古川登志夫:ピッコロが作品に登場してから一番印象深いシークエンスは、悟飯に修行をつけるシーンです。そこから付き合いが始まり師弟関係を築いてきた二人が、今回の劇場版でフィーチャーされる。期せずしてお互いを補完し合っているものがあり、ここへきて共闘する姿が描かれることは、嬉しいですね。
野沢雅子:悟飯くんはお勉強家で戦うのが嫌いだけど、悪は許せないんですよね。平和な世の中でみんなと暮らしたいというのが望みだからこそ、今回は戦う。彼にとってピッコロさんは、お父さんよりもお父さんですから。信じて、尊敬して、従っていく。すごくいい関係です。
古川:理想の上司と部下の関係だと言う人もいますよね。命令はせず、ほっときながらも見守るスタンス。近年のピッコロは戦いの前線で活躍することは少なく、悟飯の家政婦のような立ち位置でさえあるけれど(笑)、そう描かれてきたのは、格闘戦士でありながら優しいというレンジの広い性格が魅力だからこそ。
野沢:古川さんはピッコロさんにぴったりですよ。犬を2匹飼っていらっしゃるでしょう? 毎日、散歩をしていたりと面倒見がよくて、優しい。その性格が演じる役にも全面に出ています。
――美しい映像も見どころの一つ。
古川:3Dのような立体感がありクオリティ高く仕上がっている気がします。芝居が負けないようにしないと。ドラマとバトルシーンのバランスが非常にいい点も今作の特質です。
野沢:幸せな家庭生活があるけれど、扉を出ると徹底的に悪をやっつける。差をきっちりとつけました。
――今作は、ピッコロの家が初めて登場することも話題に。
古川:“家なんてあったんだ!”と思いました。庭付き一戸建てでね。
野沢:いい家じゃない、ピッコロさんすごいじゃない! って(笑)。
古川:鳥山(明)先生の遊び心なのかもしれませんね。
――悟飯とピッコロのように、お二人のいい関係も長く続いている。
古川:夏になるとマコさんがご自分で育てたゴーヤをくださるんです。
野沢:毎年、5月に植えて。貰ってくださるから嬉しくって。
古川:後輩ごときのために朝に採って、重いのに持ってきてくださって、本当に感動しますよ。しかもスーパーサイヤ人の作る野菜ですから、とりわけ価値があります。手軽にできるおひたしが美味しいんです。
野沢:えー! 知らなかった!
古川:でも、長いこと一緒にやらせていただいていますが、表現者としての佇まいをマコさんから学ぶことが多いです。折に触れて、先輩の背中に励まされることもあり、全てがモチベーションに繋がっていますね。
野沢:出会いって大切ですよね。私がツイていたなと思うのは、『ゲゲゲの鬼太郎』も『ドラボンボール』も全部、原作者の先生に選んでいただいたこと。全部オーディションで。
古川:本当にすごいことですよ。金字塔的な作品ばかりやっていらして、しかも生涯現役を貫いている。自分もそうでありたいです。追いつくことはできないですが、目指すことはできますから。
『ドラゴンボール超(スーパー) スーパーヒーロー』 孫悟空により壊滅させられた悪の組織・レッドリボン軍。だが、彼らの遺志を継いだ者たちが人造人間・ガンマ1号、2号を作り出し、ピッコロや悟飯を襲い始める。原作・脚本・キャラクターデザインは鳥山明。監督は児玉徹郎。全国の映画館で公開中。©バード・スタジオ/集英社 ©「2022ドラゴンボール超」製作委員会
のざわ・まさこ 10月25日生まれ、東京都出身。代表作に、『ドラゴンボール』シリーズ、『ど根性ガエル』のひろし、『ゲゲゲの鬼太郎』の鬼太郎、『銀河鉄道999』の星野鉄郎、『ONE PIECE』のDr.くれはなど。
ふるかわ・としお 7月16日生まれ、栃木県出身。代表作に、『機動戦士ガンダム』のカイ・シデン、『ゲゲゲの鬼太郎』(第6作)のねずみ男、『ONE PIECE』のエース、『ポプテピピック』のポプ子、『北斗の拳』のシンなど。
※『anan』2022年6月22日号より。写真・野呂知功(TRIVAL) 取材、文・重信 綾
(by anan編集部)