社会のじかん

堀潤の「社会のじかん」第469回:コーヒー2050年問題

エンタメ
2024.11.26

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「コーヒー2050年問題」です。

今後もおいしいコーヒーを飲むための消費行動を。

現在、世界的に空前のコーヒー消費時代を迎えています。ところが、2050年には主要な豆であるアラビカ種の栽培地が50%減るだろうといわれ、おいしいコーヒーが飲めなくなるかもしれない危機に直面しています。

大きな理由は気候変動です。北緯25度から南緯25度がコーヒーベルトと呼ばれる、コーヒー豆の栽培に適した場所ですが、地球温暖化が進み、干ばつや、従来とは異なる生産環境となることで病害や虫食いも増えて、生産量が低下しているんですね。さらに、コーヒー農家にきちんとした賃金が支払われておらず、生産者も減少。私たちがこれまで当たり前のように飲んできたおいしいコーヒーを将来も飲みたいのであれば、長期的には気候変動対策、短期的には生産者を増やしたり、適正な対価を支払うことが必要になります。

近年、なぜチェーンのコーヒーショップが乱立していて、200~300円台でおいしいコーヒーが飲めるのかといえば、生産地で安い賃金、過酷な労働環境で働いている人がいるからです。コーヒー農園の児童労働の問題もあります。こういう問題を少しずつ改善しようと、スターバックスではフェアトレードの豆を扱ったり、ネスレでは生産環境改善の取り組みを行ったりしています。

コーヒーは、小麦やトウモロコシなどと同様に、先物取引の対象として、投資が集まりやすいというのも問題の一つといえるでしょう。投機マネーのために、森林を伐採し大規模開発をして、人を安い賃金で働かせ、効率よく生産し、株主に儲けを還元するという、行きすぎた資本主義のあり方にも歯止めをかけなければいけません。

フェアトレードのコーヒーは、輸入業者が生産者から安定した価格で買い取り、生産が持続可能なように様々な保証もあります。生産環境や労働基準も守られます。そのぶん消費者にとっては高くなりますが、これまで安かったのは誰かの搾取のもとに成り立っていたものです。今はスーパーなどでもフェアトレードのコーヒー豆を販売しています。3回に一回はフェアトレードのコーヒーを選ぶなど、私たちの消費行動も少しずつ変えていきましょう。

PROFILE プロフィール

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2422号(2024年11月13日発売)より

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