眠れない夜は人生で、片手で数えるほどしか経験していない。そのいずれも、なにかショッキングな出来事や悩みがあったから寝られなかった、ということではなかった。なんとなく、覚醒しちゃって、目を閉じてもまったく眠くなってこない、という状態だったな。そんな時は「寝られない! イェイ!」ってなれれば最高なのに、寝られないということがどんどん焦りを生んで具体的な悩みがあるわけでもないのになんだか暗い気持ちになってくる。
実際に私が眠れなかった夜は、とにかく音楽を聴いて過ごしてたな。自分で音楽を次から次に選んで聴いたり。好きなアーティストのアルバムを1曲目から通し聴きしたり(好きな聴き方)。その時は布団に寝転がって、腕をおでこのあたりに置いて。この状態を「碇シンジ状態」と呼んでいます。アンニュイな顔で、天井を見つめながら音楽を聴く時間。大人になると、なかなかとれないよな。物憂げであれるのは、贅沢なことだよな。俺たちはもっと物憂げになっていいし、物憂げであれる余裕を持つべきだ。とりあえずそんな感じで眠れない夜を過ごしてきたけど、今思うともっと即効性が高いのはお酒を少し飲むとか、英語の本を読むとか、そういうことなんじゃないだろうか。あとは映画を観るとかね。『パターソン』とか。あとは『シャッター アイランド』とか、どうだろう。私はあれ、絶対寝ちゃうんだよね。最後まで観れたことない。逆に、観れちゃってもいいし。これ正解出しちゃった感じじゃない? 眠れない夜を楽しむという方向にシフトしちゃってもいいんだけど、やっぱ、寝なきゃいけないからね。そういう時に今挙げたようなことをすれば、確実に寝られるはずだ。なにもしないで寝られるに越したことないけど、もしもまた数年に一度の眠れない夜がきたら、私も自分自身でこのやり方を検証してみるよ。読者諸君もぜひ試してみてください。
チェルミコ 左・Rachel(レイチェル) 1993年生まれ、神奈川県出身。右・Mamiko(マミコ) 1996年生まれ、東京都出身。NEW EP『ati natu ep』が発売中。全国ツアー「ati natu tour(zansyo)」は9/6大阪からスタート。
※『anan』2024年8月28日号より。写真・幸喜ひかり ヘア&メイク・ナリタミサト
(by anan編集部)