
小説『けんぐゎい』の作者、朝倉かすみさんにインタビュー。
短い枚数には収まりきらなくてこうなりました(笑)
映画化もされた山本周五郎賞受賞作『平場の月』など現代社会を舞台にした作品で知られる朝倉かすみさんが、初の時代小説を発表。新作『けんぐゎい』の舞台は江戸時代だ。
「講談や落語の言葉がすごく好きで、現代小説を書く時でも、つい古い言葉を使って校閲さんからチェックが入ることもあったんです。なので時代小説を書いてみたい気持ちはありましたが、大変そうなのでなかなか取り掛かれずにいました」
タイトルの「けんぐゎい」とは「圏外」のこと。本書では社会の外側で生きる、はみ出し者を指す。
「貧しくて引け目があって“圏外”扱いされている聡明な女の子が、困難を乗り越えて自分たちのためのコミュニティを作る話が書きたくて」
主人公は疱瘡の病によって、ほぼ全身にあばたを持つ少女・ふゆ。利発な彼女は手習いに通い、学問をおさめていく。その間、密かに師匠の養子である宗三郎に惹かれるが、これがとんでもない男。残酷な人格とゆがんだ性癖の持ち主で、ふゆや他の下女を痛めつける。
一方、ふゆを励ますのはイマジナリーフレンド的な存在の、無邪気なウニコール(ユニコーン)だ。
「本人の本当の声を代弁する存在ですよね。ふゆのことは自分で道を切り開いていける子にしたかったし、そのためにもウニコールは絶対に出したいと思っていました」
その後、ふゆは一人の女医との出会いを経て、「ガストホイス(医療所)」を設立する。そこは、尊厳を奪われた女性たち、子供たちの拠り所となっていく。
終盤、ガストホイスで双子の女の子が生まれる。実は本書の本当の出発点は、ここにあったのだとか。
「江戸時代を舞台に、赤ん坊の頃に離れ離れになった双子の女の子の話を書こうとしたんです。一人は裕福な商家で育ち、もう一人は何らかのコミュニティで育つことにしたくて。初めて時代小説を書くにあたって、まずは慣らしでそのコミュニティが出来上がるまでを短編で書こうと思ったら、短い枚数には収まりきらなくてこうなりました(笑)」
ということは、ここから双子の少女の物語が始まるということ?
「そうなんです。なので続編を書くつもりではあるんですが、時間がかかると思います」
首を長くしてお待ち申し上げます。
Profile
朝倉かすみ
あさくら・かすみ 2003年「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞を、翌年「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。’19年『平場の月』で山本周五郎賞を受賞した。
information
『けんぐゎい』
幼い頃の病の影響でほぼ全身にあばたを持つふゆ。利発な彼女は手習い師匠のもとに通いはじめ、過酷な体験の末、自我に目覚めていく。光文社 1980円
anan 2499号(2026年6月10日発売)より

































