――毎日のようにテレビに出ていますが、“売れた”実感は?
嶋佐和也:さっきまで熱海でロケしていたんですけど、おばちゃんやおじいちゃんが「頑張って~」って手振ってくれたんです。そんな世代の方にも知ってもらえてるんだって思いましたね。
――嶋佐さんが出演している日本郵政のCMが、幅広い世代に知られるきっかけになったのでは?
屋敷裕政:あれは、金髪の素人が犬の散歩してるって、思われてるだけじゃないですか。
嶋佐:だとしても、お話をいただけて嬉しかったです。
屋敷:正直、売れたとは思ってないです。渋谷で若い2人組のひとりが僕ら見て「誰? 全然わかんない!」って言ってましたし。そうやって、ちょいちょい冷や水かけられる出来事が起きるんで、売れたと勘違いしようがない(笑)。
――そもそも、お二人が芸人を目指そうと思ったきっかけは?
屋敷:高1の時に『M‐1』が始まって、第1回は芸人さんが全員お揃いの真っ黒なスーツを着て入場したんです。それが、バンドマンみたいでカッコよかったんですよね。ほんまはテレビの中に行きたいけど、無理やろうから、大学卒業後に制作会社に入ってADをやってたんです。でも、どこかでずっとテレビの中の人になりたいとは思ってて、1年でADをやめてNSCに入りました。
嶋佐:僕は、小学生の時『ごっつ(ええ感じ)』をギリギリ、リアルタイムで見ていたんです。番組が終わった時はめちゃめちゃ悲しくて…。野球はいまだに嫌いです(笑)。でも、さすがに自分でやろうとは思ってなくて、せっかく大学に行かせてもらったし、音楽が好きだからレコード会社の就職試験を受けました。でも、エントリーシートの段階でバタバタ落とされて(笑)。普通の仕事は無理だと思って、NSCに願書を。
――NSCでは、屋敷さんが嶋佐さんをスカウトしたとか。
屋敷:NSC時代の終盤も終盤で、前のコンビが解散して焦ってたんで、とにかく全部のクラスを見て回ったんです。正直、こいつと組めば絶対に売れると思ったわけでもなく、「とりあえずこの子かな」くらいの感覚で、共通の友達に連絡先教えてもらったんが始まり。
嶋佐:僕は、その時組んでた相方のことを面白いと思ってたし、好きだったんです。でも、周りが「あいつで大丈夫か?」とか言ってくるんですよ。そんなタイミングで声を掛けられて。選抜クラスにいて、優秀と噂には聞いてたこいつに乗り換えちゃいました。
屋敷:周りの評価で、好きな男を捨てて乗り換えた(笑)。
嶋佐:本当にそういう感じです。
――’10年結成で、’13年には深夜放送『バチバチエレキテる』のレギュラーに。当時の心境は?
屋敷:NSCを卒業した後、同期のデニスやマテンロウは先にテレビに出始めたんです。(横澤)夏子もすぐ『パワー☆プリン』が決まったりしてた中で、やっと俺らもいい感じになってきたなと。
嶋佐:フジテレビらしい若手の番組を作るってことで始まったんですけど、当時はお笑いブームがちょっと落ち着いてたんで、正直、僕らも冷静だったんですよね。『めちゃイケ』みたいな番組を今から作るのは難しいんじゃないかって。そしたら半年で終わって、さすがにそれは短すぎだろうとは思いました(笑)。終わった直後に売れたのは、一緒に出ていた白石麻衣さんだけ。やっぱりもうちょっとやりたかったですね、正直。
屋敷:残念ではあったけど、あの番組では濃い時間を過ごせましたね。フジテレビに行ってみんなでコントの練習して、自分の出番以外も、他の人のコントを見て、ロケもスタジオもやらせてもらい、憧れていたことをギュッと経験させてもらえて、青春でした。
――ターニングポイントは、やはり’19年の『M‐1』でしょうか。厳しい点をつけた審査員の松本人志さんに屋敷さんが放った「最悪や!」が大きな話題に。
屋敷:(笑)。後から先輩方が褒めてくださったりイジってくださったりしたんで、普通に決勝に行けたよりは結果的にはよかったかもしれないと今は思います。
嶋佐:僕はダウンタウンさんに憧れて芸人になったし、松本さんの点数が本当にショックだったんですよ。そしたら隣でこいつがすごいこと言ったんで、何とか合わせた感じでしたね。
屋敷:完全に流れがバンと変わったのはあの『M‐1』だったんですけど、ここぞという時にコロナ禍になって、一気にテレビの仕事が増えたというより、ぬるっとフェイドインできたという感覚。『M‐1』以前に、その年は、YouTubeを始めて、単独ライブの形も変えて、コンビ改革をしてたんも大きかった。その前の年、『キングオブコント』は2回戦で敗退して、『M‐1』も準々決勝止まり。じわじわ上がってきて初めて下がって、このままやと空中分解してしまうやろうなと思って、テコ入れしていたんです。
――今年の賞レースについて、現時点ではどう考えていますか?
屋敷:今までも、賞レースありきで頑張るというタイプではなかったんですけど、今年は賞のことを考えず、目の前の単独ライブをやろうと思ってます。
――大阪・福岡・東京で開催される「Last Message」ですね。意味深なタイトルですが、どんな意味があるんですか?
屋敷:それは、会場に来てくれるか、配信を見てくれた人だけがわかる仕掛けがあるかもしれないし、何もないかもしれないです(笑)。
3都市8公演で5500人以上を動員する予定のニューヨーク史上最大の単独ライブ「Last Message」は、大阪公演を終え、残りは5公演。7/18(月)の福岡・CONNECT劇場は18:00開演。7/30(土)、31(日)の東京・恵比寿ザ・ガーデンホールでは、各日12:30開演と17:00開演の2公演。7/31の17:00の回は、オンライン配信チケットが発売中。
左・嶋佐和也(しまさ・かずや)1986年5月14日生まれ、山梨県出身。右・屋敷裕政(やしき・ひろまさ)1986年3月1日生まれ、三重県出身。2010年、東京NSC15期生同士で結成。レギュラー番組に『NEWニューヨーク』『まだアプデしてないの?』(共にテレビ朝日系)、『ラヴィット!』(TBS系)、『ニューヨーク恋愛市場』(ABEMA)など。
嶋佐さん・シャツ¥29,700 Tシャツ¥19,800(共にZUCCa/A-net Inc. TEL:03・5624・2626) パンツ¥42,900(GREI./メイデンズショップ TEL:03・5410・6686) 屋敷さん・Tシャツ¥36,300(HERILL/メイデンズショップ) ジャケット¥174,570 パンツ¥148,500(共にBEAUGAN/メイデンズショップ) その他はスタイリスト私物
※『anan』2022年7月6日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・作山直紀 インタビュー、文・小泉咲子
(by anan編集部)