映画館で上映された話題作をプレイバック!
今年、日本で公開された映画で現在、興行収入ランキングトップに輝くのが、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。
「『ドンキーコング』や『マリオカート』も含めた“任天堂マリオユニバース”が一堂に会しているのに違和感がない、完全にゲームの制作者とファン目線に立った素晴らしい脚本」(映画ライター・よしひろまさみちさん)
「キャラクターをゲームそのものに、また日本のカワイイに寄せていて、『ソニック・ザ・ムービー』や『名探偵ピカチュウ』を経て花開いた感じがあります。ピーチ姫が捕らわれるだけでなく活躍するなど現代的アップデートを感じるところも、幅広く受け入れられた一因かと」(映画宣伝ウォッチャー・ビニールタッキーさん)
スタジオジブリの新作『君たちはどう生きるか』は84億円突破。
「一つひとつのシーンに全く説明のしようのないことが起きる、詩集を読んでいるような作品。それでも成立するものを作り、これだけの成績を出せるのがジブリと宮﨑駿監督の強さ。わからないものを見せられることに対して耐性がなくなりすぎている世間に、自分の頭で考えなさいよと言われている気がしました」(よしひろさん)
大ヒットシリーズの続編も人気。
「『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は、主演でプロデューサーのトム・クルーズの体を張ったアクションが指数関数的に危険に。観客が驚いたり楽しめるものを常に見せたいという想いの表れでしょう。今年は『イコライザー THE FINAL』や『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』など、おじいちゃんに差し掛かった俳優たちのアクションが目立ちました」(ビニールタッキーさん)
「『トップガン マーヴェリック』を観てとか、その上映時に流れた予告編を見て足を運んだ人も多かったそう」(よしひろさん)
「そして、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』はシリーズ10作目。公開初日、大きな劇場が老若男女のファンで埋まっていて、ある意味、国民的映画になっているとつくづく感じました。最新のヒップホップや信じられないくらいのド派手アクションがあり、“何か観るか”という時に選ばれるポジションに安定しているのかも」(ビニールタッキーさん)
ディズニーが携わる2つの作品は、ともに大健闘。
「’89年の『リトル・マーメイド』は、ディズニーの第2黄金期を作り出した最初のミュージカル映画。今回の実写版の興行収入は33億円を超え、不朽の物語と楽曲の魅力を改めて実感。ピクサーの『マイ・エレメント』は国内外問わず、じわじわと人気を集めて大ヒットに」(よしひろさん)
「ロミオとジュリエット的な話ながら、韓国の移民2世である監督の実体験を元にした普遍的な共感を呼ぶ話に。物語を補強する素晴らしい美的センスとCGのクオリティは、さすがピクサーです」(ビニールタッキーさん)
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』はアカデミー賞で7部門を受賞。
「日本では受賞直後に上映された流れもあり話題に。キー・ホイ・クァンの返り咲きなど感動的な物語もあり、よかったねという気持ちに」(ビニールタッキーさん)
「作品の面白さはもちろん、ミシェル・ヨーという“アジア”といわれるカテゴリーで長く活躍し、地位を確立した俳優が、60歳を過ぎてもこれまでやってこなかったような作品に挑戦していることにも心打たれます」(映画ライター・新谷里映さん)
アメリカで今年スーパー大ヒットを記録したのが『バービー』。
「日本では7億円くらいですが、ジェンダーやセクシュアリティを意識する人が真っ先に観た作品。でも、一番観てほしいのは、後半のケンとそっくりの、おじさんたち」(よしひろさん)
「『バービー』もですが、今年は女性がキーワードになった作品が多く上映されました。どれだけ平等といわれる現代でも、女性ゆえの理不尽さや葛藤がある中で、『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』は、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力の問題に触れています。報道の在り方みたいなところに寄り添いながらエンタメに仕上げていて、勇気がすごい。声を上げることの大事さを感じます。また、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は、女性だからと虐げられてきたことに対して立ち上がる姿を描きました。女性たちの、意見をぶつけ合い、行動に移す姿勢がすごい。対立や戦いではなく、自分はどうすべきかということを主題に取り上げていて、それは今の時代に必要な考えだと思います」(新谷さん)
日本の実写にも注目作が続々。
「『エゴイスト』は約3億円と大健闘。テアトル新宿で3か月以上にわたるロングラン上映に。亡くなった原作者を知っていますが、本人に一度も会ったことがない鈴木亮平が、イタコか? というくらい本人にしか見えず、おののきました。映画賞を総ナメしてほしい」(よしひろさん)
「紀里谷和明監督の最新作としても注目された『世界の終わりから』は、今の日本や世界の現状を取り上げた感がありました。この業界に向けたメッセージ的なものも含め、今まで感じてきたものを全て盛り込んだんだろうなということが伝わりました」(新谷さん)
1、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
任天堂とイルミネーションによる『スーパーマリオブラザーズ』の世界を原作としたアニメーション。任天堂の代表取締役フェロー・宮本茂がプロデュース。Blu‐ray+DVD¥5,280 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント ©2023 Nintendo and Universal Studios. All Rights Reserved.
2、『君たちはどう生きるか』
宮﨑駿監督が前作『風立ちぬ』以来、10年ぶりに発表した長編アニメーション。火事で母親を失った少年・眞人は、「青鷺屋敷」と呼ばれるお屋敷に引っ越す。そこで不思議な青サギに導かれ、生と死が渾然とする世界へ迷い込んでしまう。© 2023 Studio Ghibli
3、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
トム・クルーズ演じるイーサン・ハントの活躍を描く大ヒットスパイアクションの最新作。断崖絶壁からバイクでダイブするシーンが話題に。Blu‐ray+DVD¥5,280 11/29発売 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント ©2023 Paramount Pictures.
4、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』
主人公のドミニクと家族の前に、昔倒した麻薬王の息子であるダンテが現れる。復讐心を燃やす彼の陰謀により、ドミニクと家族は引き裂かれ…。Blu‐ray+DVD¥5,280 発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント ©2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
5、『リトル・マーメイド』
嵐で遭難した王子エリックと運命の出会いを果たした人魚のアリエル。そこで深い海の魔女であるアースラと交渉し、憧れの人間にしてもらう代わりに、美しい声を差し出すことを決意する。ディズニープラスで見放題独占配信中 ©2023 Disney Enterprises, Inc.
6、『マイ・エレメント』
火・水・土・風のエレメントたちが暮らす街では“違うエレメントと関わらないこと”がルール。でも、火の女の子エンバーは水の青年ウェイドと出会い、自分の新たな可能性を感じ始める。ディズニープラスで見放題独占配信中 ©2023 Disney/Pixar.
7、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
生活が苦しい中年女性エヴリンの目の前に、突如、別の宇宙から来たという夫が現れる。彼に導かれ、カンフーマスターとなり、マルチバースを行き来しながら世界を救うために奮闘するが…。Blu‐ray¥5,390 発売・販売元:ギャガ ©2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
8、『バービー』
「バービーランド」から人間界に来たバービーとケンは、世界の真実に直面し…。Blu‐ray&DVD¥5,280 11/22発売 発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテインメント 販売元:NBC ユニバーサル・エンターテインメント ©2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
9、『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』
映画プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインの度重なる性暴力を記事で告発した、ニューヨーク・タイムズ紙の女性記者コンビの奮闘をたどる。DVD¥3,980 発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント ©2022 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
10、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
2010年、自給自足で生活するキリスト教一派の村で起きた連続レイプ事件。ずっと、「悪魔の仕業」「作り話」などと男性たちによって隠蔽、否定されてきたが、ある日、犯罪だったことが明らかになる。そこで、男性たちが街へ出かけて不在の2日間に、尊厳を奪われた女性たちは、自身の未来を懸けた話し合いを行うことに。© 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.
11、『エゴイスト』
エッセイスト・高山真の自伝的小説を映画化。ゲイである自分を押し殺して過ごした田舎町を出て、東京で編集者となった浩輔。母を支えて暮らす龍太と出会い、惹かれ合う。Blu‐ray¥4,950 発売元:日活 販売元:ライツキューブ © 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
12、『世界の終わりから』
事故で両親を亡くし、学校に居場所もなく、生きる希望を失いかけていた女子高生のハナ。そんな中、突然、政府の特別機関と名乗る男が目の前に現れて、世界を救う使命を託されることに。様々な困難を前に戸惑いながらも、奔走する姿を描く。『ラスト・ナイツ』『CASSHERN』などを手がけた紀里谷和明監督の映画最新作品。©2023 KIRIYA PICTURES
よしひろまさみちさん 映画ライター、フリーエディター。ananをはじめ、雑誌や映画専門誌など、さまざまなメディアで映画を紹介。作り手や俳優のインタビューや記事の執筆も行う。日本映画ペンクラブ、日本アカデミー賞会員でもある。
ビニールタッキーさん 映画宣伝ウォッチャー。映画を世に広め、作品を盛り上げるための“宣伝”事情を追いかけ、発信している。年に1度、トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を開催中。ブログ「第9惑星ビニル」の運営も行っている。
新谷里映さん 映画ライター、コラムニスト、MC。解説と執筆を行った『海外名作映画と巡る世界の絶景』(インプレス)が発売中。さまざまなメディアの映画コーナーを担当する。日本映画批評家大賞の選考委員を務めている。
※『anan』2023年11月15日号より。取材、文・重信 綾
(by anan編集部)