのような…。そういえば“うたかた”という言葉も、憂愁に近い気がします」
どこかに消えてしまいそう。そんなイメージが、2つの言葉に共通していると話す。
「色でいうと白。映画の登場人物で例えると、『ハチミツとクローバー』で蒼井優さんが演じていた花本はぐみです。子どもの頃、『あんなふうになりたい!』と思っていました。台詞はなく、横顔だけで物憂げな雰囲気を醸している。私には、その出し方がまだわからない。元来の資質みたいなものもあるのかもしれませんね」
森田さん自身は、見かけこそクールだが、話し出すと砕けた人柄が全開に。
「自分の性格を自己分析すると、雑でこざかしくて生意気で…野蛮な人間です(笑)。色気とはかけ離れていると思います。女性性を前面に出すのは、得意ではなくて。だから、この撮影も最初は私で大丈夫かな? と思いましたが、色気といっても今回は内面から滲み出るものということで、私の好きなテーマだと思ったので楽しんで撮影に臨めました」
これまで演じてきた役柄でも、直接的な色気を求められたことはないという。
「でも、内面的な色気でいえば、河瀨直美監督の映画『朝が来る』で演じたトモカという役は、それに近いと思います。蒔田彩珠さんの年上の同僚役だったんですけど、年上なので大人っぽくいなければいけないというか。服装もちょっとだらしない感じだったりして、色気まで出せたらいいなと、確かに思っていたかもしれない。当時は19歳だったので、いま思うと頑張っていましたね(笑)」
そんな森田さんが思う、憂愁を想起させる色気のある人とは?
「直接お会いしたことがある人のなかでいうと、中谷美紀さんです。一度、お仕事をご一緒したことがありますが、色気というか、大人の魅力が果てしない! ゆったりとした話し方や仕草、SNSにアップしている文章まで、すべてが素敵すぎて…。私にとって憧れの女性です」
この“ゆったり”という動作が、森田さんのイメージする色気に繋がる模様。
「『次に何を話すのだろう』と、その人の言葉を思わず待ってしまう。知りたいと思わせるというか。だから、こちらが促して構いたくなる。その点、私は喋るのも食べるのも全部早い(笑)。性格がバレすぎて引き返せないところまできていますが、25歳になったので、そろそろ色気をプラスしたい気も。自然に備わってくるといいなと思っています」
PROFILE プロフィール
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森田想
もりた・こころ 2000年2月11日生まれ、東京都出身。’24年の映画『辰巳』で第16回TAMA映画賞最優秀新進女優賞受賞。ドラマ『秘密 ~THE TOP SECRET~』(KTV/CX)、『アポロの歌』(MBS/TBS)に出演中。
写真・玉村敬太(TABUN) スタイリスト・hao ヘア&メイク・高橋有紀(Lysa) 取材、文・保手濱奈美
anan 2435号(2025年2月19日発売)より