亀、蛇、ワニ…特殊なペットの病院とは? “エキゾ獣医”の奮闘を描く『珍獣のお医者さん』

エンタメ
2023.10.10
飼う人がいれば診る人も必要。特殊なペットの病院とは? 二宮香乃さんによる『珍獣のお医者さん』をご紹介します。
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世の中には、驚くべき職業がまだまだあるものだ。

「お仕事マンガを描こうと思って、浮かんだ案のひとつが爬虫類の医者でした。そして調べてみようと手に取ったのが、監修をしてくださっている田向健一先生の本だったのですが、とにかく面白くて、知識としても新鮮だったんですよね」

エキゾチックアニマル、略してエキゾとは、犬・猫以外の動物を指す獣医学用語。一般的な動物病院に就職したものの、犬アレルギーを発症したうえ、ミスを連発してクビになった神無望(かんな・のぞみ)は、まったく興味のなかったエキゾ専門の動物病院の門を叩く。そして敏腕エキゾ獣医、月光先生の下で働くことに。神無が最初に遭遇するのが、甲羅の割れた亀の治療なのだが、ラップでぐるぐる巻きにしたり、パテで割れた部分をつないだりして、クラフト感満載。

「亀はエキゾの中でも比較的身近な動物ですが、先生に取材をすると、マンションの5階から落ちて無事だった子もいるみたいなインパクトのある話ばかりで、本当に不思議な生き物なんですよね」

ほかにもトカゲ、蛇、ワニ、ウサギなどが登場するが、新米獣医の最初の難関が、検査や診療のために動物の体を一時的に動けなくする「保定」という行為。飼い主の前で蛇に噛まれても平静を装いながら実践を積む、涙ぐましい努力が描かれる。

「獣医のみなさんは大抵、手が傷だらけだったりして、大変な仕事だなと思います。しかもエキゾ獣医はニッチなので、前例も少ないし、情報を共有しながら道を切り拓いていくしかない。その感じもかっこよく描けたらいいなと思っています」

爬虫類などは特に、好き嫌いが分かれる生き物といえるが、二宮香乃さんの描くエキゾたちは、気持ちを理解したいという獣医側の心理の表れなのか、愛情を感じられる。

「描いたことのない生き物ばかりなので、毎回苦労しているのですが、みんな顔がかわいいんですよね。爬虫類は正面から見るとちょっと間抜けだったり、ワニもそばにいたら死ぬほど怖いだろうけど、目とか短い手足とかがかわいいので(笑)」

ペットブームなどで飼われる動物も多様化し、エキゾ獣医の需要は高まっている。本作は治療の現場を興味深く描きながら、ペットと人間のあり方も考えさせてくれる。

「ペットを飼う際、病気になったときのことまで考える人はなかなかいませんよね。だけど動物病院で起こっていることを先に知るのも、ありなのかもしれない。その辺を楽しく描けたら人間だけでなく、エキゾの役にも立てるかも、と思うのです」

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二宮香乃『珍獣のお医者さん』1 ほかの病院では断られるような特殊な動物と、クセの強めな飼い主が訪れる、エキゾチックアニマル専門の動物病院。見たことのないメディカルドラマ。KADOKAWA 792円 ©二宮香乃/KADOKAWA

にのみや・かの マンガ家。第10回エンターブレインえんため大賞 コミック部門で佳作。過去作に『小学生ゾンビ・ロメ夫』。本作は『ハルタ』で連載中。

※『anan』2023年10月11日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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