長谷川雅紀:僕らが優勝できたのって、去年のM‐1のとき、松本(人志)さんが「一番バカに(票を)入れた」みたいなことをおっしゃっていたんですけど、本当にそこだったんじゃないかなって思うんです。一番派手で、一番声が大きくて、バカみたいだったから、あの中で目立ってたのかなって。
渡辺隆:やっぱり一番特徴的だったのは年齢です。
長谷川:ギャップもあるのかもしれないです。ある程度の年齢で芸歴もあって、どんないぶし銀の芸を見せてくれるのかと思ったらバカな挨拶から始まるわけだから、ズッコケるんじゃないですか。長く芸人をやってきて、「たどり着いたのがこれか!?」って(笑)。
渡辺:「今まで何やってたんだ!?」ってみなさん思うんでしょう(笑)。
――結成は’12年。さまざまなコンビを経て、当時ピン芸人としてそれぞれ活動していたふたりだが、渡辺さんが飲み仲間でもあった長谷川さんを誘う形で錦鯉ができた。
長谷川:僕はその頃40歳で、そろそろ芸人も限界かなぐらいに思っていたときに隆から声をかけられたから、考える間もなく、やろうかみたいなノリでした。普通コンビ組むときって、これからのこととか話しそうなもんですけど、そんな話は一切しなかったですから。朝まで居酒屋にいたのに、ふたりともドラマ『北の国から』が好きだってわかって、どのエピソードが好きで、誰がいいとか、そんな話ばっかりで、全然お笑いの話はしなくて。
渡辺:歳を重ねてからのコンビだから、お互いに真っ当な理由があるように見られますけど、全然そんなものはなくて(笑)。
長谷川:ドラマにならないんですよ。夜景見ながら「天下取ろうな!」みたいなこともないですし。
渡辺:そもそも、この先の人生どうでもいいと思っているんで、そこまで深い考えがあったわけでもなく、みなさんが想像するより全然軽い理由で。ただ、自分は見た目からして目立つ感じではないから、コンビでフロントマンになってくれる人が必要だっていうのはあって、雅紀さんは舞台に立つと明るくなるし最適だったんです。
長谷川:組んで2~3年目あたりから、だんだんお笑いライブでウケるようになったり、お客さん投票で1位を獲るようになったり。周りの芸人からも、面白いよねってライブに呼んでもらったりっていうことが増えて。その頃からちょっと手応えみたいなものは感じ始めました。
渡辺:昔じゃ考えられなかったけど、深いネタより、軽いネタほどウケるようになる。それも雅紀さんの老化が進むに従って(笑)。最近は老眼もひどいし、どんどん理性がなくなってきているし。
長谷川:老化はしょうがないですよ。歳ですから(笑)。
――そんな中でのM‐1グランプリだ。一夜にして景色がガラッと変わるといわれるけれど、ふたりにとってもっとも大きな変化は?
長谷川:優勝する前の年、初めて決勝まで行かせてもらって、そこで30何年間で初めてアルバイトを辞めたのが一番大きかったです。
渡辺:僕もずっとアルバイトしてきて、お笑いはお金がもらえないって変な刷り込みがあったので、初めてお笑いでお金をもらえるんだって気付かされました。
長谷川:でも、憧れのテレビの世界の人たちと一緒にお仕事するようになって、嬉しい以上に正直戸惑いは大きかったです。せっかく番組に出させていただいても全然しゃべれなかったり…。
渡辺:今、テレビで活躍している人、全員すごいし面白い。だからテレビに出ているし、すごく見せないところがすごいんだなって、出させていただくようになって、あらためていまそう思います。
――おふたりが思う、錦鯉がコンビとして順調な理由は?
渡辺:ただ解散するようなこともなかっただけで…。
長谷川:やっぱりこの歳になって組んだってことは大きいんじゃないかと思うんです。これが例えば、20代同士で組んでいたらどうなっていたかわからない。お互いに解散も経験してるし、年齢も重ねているから、相手の細かいことを気にしなくなっているし、嫌がるだろうなってことはしないですし。
――後輩芸人にもリスペクトを見せる謙虚さも。今後の目標は?
長谷川:謙虚とかじゃなく、僕の場合はもともとの性格なんです。あと、後輩にお金を借りたりしてきたので、偉そうにできないというか、逆に卑屈な意識がいまだに張り付いていて…。だからこれから天狗になっていこうかなと(笑)。
渡辺:まずは償いが先だよ(笑)。
長谷川:償いを挟んで天狗になっていく壮大な計画を立ててます。
渡辺:嫌なやつになるな(笑)。
WEB限定公開! 錦鯉の「一問一答」
長谷川さんと渡辺さんへ10の質問!
Q. 朝起きて、一番にすることは?
飲み物を飲む。水やお茶で喉を潤す。(長谷川)
タバコを吸う。(渡辺)
Q. なかなか眠れない夜、何をする?
スマホをいじる。よく見るのはTikTok。美味しいお店、若い子のダンス、ニュース…などランダムに流れてくるのを見ますね。(長谷川)
寝ないっす。酒飲んでますね。主にビールです。(渡辺)
Q. 犬派? 猫派?
猫派。札幌で飼っていました。(長谷川)
犬かな。昔飼っていたので。(渡辺)
Q. タイムマシーンがあったら過去に行きたい? 未来に行きたい?
過去ですね。恐竜を生で見たい。あと江戸時代に行って、街並みを見てみたい。(長谷川)
帰ってこれるなら未来。一人インサイダー取引をしたい(笑)。(渡辺)
Q. 宝くじが当たったら、何に使う?
世界一周。豪華客船とかあるじゃないですか。(「居酒屋のトイレに貼ってるやつね」と渡辺さん)そういうんじゃなくてさ、ひとつの街が動いていて、カジノがあったりするような豪華なやつ。(長谷川)
特にないんですけどね…。生活に溶かしたい。なんとか使い切ります。(渡辺)
Q. 愛用のマスクはどんなデザイン?
コンビニとかで売ってる、普通のマスクを使ってます。(「長谷川さん、一回シースルーのマスクつけてきたよね。作りが薄すぎるやつ」と渡辺さん)あぁ、配ってたやつね! 半紙みたいに薄かったやつ。羽衣みたいな。みんな僕を見て笑ってました。(長谷川)
なんでもいいっす。(渡辺)
Q. 好きなおにぎりの具は?
親が作ってくれた納豆おにぎり。普通に売っているのであれば、シーチキンか五目。(長谷川)
僕、シャケ。普通のシャケです。(渡辺)
Q. あなたの弱点を教えてください。
硬い食べ物が難しいです。特に鳥の軟骨揚げと、マカデミアナッツと、ガム。高校の頃は雨が苦手で学校を休んでいましたが、今は克服しました。(長谷川)
体が弱い。風邪ひきますし、だいたいどっか痛いです。(渡辺)
Q. 子どもの頃の夢は?
漫画家。コロコロコミックが好きで大学ノートに描いてました。(長谷川)
こけし職人。木を削る機械を使ってみたかった。(渡辺)
Q. 無人島に持って行くなら?
業務用のマヨネーズですかねぇ…。マヨラーなので、なんでもつけたいんです。それがなくなるまでの間に脱出したい。(長谷川)
無人島に行きたくねぇもんな…。スーパーハウスかな。工事現場にある事務所みたいなやつ。中にエアコンもつけたいです。(渡辺)
にしきごい 長谷川雅紀(左)と渡辺隆(右)により2012年に結成。’20年のM‐1グランプリで初めて決勝進出、翌年初優勝を果たす。初書籍『くすぶり中年の逆襲』(新潮社)発売中。
※『anan』2022年5月25日号より。写真・小笠原真紀 取材、文・望月リサ
(by anan編集部)