ゆっきゅん(以下、ゆ):今年の9月1日はすごかったですね。浜崎あゆみ出演のa-nationに宇多田ヒカルのツアーファイナル、そしてaikoの『情熱大陸』。まさに夏の終わりの大三角形。
朝井リョウ(以下、朝):上から見下ろすしかなかったよね。
ゆ:私はa-nationに行ってたんです。台風で友人が来られなくなって、朝井さんに連絡をしたら「すいません宇多田ヒカルなんです」って返信が来て、それは一番仕方ない理由だと思いました。
朝:すごい分かれ道でした。ライブの構成を見ても、宇多田ヒカルって無駄なものを全部省いていった25年間だったんだなって。
ゆ:ちょっと、あゆの演出は無駄じゃないですって!
朝:何も言ってないから! 写真で見ましたけど、あゆ、たくさんの旗に囲まれて登場してましたよね? 建国したんだと思った。
ゆ:あゆにとってはすべて必要なものですからね。そしてa-nationは倖田來未、TRF、あゆが揃った時点でもう勝ち確。この4年、a-nationがないのが寂しかったんですけど、その間DJ KOOさんが各地の盆踊りで1人a-nationやって守ってくれていたんです。
朝:あれa-nationだったんだ。
ゆ:私は“大Avex耳”の持ち主だからってこともあるけど、あの日はヒット曲ばかりでヤバかった。
朝:一方で宇多田さんは瀬戸内寂聴さんのような佇まいでした。MCは完全に説法の域。今でもほとんど暗唱できます。隣の席の見知らぬ女性が途中で顔を手で覆って泣き出した瞬間が忘れられません。ただ、我々が彼女に人生相談しすぎというか、“心”を背負わせすぎているな、とも思いましたね。
ゆ:インスタライブとかヤバいですよね。みんなもう、ただ歌を聴きな! って思っちゃう。すべてに対して求めすぎちゃってる。
朝:人生の師なんだもの。インスタライブが、あらゆる罪が集まる告解室みたいになるんです。
ゆ:あゆはずっと悩みを向こうから言ってくれるんですよね。だからあゆには相談できない。でも私はあゆの悩みを聞いてあげたい。
朝:「Memorial address」みたいなこと、打ち明けられたいよ。
ゆ:そうそう。心の内を話してくれて、こっちがなんて答えていいのかわからないって状態になってしまう感じ。でもそれがいい!
朝:どっちも最高! そしてaikoの『情熱大陸』も最高でした。とにかく「私はまだ頑張れていない」という焦燥の一点突破で…。
ゆ:ちょっと、’98年デビュー歌姫の話、永遠にできてしまう!
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PROFILE プロフィール
朝井リョウ
あさい・りょう 1989年、岐阜県生まれ。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。’13年、『何者』で直木賞を受賞。柴田錬三郎賞を受賞した『正欲』以来3年半ぶりの新作長編『生殖記』(小学館)が好評発売中。
ゆっきゅん
1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』が発売中。インスタ、Xは@guilty_kyun