報道やナレーション、バラエティ番組など、多くの分野で活躍しているテレビ東京アナウンサーの松丸友紀さん。アナウンス技術の高さや、嘘のない率直なコメントでお茶の間から愛されている彼女が、言葉を司る職業を目指したきっかけとは?
「中学生の時に、『アンカーウーマン』という映画を観たんです。一人の女性がニュースキャスターを目指す内容なのですが、冒頭で語られた『報道の人間が忘れてはならないのは、事実をありのままに語ること』という言葉が印象的で。私もアナウンサーになって、自分の見聞きしたものを自分の言葉で伝えたいと思うようになりました」
高校時代の口調はギャル語全開だったというが、アナウンサーの採用試験に向けて話し方を矯正。テレビ局に入社した後も、日頃から美しい日本語に触れるように心がけているのだそう。
「とても勉強になったのが、『男はつらいよ』などの昭和の映画。当時の女性の俳優さんって『~だわ』『~かしら』といった話し方をされていて、言葉遣いがとても美しいんです。話し方ってその人の雰囲気が伴っていないと美しく感じないと思うのですが、所作一つとっても美しくて。演歌の歌詞の抒情的な言葉選びからも学ぶ点が多く、素敵だなと思う言葉を見つけたら、しょっちゅうノートに書き留めています」
私には才能がない。だから地道な努力が全てです。
言葉について学ぶ上で、注意すべきことがある、と松丸さん。
「語彙を増やすために四字熟語や慣用句なども勉強しましたが、インプットするだけではダメ。覚えた言葉はすぐに日常会話で使わないと、結局身につかないんです。それに、難しい言葉を知っていればいいわけでもなくて。作業をしながらニュースの音声だけ聞いている方もいらっしゃるので、パッと聞いて理解できるように、噛み砕いた言葉で伝える努力はしています」
周囲も認める努力家で、ニュース原稿は常に書き込みで真っ赤。現在も収録前の滑舌練習を怠らないという。特にナレーションへの思いは強く、様々な人を研究して声のバリエーションを増やし、内容に合わせたトーンの使い分けを実践している。
「私は才能がないので、地道な努力が全てなんです。ただ、発声やイントネーションといった技術的な部分も大切ですが、最近は人に伝わる言葉ってそこではないのかも、と思うようになりました。というのも、私は育児をする大人に向けたラジオ番組を担当しているのですが、ある時プロデューサーから『アナウンサーとして台本を読むのではなく、一人の母親として話をしてほしい』と言われて。そこから即興で話すようにしたら、リスナーの皆さんが親しみを持って聴いてくださるようになったんです。これをきっかけに、他の番組でもできるだけ自分の心の内から出るありのままの言葉で伝えようと思うように。以前は台本を暗記してコメントも決めておくタイプでしたが、用意した言葉だとその場で感じたことからズレてしまう場合もあるじゃないですか。内容にもよりますが、より等身大な自分で表現していく方が、視聴者の方に伝わるのかなと思います」
報道やビジネス番組とは異なり、『ゴッドタン』などのバラエティ番組では松丸さんの素の表情がチラリ。少々毒のある正直なコメントも、むしろ愛すべき個性として支持される要因に。
「私としては毒舌のつもりはなく、日常で感じたことをそのまま伝えているつもりでした。モットーである“ありのままに伝える”を全うしただけなのに、『ゴッドタン』の皆さんには『お前文句しか言わないじゃん』と言われて…(笑)。でも、最近は綺麗事を言うのではなく、思ったことを包み隠さずに言うことで伝わるものもあるんじゃないかと思っているんですよね。以前は自分の中に“アナウンサーはこうあらねば”という思い込みがあって苦しかったけれど、今は文句も言うし、ケンカもする(笑)。そういう人間くさい部分も隠さずにいることで、発する言葉がより一層伝わりやすくなるんじゃないかなと思っています」
プライベートの場面でも、同じことを感じる時があるそう。
「子供が小さい頃、ママ友が一人もいなかったんです。理由を考えてみたら、自分が腹を割って話していなかったんですよね。母親になるといかに自分が不完全な人間なのかを実感するんですが、そういった悩みを話すようにしたら、ママ友の輪が一気に広がりました。私は昔から完璧主義なところがあって、人にダメな部分を見せたくないと思って生きてきたんです。でも、むしろダメな部分を曝け出した方が誰かから手を差し伸べてもらえる気がしています」
まつまる・ゆうき 1981年5月13日生まれ、東京都出身。2004年にアナウンサーとしてテレビ東京入社。『ゆうがたサテライト』月曜担当、『ゴッドタン』、『テレ東BIZ&ONE』(配信)、『松丸友紀のシナぷしゅラジオ』(音声配信)など。
イヤリング¥24,200 イヤーカフ¥11,000 ブレスレット¥14,300 左手の2連リング¥9,900(以上Jouete TEL:0120・10・6616) 右手のダブルリング¥22,000(ete TEL:0120・10・6616)
※『anan』2023年10月11日号より。写真・内山めぐみ スタイリスト・星 由希子 取材、文・真島絵麻里
(by anan編集部)