お魚に出会ってギョギョギョな人生が幕を開けた。
「好き」を極めて、みんなとつながる。それを体現しているのが、みんなのお魚博士・さかなクン。海の生き物への愛と探究心で、たくさんの人をお魚ワールドにいざなっている。さらにこの秋、自伝的映画『さかなのこ』が公開に。ますますその活躍に注目が集まるさかなクンだけど、お魚人生の始まりは、何気ないけど衝撃的な出来事がきっかけだった。
「実はお魚に夢中になったきっかけは…タコちゃんだったのでギョざいます! 小学2年生のとき、クラスの友だちが描いたタコちゃんの絵を見て『うぁぁぁ~!? なに、この生き物!』とひっくり返るくらいの衝撃を受けて、図書館の図鑑で調べて『わぁ、タコっていうんだ~!』って。家に帰るなり『ただいま~。お母さん、今日タコ食べたいんだけど~!』と頼んでタコちゃんを見にお魚屋さんに連れてってもらいました。ところがお母さんが連れてってくれたのはスーパーさんで、すでに切り身になったタコちゃんしかいなかったのでギョざいます…! 店内を探してようやく見つけたまるまる一匹のタコちゃんは、おでん用のかわいいイイダコちゃん! 母に買ってもらい、その日はずっと吸盤の数を数えたり、絵を描いたり…。最後はありがたくいただきました。それからタコちゃんが食卓に上る日が1か月くらい続きました!!」
そのときの衝撃と感動を真正面から受け止めて、探究心を全開にして…。どんどんお魚の世界にのめり込んでいったさかなクン。そのお魚愛と探究心は、いまも変わることがない。
「マイワシちゃん、マダイちゃん、ヒラメちゃん…一口にお魚といっても、い~っぱいの仲間がいるからでギョざいます♪ どのお魚も知れば知るほどかわいくてすっギョい存在なんです! そして夜明け前から海に出る漁師さんや新鮮なお魚を売ってくださるお魚屋さん。いろんな人のギョ尽力で、ようやく食卓に届くんでギョざいます。それを思うと『ああ、お刺し身一切れ一切れがありがたい!』って。そしてそのおいしさといったら…! まさにお魚は身をもって感動と栄養を届けてくれる素晴らしい存在なのでギョざいます!」
お魚の魅力を発信してたくさんの人とギョミュニケーション!
「お魚の感動をギョ一緒に!!」。「好き」を自分の中だけに収めず、みんなとシェアすることが、さかなクンの最大の喜び。
「ちっちゃいときからいまに至るまで周りの人に助けていただいたり、映画も含めて貴重なギョ機会をいただいたり。それに対してさかなクンもお魚を通してみなさまに恩返しさせていただくことが増えてきて…。お魚を通して、みなさまとの関係にいい循環が生まれているのがすっギョくありがたくて幸せです♪」
まだまだ広がる“ギョミュニケーション”の輪。それでも夢のお魚博士になるまでには、たくさんの試行錯誤もあったそう。
「映画の中でも表現していただいていますが、お寿司屋さんや熱帯魚屋さんのお仕事などいろんな職業にチャレンジしたのですが、どれも違うような気がして…。というのも『もっといろんなお魚に出会いたい、出会ったらもっと知って、それをみんなに伝えたい!』という思いがちっちゃい頃からあったので。そんなとき、お寿司屋さんの壁に絵を描いてる姿をテレビで放送していただき…そこからのギョ縁で、さかなクンという道を歩むことができたんです」
いまもギョッとするような逆境に遭遇することもあるけれど、そこはお魚目線でピンチを脱出。
「お魚たちは油断するとすぐ食べられちゃう厳しい世界に生きているのでギョざいます。だから心が折れそうになったときは『お魚の世界に比べたら自分の悩みなんてまだまだ~っ! 落ち込んでいられないぞ~!』と、お魚に元気をもらえるのです」
合わないモノだってある。自分の直感に正直に、レッツ・ギョー!
さかなクンのように夢が明確じゃなくても、いまの環境や人間関係にモヤモヤを抱えている人はたくさんいるはず。そんなときは思いきってその環境から離れてみても…! とさかなクンは言う。
「お魚同士も、相性が良くないときは別の水槽に分けます。自然界のお魚は『このお魚にやられそう!』と思ったら遠くに逃げたり岩の隙間や砂にもぐったりして危険を回避できるのですが、水槽のなかでは逃げられずに弱ってしまうのです。人の場合も合わないときは環境を変えてみるのもいいかもしれないです」
つらいときは環境を変えて、外の世界と交流してみるのもいい。いまはSNSなど交流の形もいろいろだけど、さかなクンの一押しは「会って話すこと」。
「人は言葉を使い、表情や声から感情をも読み取る生き物なので、顔と顔を合わせてお話しするのが一番かなと! メールは便利ですが思ったことを素直に伝えようとすると難しいこともあります。会うのが難しければ電話でもいいですね。直接話せばきっと『話してよかった!』って思えるはず。誰とも話したくない気分? そんなときはお外にレッツ・ギョー!! 海や山でいい空気を吸う、それだけで心が晴れると思います!」
好きなものって、生きていくためのすっギョい力です!
お魚はもちろん、別の分野でも。さかなクンは「好き」を介して、職業や年齢の垣根を越えた人とのつながりを育んでいる。
「漁師さんやお魚屋さんともすっギョく話が盛り上がるとそこから友だちになれることも多いです。あと立川志の輔お師匠さまの落ギョ(落語)に夢中になって、その後、奇跡のような出会いがあり、お師匠さまと親しくさせていただくようになりました」
でもあの~さかなクン。大人になってから友だちを作るのって難しかったりしませんか?
「“大人のプライド”とかはナシでギョざいますよ。こどものような純粋な気持ちで『私はこれが好き!』と素直に言ってみるんです。すると同じ思いの人が集まってきます」
何にも負けない「好き」がある。だからその素晴らしさをみんなとシェアしたい! それがさかなクン流ギョミュニケーションの源。
「今回の映画の主題歌はCHAIさまが書いてくださいました。そのなかに『私の好きに何が勝てるというの』というフレーズがあるんです。そのフレーズを聴いたときに涙があふれました。心折れそうなときも、好きなものを思い出せば強くなれるんです。好きというのは、生きるためのすっギョいパワーなんでギョざいます!」
映画『さかなのこ』 さかなクンの自叙伝を原作にした映画が誕生。さかなクンが「さかなクン」になるまでを沖田修一監督が描く。主人公「ミー坊」をのんさん。共演に柳楽優弥さん、井川遥さんと豪華キャストも話題。9月1日全国公開予定。https://sakananoko.jp
さかなクン 東京海洋大学名誉博士・客員教授。近年では海やお魚を通しての食育や環境問題にも取り組む。自叙伝『さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~』がこのたび映画化。
※『anan』2022年7月27日号より。写真・Nae Jay 取材、文・大澤千穂
(by anan編集部)