社会のじかん

堀潤の「社会のじかん」第470回:日本被団協

エンタメ
2024.12.01

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日本被団協」です。

被爆者の声に耳を傾け、日本から平和の訴えを!

10月に日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)がノーベル平和賞に選ばれました。被団協の最大の特徴は、被爆者の方が結成したということです。

1954年、ビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験で第五福竜丸をはじめ1000隻以上の船が被爆。その水素爆弾は広島の原爆の1000倍の核出力でした。アメリカとソ連の核開発競争の真っ只中でしたが、これを機に東京都の主婦の皆さんが中心となり、原水爆禁止の署名運動がスタート。全国で3200万筆超の署名が集まりました。’55年には広島で第1回原水爆禁止世界大会が開かれ、翌年に日本被団協が結成されました。結成宣言には「人類は私たちの犠牲と苦難をまたふたたび繰り返してはなりません。破壊と死滅の方向に行くおそれのある原子力を決定的に人類の幸福と繁栄との方向に向わせるということこそが、私たちの生きる限りの唯一の願い」とあります。被害に遭った人たちが、アメリカに対して責任追及をしてもおかしくないのに、主語を「人類」にして、目指さなければならない未来を運動のテーマに掲げたことに大きな意味があります。

被団協は主に「核兵器廃絶」と、「原爆被害への国家補償」の要求を行いました。被団協の働きかけにより、原爆医療法や原爆特別措置法の制定につながりましたが、補償については、「戦争の犠牲はすべての国民が等しく受忍しなくてはならない」と国は訴えを受け入れていません。「原爆症」の認定は厳しく限定的で、今も原爆症の認定を求める訴訟は続いています。

世界では2017年に核兵器禁止条約が採択され、現在70を超える国と地域が賛成を表明。ところが核保有国はほぼ“黙殺”し、日本も同様に距離を置いています。今、世界には1万2000以上の核兵器があり、核廃絶には程遠い状況です。被爆者の高齢化が進み、平均年齢は85.58歳。被団協の地方組織の解散が相次ぎ、一部で被爆二世の方が活動を引き継いでおられます。現在起きている戦争では核が脅しに使われています。核兵器は二度と使われてはならない、「核のタブー」を訴えてきた被団協のメッセージを今こそ世界で共有しなくてはなりません。

PROFILE プロフィール

堀潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2423号(2024年11月20日発売)より

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