見ているだけで気持ちいい! 迫力映像で話題のスタジオ。
スタジオの立ち上げ以降、アニメ好きを唸らせるハイクオリティな作品を制作し続けているTRIGGER。なんといってもその魅力は圧倒的な映像美だろう。緩急の利いた動きやビビッドな色使いはシンプルにカッコ良く、普段アニメを見ない層であっても「何か、技術的にものすごいことが起きているぞ!」と直感的に分かるはず。
そして、彼らの本領はド派手なアクションだけではない。今作『ダンジョン飯』では、見ているだけでお腹が減ってくる調理シーンにシズル感たっぷりの料理カットと、新境地を開拓している。トップアニメーターは、どんなジャンルを描いても上手い…そんな事実を噛みしめさせられる。
TRIGGER・宮島善博監督インタビュー
原作漫画を読んだときの感動を共有したい!
「アニメ業界で『ダンジョン飯』を最も愛しているのは僕です!」と断言する宮島善博監督は、10数年来の九井諒子ファン。
「九井先生の初長編、しかもダンジョン×ごはん!? と驚きつつ連載開始時から愛読していた『ダンジョン飯』。1巻が出た2015年当時、僕の役職は制作進行だったんですが、TRIGGER社内でアニメ化の希望を出しました。そこから約9年、念願叶って監督を任せてもらえることになりました」
ドラゴン、冒険者、魔法などファンタジー濃度増し増しの作品世界のもうひとつの主役ともいえるのが、美味しそうな魔物料理だ。
「モンスターが倒され、解体されて食材に、調理されて料理に変わっていく。現実にない食材で作る料理を描くためにモンスターをデザインすることから始めました。解体したらどうなるか、調理の過程でどんな音がするか、味や食感は何に似ているかなどをデザイナーと作画監督陣で話し合い、音響効果担当にも無茶振りをして。イラストレーターさんに料理のイメージボードを描いてもらってそこから逆算するなど、いろいろな方向からアプローチしています。音響監督が現場にサソリを持ってきたときはさすがに驚きましたが(笑)、アニメをご覧になる方たちにも、代用品を探しながらダンジョン飯を作る楽しみを共有してもらえるんじゃないかと思います」
ライオス、マルシル、チルチャック、センシを筆頭に、キャラクターたちは度々ごはんを食べる。
「食事や調理中の手つきや身ぶりには、そこからキャラクター性が見えるくらいこだわっています。トールマン、エルフ、ハーフフットにドワーフなどの種族間の差や分かり合えなさは、作品の基調ともいえる部分。例えば長身のライオスと彼の膝の高さほどのチルチャックを同じ絵に収めることには苦労もあります。でも、それを活かした構図や演出を考え、重厚に膨らんでいく作品テーマをより深く表現することを目指しました」
来年1月に始まるTVアニメ放送とそれに先立つ劇場上映。監督イチオシの場面やエピソードは?
「絵コンテ、作画監督、アニメーターもみんな気合十分で臨んでいるのでひとつを選ぶのは難しいんですが…個人的には第3話の“動く鎧”かな。アクションも料理のシーンも、洗練された作画に音楽ががっちりハマって、カッコいい仕上がりになりました。原作漫画ファンにも、アニメで『ダンジョン飯』に出合った方にも、僕が初めてこの漫画を読んだときと同じくらいの感動を覚えていただけたら嬉しいです!」
『ダンジョン飯』
読めばお腹がすいてくる! 迷宮グルメ漫画ついに完結。
原作は九井諒子による漫画。地下深く、謎多き大迷宮を行くライオス一行。妹ファリンを食ったドラゴンを倒すため、魔法使いのマルシル、鍵師のチルチャック、魔物料理に精通するセンシと自給自足の旅を続ける。KADOKAWA/全14巻 各792円
TVアニメ『ダンジョン飯』
食うか、食われるか。ダンジョンに潜む魔物たちとの冒険活劇が動き出す! 12月8日~3週間限定の劇場先行上映中。TVアニメは2024年1月4日より全国28局にて連続2クール放送。Netflixほかで順次配信予定。
©九井諒子・KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会
映像制作会社TRIGGER 2011年設立のアニメ制作会社。『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られるスタジオ〈ガイナックス〉に所属していた3人によって立ち上げ。初のテレビアニメ作品『キルラキル』はダイナミックな映像とけれん味たっぷりのスタイリッシュな演出で大きな話題に。以降も、コンスタントに話題作を生み続けている。
監督・宮島善博 TRIGGER作品の制作進行、演出、絵コンテ、助監督などを経て、2023年『劇場総集編SSSS.DYNAZENON』で監督デビュー。’22年『サイバーパンク: エッジランナーズ』7、8話に参加。
※『anan』2023年12月27日号より。取材、文・鳥澤 光
(by anan編集部)