「前作と比べて、今作はよりタイアップに合わせて曲を作れました。原作や台本を読み込んで、登場人物に感情移入をしながら、みんなに共感してもらえるような曲を書く力が、高くなった実感があるんです。あと、枠を広げられたなって。特に映画『スクロール』の主題歌『怪物たちよ』、『第101回全国高校サッカー選手権大会』の応援歌『現在を生きるのだ。』は、今まで以上にギターロック感を出して、幅広い年齢層に聴いていただける楽曲になっています」(石原慎也・Vo/Gt)
「バンドとして、3人が大人になったのを感じられるアルバムですね。等身大で、リアリティのある楽曲が増えた。もちろん、これまでも背伸びはしていないですけど、新しいテイストの曲も含め、リアルになっていると思うんです」(秋澤和貴・Ba)
「新しいテイストといえば、1曲目『夢みるスーパーマン』と7曲目『そんだけ』ですね。この2曲が一番今までの俺らっぽくないのかなって。Saucy Dogはバラード曲が多いと言われることもあるんですが、7曲目は突拍子もない感じの奇をてらった感じじゃないですか。フローを取り入れて、韻を踏んでいるんですけど、こういうタイプの楽曲で恋愛の歌詞を乗せたこともなかったし、今流行りの蛙化現象みたいな要素も取り入れたのが、俺的にはいいなと思っていて。1曲目はザ・ブルーハーツっぽい感じもありつつ、コード進行は米米CLUBのような’80年代とか’90年代っぽい雰囲気の音に、今の俺たちらしいニュアンスを掛け合わせたので、新しいアプローチだなと思います」(石原)
「これまでアルバムを作るときは“Saucy Dogっぽさ”とか“お客さんに受け入れられなきゃいけない”という強いプレッシャーがあったんです。(石原が)奇抜な案を持ってきたら『メインの曲を作ってからやろうや』みたいなやり取りが結構あったんですけど、今回は4曲のタイアップ+提供曲『魔法が解けたら』という自分たちらしい曲がすでにあったので、残りの2曲は『あえて外しの曲を作ってもいいやん』という気持ちの余裕があったんですよね」(せとゆいか・Dr/Cho)
今作の中で、特に思い入れの強い楽曲をたずねると、3人は揃って「怪物たちよ」を挙げた。
「攻めた歌詞もあるし、そこに合わせた楽曲感もある。穏やかなバラードもいいけど、私たちはバンドなので、こういう攻めた歌詞のカッコいいバラードが大好きなんです。それを形にできたことで自信に繋がりました。自分らのやりたいことが全部ハマった曲になったので、作りながら『これはいい!』と手応えを感じていましたね」(せと)
「『そんだけ』も好きですけど、総合的に好きなのは『怪物たちよ』です。歌詞も気に入ってますし、ベースのフレーズも自然に思い浮かびました。ライブで演奏しても、音源を聴いても、MVを観てもいい曲だなと思いましたね」(秋澤)
「これまで世間から見たSaucy Dogは、恋愛バラードのイメージが強かったんですよね。『シンデレラボーイ』はバラードではないですが、基本的に恋愛の曲が多かったので、『怪物たちよ』を好きって言ってもらえて嬉しいですね」(石原)
今やラブソングだけでなく、メッセージソングの印象も強くなった彼らだが、そこに至るまでには葛藤があったという。
「もともと、俺が作る曲は恋愛観よりも人生観の要素が強かったんです。昔なんて恋愛の曲は2~3曲ぐらいしかなかった。そんな中、『いつか』を出したら思いのほか、たくさんの人に聴いてもらえて。『いつか』の人でしょ? みたいな感じになったんですよ。当時は『それ以外もあるんだ』と伝えたくて、3rdアルバムまでは恋愛の曲を極力減らしていたんです。ただ、それでも恋愛の曲の方が聴かれていて。『コンタクトケース』とか『届かない』『月に住む君』もそう。4thアルバムで“恋愛の曲の方が合ってるのかも”“それならそれでいいじゃん”と吹っ切れたんです。他の曲も書いてるけど、恋愛の曲を聴いてもらえるんだったら、それでもいい。なので“恋愛の曲は書かない方がいい”と囚われず、自由に歌詞を書かせてもらいました。それが今、『怪物たちよ』という人生観の曲も届くようになったのは、すごく嬉しいですね」(石原)
7thミニアルバム『バットリアリー』。映画『スクロール』主題歌の「怪物たちよ」、全国高校サッカー選手権大会の応援歌「現在を生きるのだ。」などタイアップ曲を含む計7曲収録。【通常盤(CD)】¥1,980(A‐Sketch)
サウシードッグ 写真左から、秋澤和貴(Ba)、石原慎也(Vo/Gt)、せとゆいか(Dr/Cho)。11月から来年3月にかけて、全国9か所14公演、キャリア最大規模となる「Saucy Dog ARENA TOUR 2023‐2024」を開催する。
※『anan』2023年8月2日号より。写真・川村恵理 インタビュー、文・真貝 聡
(by anan編集部)