――今作は、仁村さん演じる主人公の田島由希、川田恵(莉子)、工藤しおり(片山友希)、浅井紗奈(渡邉美穂)の4人が、共に学生寮で暮らす中で巻き起こる“衝撃のクライムサスペンス”です。オファーを受けた時の気持ちを教えてください。
仁村紗和さん(以下、仁村):“クライムサスペンス”の中に、復讐劇もあれば4人の友情もあり、社会問題も取り上げている、ぎゅっと内容の濃いドラマです。明るいテーマではないですが、いろんな要素がある物語に主演でお声かけいただいて、やりがいは絶対にあると思いました。挑戦させていただけて、嬉しいです。
――やはり主演は、目指すところでもあったのでしょうか。
仁村:それが今まで、主演をやりたいという気持ちはそこまで強くなくて。むしろ主人公の脇で、のびのびとお芝居をさせてもらうのが好きでもあったんです。でもどんな立ち位置でも、役者としてやるべきことは何も変わらないですから。由希という人物像にブレない軸を持ちつつ、みんなが気持ちよくお芝居ができるように風通しのいい現場になるといいと思っています。
――仁村さん、莉子さん、片山さん、渡邉さんの全員が、それぞれ初共演だそうで。コミュニケーションで大切にしていることは?
仁村:とくに肩肘張らずに、ありのままの私でいることと、もうひとつ大事にしているのが、おやつの差し入れをすること。寮の撮影をする時はテラスがあるので、駄菓子を毎日買ってそこに置いています。
――なぜ駄菓子を?
仁村:『真夏のシンデレラ』で共演した森七菜ちゃんが、それをしてくれていて、すごく楽しかったんです。高級フィナンシェでもいいけど、手を出すのに気を使われそうで。でも“おやつカルパス”ならパパッと3つぐらい取れるし、「これ懐かしいね」という会話も自然と生まれるので、いいコミュニケーションツールです。
――なるほど。4人集まると、撮影の合間も賑やかそうですね。
仁村:同世代ではないし、莉子ちゃんなんて8歳も年下だけど、初共演とは思えないぐらいの仲の良さ。5秒おきに話すテーマが変わるような、女子トークのテンポでしゃべり続けています。美味しいラーメン屋ある? おすすめの皮膚科教えて。喉のケアにいい飴ちゃんあるよ~って感じ(笑)。でもみんなおしゃべり好きなのは、よかった。そうそう私、全員からいじられキャラになっているんです。
――そうなんですか?
仁村:私の言葉選びが変らしくて、例えば撮影の合間に寝ていた渡邉美穂ちゃんに「ぴーすかぴーすか寝てるん?」って聞いたら「“ぴーすかぴーすか”ってなんですか?」って返されて。「人っこ一人いなかった」とか「知らなんだ」と言えば、そんな言葉使わないって全員からいじり倒されるんです。ちなみに私たちは、莉子ちゃんが一人っ子で、あとは全員3人きょうだいの末っ子。だからみんなマイペースで我が道をいく感が強いんですが、不思議な化学反応が起こって協調性が生まれているんです。だいたい末っ子3人がわちゃわちゃしているところに、莉子ちゃんが辛辣なツッコミをして場が収まるというパターン(笑)。
――チームワークがよくて、お芝居の相性もよさそうです。
仁村:そうなんです。寮での生活感を出すために、このソファにはいつもみんなどうやって座っているんだろうとか、暖簾はどうくぐる? など、みんなで話し合って研究したりも。監督は、とにかくリアルを求める方でもあるので。
――裏話を聞いてなおさら、今後もドラマを見るのが楽しみになりました。この作品を通して、どんなことを伝えたいですか?
仁村:差別や貧困、生理の話、“パパ活”“性的同意”なんて言葉も出てきて、現代人のリアルをテーマにもしています。こんな世の中に生きる若者は大変だからこそ、先を見抜く目や力を持たなければいけないし、自分の感情を表現しなければいけない。その大切さみたいなものが伝わると嬉しいです。
今の選択や判断で、運命は変えられると思う。
――『SHUT UP』は4人の運命が少しずつ変わっていく物語。仁村さんご自身は“運命”についてどのように捉えていますか?
仁村:運命ってなんでしょうね。私は、今を重ねて未来ができていると思うので、漠然と先のことを考えて不安になったり、起こってもいないことで悩むのはやめようと思って生きてきました。それでももし悩んだら、目の前の人や仕事を大事にしていけば、道は繋がっていくと思っていて。だから今の選択や判断で、運命は変えられると思います。それに何か目標を掲げるというよりは、コツコツ生きて、ひとつひとつ積み上げていった結果、大きな何かになっているというほうが自分に合っているんです。
――先ほど撮影をしている時、仁村さんを中心に和やかな雰囲気で、笑いもあって楽しそうだったので、すごく腑に落ちました。ところで、芸能界に入るまではやりたいことがたくさんあったそうですね。
仁村:はい。動物が好きだから動物に関わる仕事に興味があったり、航空券の発券をスムーズにしてくれる空港のグランドスタッフさんに憧れたり。ずっとダンスを続けているんですが、ダンスで食べていけたらいいなとも思っていて、高校時代の進路希望には“ダンサー”と書いていました。体を使って表現するお芝居も、ダンスに通じるところはありますけど。
――芸能界入りしたのは、スカウトでしたね。
仁村:はい。地元の大阪から代々木公園のフェスに遊びに行った高2の時に、原宿で。それを受けたのも、ダンスを活かせるかもしれないと思ったからでしたけど。
――怖さとかはなかったんですか。
仁村:若い時は、無敵モードがあったんです。今はもう無敵ではないですけど…(笑)。若ければ失敗しても許されるし、むしろいろんな失敗をしたほうがいいと思っていました。失うものが何もなくて、着の身着のまま大阪から上京して。…というのは嘘で、ぬいぐるみを全部持ってきたので、だいぶ大荷物でした(笑)。でもマインドは、着の身着のままの強さがあったと思います。事務所に入ると映像の仕事が多くて、自然とお芝居の道に。ダンスをやっていたから人に見られることが苦ではなかったし、意外と順応性は高いのかも。
由希、恵、しおり、紗奈の大学生4人が、学生寮で貧しい共同生活をしていたある日、恵の妊娠が発覚。友人を傷つけた男への復讐を企てるが、それは思わぬ方向へ…。そして性暴力事件にたどり着くという“クライムサスペンス”。ドラマプレミア23『SHUT UP』は毎週月曜23:06~テレ東にて放送中。第7話は、1月22日放送。
にむら・さわ 1994年10月13日生まれ、大阪府枚方市出身。2014年に芸能界入りし’15年俳優デビュー。’22年に主演を務めたNHK夜ドラ『あなたのブツが、ここに』で注目を集め、昨年はドラマ『美しい彼 シーズン2』『わたしのお嫁くん』『真夏のシンデレラ』、映画『658km、陽子の旅』など多数の映像作品に出演。モデルとしても活躍する。
※『anan』2024年1月24日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・若山あや
(by anan編集部)