黒羽麻璃央、『生きててごめんなさい』は「観た方の背中をポンと叩いてあげられるような映画」

エンタメ
2023.02.07
自分より下に見ていた相手が、気づけば自分が欲した幸せを手に入れていた。そんな経験は、誰しも一度や二度あるんじゃないだろうか。映画『生きててごめんなさい』は、まさにそれを描いた作品だ。小説家を志しながら、出版社で実用書の編集に携わる主人公・修一と、何をやってもうまくいかず彼に依存気味の恋人・莉奈。しかしある日、売れっ子コメンテーターの目に留まり、莉奈の人生が好転し始めると、修一は彼女に冷たく当たるようになる。
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「自分より弱い人をそばに置くことで安心を得たい気持ちって、なんかわかるんですよね。僕も現場で、自分より後輩の俳優がいたりするとちょっとホッとしたりするので。そういう近い感情から、少しずつ役を理解していった感じです」

そう話すのは修一を演じた黒羽麻璃央さん。ダメな莉奈を受け入れ優しく接していた修一が、徐々に彼女を疎ましく思い始める過程は、生々しくリアルで息苦しいほど。

「台本を読んだ時点から、どこか他人の生活を覗き見しているような感覚がありました。あと撮影前に、家での二人でのシーンのリハーサルを何日間かかけてやったことも大きかったと思います。山口(健人)監督は、すごく丁寧に演出をつけてくださる方で、感情の出し方をパーセンテージで言ってくださるんですね。もう少し抑えてとか、ここは怒りの感情を強くとか。そうやって微調整に次ぐ微調整をしながら、何度もリハを重ねました。ただ、役としてはあまり固めていかなかったですね。穂志(もえか)さんが莉奈ちゃんとしてそこにいてくれたので、その場で修一として出てきたものを大事にしようと思ってやりました」

それゆえ、修一が精神的にじわじわと追い詰められていく過程は、「とくにしんどかった」と漏らす。

「ひとつずつは小さなことなんですよね。でも、四方八方から小石が飛んでくるみたいな感じで、チクチク小さな痛みが続いて、気づいたら足元に大きな岩があった、みたいな。撮影後半はぐったりして口数が少なくなっていました。監督に『マジでしんどいです』と話したくらい。ただ、観た方の背中をポンと叩いてあげられるような映画になっていると思うんです。映画のコピーに『きっと大丈夫。多分。』とありますが、行き詰まったときに、背中を押すんじゃなく寄り添ってくれる感じがいいなと思うんですよね」

修一は、自分を特別な存在だと思っている人間。しかし、黒羽さん自身は、「できるだけ自分の色を強く持たないようにしている」らしい。

「普通に思われたいというか、あまり自分を主張したくないというか…。そういうものを作ってしまうと、逆に面倒だからなのかもしれないです。自分には何もないです、ってスタンスでいた方が、風が吹いたらそっちの方向に行けるし、色を塗られたら、その色にちゃんとなれる。お仕事で目立つのはいいんですけれど、何も演じていないときの素の自分は目立ちたくない。それは年々余計に(笑)。もともと名前が目立つので、強制的にそういう立場になることが多かったから、その反動じゃないかと思うんですが」

現在放送中のドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』では、広瀬すずさんのブレインとなる役で出演している。

「北川悦吏子さんという恋愛ドラマの大家みたいな方の作品ですし、この映画も、『余命10年』の藤井(道人)さんのプロデュース。すごい方々の中で、いい刺激をいただいていますので、役者としてもっとステップアップしていかなきゃ、ですよね」

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『生きててごめんなさい』 出版社に勤める修一(黒羽)。同棲中の恋人・莉奈(穂志)はアルバイトが長続きせず、家にこもりがちだが、そんな彼女を優しく見守っていた。しかし…。2月3日(金)よりシネ・リーブル池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。©2023 ikigome Film Partners.

くろば・まりお 1993年7月6日生まれ、宮城県出身。ミュージカル『刀剣乱舞』で注目され、近年はミュージカル『エリザベート』などでも活躍。現在放送中のドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)に出演。

※『anan』2023年2月8日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・ホカリキュウ ヘア&メイク・泉脇 崇(Lomalia) インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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