「前に住んでいたのは野良猫が結構多い地域でした。毎日散歩していると、エサをくれる人を覚えてなついている子や、悲惨な状態で生きている子など、さまざまな猫を見るように。若いころはお金もないし猫飼育の経験もないしで勇気が出なくて、ひどい状態の猫を救えなかったなぁとふがいない気持ちでした。いざ飼おうとなっても、女性の一人暮らしだと譲渡会でなかなか合格できなくて、飼えるまでが長かった。いまは2匹と暮らしているのですが、そんな猫へのさまざまな思いをこじらせて生まれたマンガです」
2巻の終わりで保護団体に捕獲されたマルル、ハチと〈サビ姐さん〉。3巻ではシェルターでの新生活に少しずつ適応しようとする姿が描かれ、それぞれの個性が炸裂。
「私も猫にたくさん触れるまで、運動神経に優れた動物という意識があったのですが、猫でもドンくさい子はすごくドンくさいし、ずっと遊びたがりもいれば、遊びにまったく興味のない子もいるんですよね。保護猫カフェやシェルターなどにも行きますが、猫の個性については取材で知ったというより、動物観察好きが高じて自然に学んだ部分が大きいかもしれません」
登場する猫たちはみな言葉をしゃべる。当然、作者のアテレコなのだが、猫がいかにも考えそうなことばかりだ。笑えるわ可愛いわで、眺めているだけで、んーたまらん!
「マルルとハチたちが友情を意識しているとは思いませんが、お互い生存のためには何か助け合うぐらいのことはするだろうなと。作者の私が勝手にアテレコしているだけで、実際は違うのかもしれないけれど、生物としてあり得ないような大嘘は言わせないと決めています」
また、3巻では、長毛が伸びっぱなしになっていて歯肉炎もひどく、野良生活で弱ってしまった猫〈けだま〉にフォーカスされている回もあり、エピソードは必見だ。
「結構ライトに描いてるんですが、毎日毎日『明日は生きられるかな』という状態の野良猫がいるのだということを知ってほしい。この作品が、猫と人間の関わりを考えるきっかけになってくれたらうれしいですね」
園田ゆり『ツレ猫 マルルとハチ』3 猫捜索のうまい〈やすお〉や新人ボランティアの〈日野〉など猫シェルターの人間たちの仕事ぶりから、保護施設の様子もよくわかる。講談社 748円 ©園田ゆり/講談社
そのだ・ゆり マンガ家。兵庫県出身。本作は「コミックDAYS」で連載中。他の著作に、『きつねくんと先生』『あしあと探偵』などがある。
※『anan』2023年6月21日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)