「役者が一番楽な瞬間って、セリフをしゃべっているときだと思うんですよ。言葉をしゃべっていると自然とその気持ちになるし、そういう表現になる。でも舞台が難しいのは、お客さんが自由に視点を選べるから、しゃべっていないときの居方だったりリアクションや空気感も見られている可能性がある。だから僕の場合、セリフのしゃべり方以上に、このシーンではどういう気持ちでいて、そこからどう感情が流れていくかを意識してそこにいるようにしているんです。一個のセリフが物語が展開するきっかけになったり、セリフの掛け合いが共演の方がたとの気持ちのキャッチボールになったりするけれど、今回はそれを全員の呼吸…空気感でやっていかなきゃいけないので未知数なことばかりです」
脚本・演出を手がけるのはNON STYLEの石田明さん。年齢や人種を超えて誰もが楽しめる舞台をと、構想4年。そして、相撲部屋を舞台にした“しゃべらないけれどうるさい”コメディに辿り着いた。
「伝説の横綱が立ち上げた相撲部屋の話で、僕を含めて4人の息子は、キャラクターもバラバラな上に、誰ひとり相撲に向いてない体型で全然強くないんです。僕の役はその中の末っ子なんですが、厳しい兄弟子の前でだけちゃんと稽古するような要領のいいお調子者。僕はどちらかというと“受け”の芝居が得意だったんで、自分発信で場の空気を動かしていく難しさを感じています」
しゃべらず笑いを起こすため、現在、絶賛“動き”について研究中とか。
「動きで観客を惹きつける人といったら、チャップリンとかブルース・リーとか結構いますよね。直接的に真似するわけではないけれど、いろんな動きをストックして、それがどこかにハマればいいかなというくらいなんですけど。心強いのは、稽古場に石田さんがいてくださること。コメディってやればやるほど“面白い”がわからなくなってくるんです。でもそこは石田さんが見極めてくださるだろうから、とにかくみなさんと思い切りやれたらと思っています」
もともと家族ぐるみでお笑い好きで芸人さんにも詳しいそう。それゆえ芸人さんへのリスペクトも強い。
「笑わせるのって、脚本以上に演じる側の表現力とかセンスが重要で、言い方ひとつ、タイミングひとつで、笑える場面が全然笑えなくなったり、その日のお客さんの空気で笑う場所が変わったりするんですよね。それでも芸人さんって確実に毎回ちゃんと笑いを起こす。その技術ってすごいと思うんです。今回、石田さんが4年をかけた企画のステップ1の段階。そこに主演として立つからには、ちゃんと期待に応えたいですね」
『結 ―MUSUBI―』 東京公演/2月4日(金)~6日(日)渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール 1階席7500円 2階席6500円 大阪公演/2月11日(金)~13日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール 7500円*料金はすべて前売り 脚本・演出/石田明(NON STYLE) 出演/小野塚勇人(劇団EXILE)、株元英彰、廣野凌大、杉江大志ほか https://musubi.yoshimoto.co.jp/
おのづか・はやと 1993年6月29日生まれ、千葉県出身。劇団EXILEのメンバー。出演作にドラマ『仮面ライダーエグゼイド』『共演NG』、ミュージカル『INTERVIEW~お願い、誰か僕を助けて~』など。
衣装協力・B'2nd神南店 LHP HARAJUKU
※『anan』2022年2月9日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・大川好一 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)