子役から始まって、気がついたら京都で時代劇?!
小さい頃の私は、人前でまったくしゃべれない奥手な子供だったんです。そんな私を見た母親が、「これからは女の子も働く世の中になるから、こんな引っ込み思案ではよくない」と、5年生のときに、私を児童劇団に入れたんです。芸能人にしようとは思っていなかったと思いますよ。でも始めてみたら、マイクの前に立つのは楽しいし、ラジオの仕事のために当時新橋にあったNHKにバスで通うのが楽しくて。帰り道、キラキラ輝く銀座や皇居を眺める時間が本当に大好きで。今思うと芝居よりも、学校とは違う時間が自分にあることが楽しかったのかしらね(笑)。
途中、受験でのお休みを挟み、高校生のときに映画会社の東映の関係者にスカウトされ、私は17歳で〈東映ニューフェイス〉というオーディションに、審査なしで合格。東映所属の女優になったんですが、いきなり京都の撮影所で3年間時代劇に出ることに!! 江戸っ子の私としては、寝耳に水の展開でしたよ。
環境を変えるために私がとった作戦は、偽装結婚?!
私が京都に行ったのがちょうど1960年前後なんですが、当時は時代劇全盛期。いざ京都に行ってみたら、男性社会だし、なんだか厳しいし、ものすごく窮屈で…。同期の男の子と京都の街を歩いていただけで、翌日撮影所で「昨日河原町に行ったやろ!」といろんな人に言われるし、毎日着物で過ごさなきゃいけない、マニキュアなんてもってのほか…。現代劇志望だった私にとっては、正直あんまり楽しい場所ではなかったのね。そんなふうに悶々としているときに、大阪のプロダクションにご縁ができて、東映をやめることにしたの。でもその頃は契約がすごく厳しくて、病気か結婚じゃないとやめられない。悩んでいたら、撮影所で知り合った助監督さんが「俺の名前貸してあげるよ」って言ってくれたので、会社には結婚したフリをして、やめちゃった(笑)。でも今思うと、若さって恐ろしいわよ。バレたら、呼び出しどころの騒ぎじゃなかったでしょうね(笑)。
かやしま・なるみ 俳優。1942年生まれ、東京都出身。子役を経て17歳で東映ニューフェイス6期生として映画界へ。代表作に『3年B組金八先生』『大好き!五つ子』など。現在『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)に、広瀬すず演じる浅葱空豆の祖母役で出演中。
※『anan』2023年2月15日号より。写真・中島慶子
(by anan編集部)