いつまでも眺めていたくなる、男子高校生のゆるくて眩しい日常。
初連載である本作が形になるまでの経緯を、著者の紺津名子さんは次のように語る。
「デビュー後、何を描けばよいかわからず、悩んでいた時期が長かったんです。いろんなマンガ家さんに相談して、好きなことを気軽に描いてみたらとアドバイスをいただき、ツイッターで2~3ページの短いマンガを発表するようになりました」
筆が乗らなかった理由は、風変わりな設定や仕掛けなど何かしら強いフックが必要だと思っていたから。
「だけど私が描きたかったのは普通の人たちで、日常系のマンガだったんですよね。ツイッターではいろんなキャラクターを思いつくままに描いていたのですが、『サラウンド』に登場する3人のうち、最初に描いたのが戸田でした。初っ端からふざけていたので、ユーモアを大切にする人っていうのはそのとき決まった感じで。山口は当初ダウナー系男子のつもりで描いたのですが、今では一番ピュアになってます(笑)。田島は飄々とした戸田と仲良くなれるのってどんな人だろうと考えて、出てきたキャラ。行動力のある田島のおかげで、私も助かっています」
性格も成績も家庭環境も異なる3人は、何となく気が合って、教室やファミレスでいつもダラダラしゃべっている。会話の内容はゲームやバイト、ときに下ネタなど取るに足らないことばかりなのだが、男子高校生らしく能天気でバカっぽくて(もちろんほめ言葉!)、隣でこっそり聞いているようなおかしみが。
「今を生きるリアルな高校生を描こうとは思っていなくて、でも感情の部分はリアルにする必要があるというか、作り手のご都合主義になってはいけない。こういう人がいたらいいな、こういうやり取りがあったらいいなと思えるのがマンガの楽しさだと思っているので、パラレルの世界のどこかで彼らが生活していたらいいなと思いながら描いてます」
3巻では、田島に戸田が勉強を教えたり、山口がバイトを探し始めたり。そしてついに恋の予感も……。
「『サラウンド』というタイトルは、3人を取り巻くものというイメージで、日常の言い換えとしてつけました。個々のエピソードに寄りつつも、3人でいることの魅力を丁寧に描いていきたいので、見守っていただければ嬉しいです」
紺 津名子『サラウンド』3 女子と話すのが苦手な山口、冷静沈着で独自の世界観を持つ戸田、社交的で友達の多い田島。仲良し男子高校生3人のゆるやかな日々と、小さな変化を描く。リイド社 880円 ©紺津名子/リイド社
こん・つなこ マンガ家。2014年、講談社『ITAN』でデビュー。青年誌などで読み切りを発表。本作は「トーチweb」で連載中。Twitterは@kontsunako
※『anan』2023年7月19日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)